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まんぷく食品の経営戦略を考える

現在、NHK朝ドラでは「まんぷく」が放送されており、放送開始当初は放送内容についての話題をあまり耳にすることがありませんでしたが、萬平さんがまんぷくラーメンを完成させたここ最近になり、次第に「まんぷく」の話題をSNS等を通して耳にする機会が増えてまいりました。私自身は、週1程度でたまに放送を観る機会がありますが、2019年2月23日(土)に放送された回の「まんぷく」では、以下のような展開になっていました。

以下、番組公式twitterアカウントのtweetを転載。


この回を要約しますと、萬平さんがまんぷく食品を創業し、まんぷくラーメンの製造販売に乗り出した直後に、製造技術を盗まれ、テイコー食品という競合会社がまんぷくラーメンの類似品の販売をはじめました。

それを見た際の私の感想は以下の通りになります。

「Q. まんぷく食品としてテイコー食品の特許侵害並びに商標権侵害に対してどう対処すべきでしょうか?」
時代背景を現在に置き換えた上で考えるならば、このケースにおいては、リーガル戦略で対応するのが一般的なのでしょうが、マーケティング&セリングの立場で考えるならば、偽物や模倣品が市場に出てきてくれた方が、新商品に対する世間の認知度を高める際に、低コストで済む側面も考慮する必要があります。これはある種のゲーム理論における囚人のジレンマとも言えます。市場のないところに市場を作る際においての、広告戦略における集中戦略とも言えます。分かりやすい例を挙げるならば、秋葉原の電気街です。秋葉原には、エレクトロニクスに関して競合となる小売店や卸店が一極に集中しており、一見すると競合の存在が邪魔であるように感じますが、実際のところは、競合他社が集中していることにより、消費者がエレクトロニクスならば秋葉原へと足を実際に運ぶ強力な動機に付けに繋がります。仮に、競合を避けるならば上野辺りにエレクトロニクスに関するお店を出店した方が良いと言えますが、あなたが実際にお客様の立場だったならば、上野にある電気屋さんと、秋葉原にある電気屋さんでどちらに足を選ぶでしょうか?答えは申し上げるまでもありません。

話を戻し、まんぷく食品の立場で経営戦略を考えるならば、競合と共に生きる経営戦略を選ぶという選択肢も十分にあるということです。具体的には、まんぷくラーメンの製造販売におけるライセンス権を、製造や販売に競争優位のリソースを持つテイコー食品に販売してしまい、まんぷく食品はファブレス化し、R&Dとライセンス権の管理に特化するのもその選択肢の一つと言えます。まんぷく食品にとっては、無駄に資本を調達し、大型の設備投資などのリスクを回避することが可能となります。更には、これからの時代は、付加価値構造を表すスマイルカーブが示すように、R&Dの川上領域と販売からアフターサービスを含む川下領域にのみ差別化要因があり利益率が高くなります。川中の製造工程では、作業工程の自動化や簡略化が加速した結果、差別化が出来なくなり利益率も比例するように低くなってきています。川上のR&Dに強みを持つまんぷく食品としては、川下も押さえておきたいところであると言えます。 例えば、まんぷくラーメンのコールセンターを設置する。これは、R&Dの方向性を決める際に不可欠となる消費者ニーズを掴むためのリレーションシップマーケティングの側面から重要になります。コールセンターに限らずリアルな実店舗でも言い訳ですが、具体的な好例を挙げるならば、アップルストアのような製品の販売やアフターサービスを提供しつつ、ユーザーの声を直に聞ける場が必要という事です。


※こちらは2019年2月23日(土)のnakayanさんの連続ツイートを読み易いように、補足・校正したブログ記事になります。


中山兮智是(なかやま・ともゆき) / nakayanさん
JDMRI 日本経営デザイン研究所CEO兼MBAデザイナー 
1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。
お問合せ先 : nakayama@jdmri.jp

記事:MBAデザイナーnakayanさんのアメブロ 2019年2月24日付

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