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ユニーク 担当:寺橋佳央

家の近くに、60代以上の女性向け服を多く揃える洋品店がある。この洋品店…



超楽しい。


どんなアパレルショップよりも、この店が

1番楽しい。


店内を歩くと「なんでだよ」と「どうして」で頭の中がいっぱいになる。並ぶ服は一応黒を基調にしているものの服のモチーフがユニーク、いや、ユニークが過ぎるのだ。

サングラスをかけ、コーヒー片手にショッピングする女性が前身ごろの下半分以上を占める大きさで描かれたピンクのシャツ。ウインクするデカめの猫が身ごろの左側にパッチワークされたジャケット。金色のビーズで作られた黄金の翼が身ごろの左右に片翼ずつ張り付いてるシャツ。子供の落書きみたいなテイストのイラストが全面に散っているスカート。交通標識みたいな、目に痛いオレンジ色のスカート。しかもシャカシャカする素材。
こんなにユニークが過ぎるモチーフの服を誰が着るんだよと、若い頃は思っていた。

なんでユニークなモチーフの服を歳を取ってから着るのか。それは歳を重ねると、自分に華やかさが無くなってくるから、多分これが正解。若い頃は黒ずくめの服でもかっこいいが、おばさんが着るとガチでくすむ。だから服の色や柄で自分に華やかさを足すのだ。
しかし赤い帽子を被ったキラキラおめめの猫がプリントされたセーターをおばさん全員が着る訳じゃない。私もそのセーターを着たいとは思わないが、そんな猫のセーターが存在する理由は分かる。

私の服のセンスは良くも悪くもなく「シンプル is ベスト」と言う名の思考停止をして数十年。ファッションセンスがいいとか、素敵なあの人とか言われたい気持ちも昔はあった気もするが、そんな気持ちはとうに無くなっている。
私の服を選ぶ基準は、好みと似合うの次に「悪目立ちしない」。だけど今、私のお気に入りはブロッコリー柄のシャツだ。明らかにブロッコリーとは分からないのだが、よく見るとブロッコリーと分かる。20代の私だったら絶対に買わない。だって

ブロッコリーだから🥦。

だけど40代の私は買う。だって

ブロッコリーだから🥦。

今日はブロッコリーを着ていると思うと、確実に今日が楽しいのだ(私は)。もちろんブロッコリーのシャツを楽しいだけではなく、私は自分に似合うと思って着ている。
若い頃はこんなユニークな柄を着たら悪目立ちしてしまうとか、変な人に思われるとか、こんなユニークな柄を私なんかが着こなせるはずが無いとか、網目のごとく自意識を過剰に張り巡らせていたが、歳をとったらなぜかなんとな〜く緩くなり、張り巡らせた網の目が大きくなっていた。
また服を買う基準もセンスとか流行とか、手持ちの服との組み合わせとか、若い頃は色々考えていたが気がするのだが「ブロッコリー→面白い→買う」と欲望と感性が買い物に直結するようになっていた。多分歳をとって、色々考えるのがめんどくさくなったのだと思う。

おかげで私は「あら、ブロッコリーだわ」とスーパーでブロッコリーを買うようにシャツを買っていた。
あの洋品店ではきっと、色んなおばさんが「あら猫ちゃんだわ」ぐらいの軽やかさでジャケットをレジに持っていくのだろう。もちろん猫ちゃんが可愛い、素敵と思ったから購入しているはずだ。

今日はお友達とショッピングだから、ショッピングする女性のシャツを着る。猫ちゃんが好きだから猫ちゃんのジャケットを買う。金色のビーズがたくさん着いて綺麗だから黄金の翼のシャツを着る。そうして今日もユニークな服は、色んなおばさんの気分を上げているのだ。

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しりとり手帖は一巡して、再び1回目を担当した寺橋の順番になりました。前回担当の羽尾さんのテーマ「梅雨」の「ゆ」からは「ユニーク」に繋いでみましたが、いかがでしたでしょうか。楽しんでいただけたら幸いです。
次は言葉は「く」。あるいはしりとりなので「ぐ」でもOKにしましょうか。一巡目と同じくかわかみさんに繋ぎます。

※しりとり手帖の説明についてはコチラ。

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