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バイリンガルの「0ヶ国語」現象

私は日本語と韓国語とほんの少しの英語(本当の本当に少しだけ)を話す人間だ。

人は私を「バイリンガル」と呼ぶ。

バイリンガルやマルチリンガルというのは、1+1が2になるのと同じで、例えばひとつの言語しか話さない人の言語能力が100だとしたら、マルチリンガルの場合はその能力が200あると言うことができる。

と、世の人は思っていると思う。

しかし、現実はそんなに甘くない。

バイリンガルやマルチリンガルにありがちなのが、「0ヶ国語」現象である。

この「0か国語」という表現は、韓国ではよく使われるが、思えば日本ではあまり聞いたことがないような気もする。

まぁ、ともかく。

0ヶ国語? 2ヶ国語を操るくせに何を言っているんだ?と思われるかもしれないが、実際にバイリンガルの頭のポテンシャルは必ずしも人の2倍あるわけではないので、要するに0.5+0.5=1で言語を習得しているところがあるという話である。

私はまさにそんな感じで、日常生活を送る中でよく自分は「0か国語」話者だなと感じることがある。

例えば、友達や会社の人と普通に話をしている途中で、ふと急に単語が全く出てこなくなることがある。

それは、その時話している国の言葉でその単語をなんと言うか知らないということではなく、母国語である日本語でさえも出てこなくなることがあるのである。

頭の中では鮮明にイメージが浮かんでいるのに。

かなりもどかしい気持ちになるのだが、これがまさに「0か国語」現象と呼ばれるもののひとつである。

また、日本語と韓国語は文法も単語も表現も似ている言語ではあるが、私はそれぞれの言葉を話す時に使う脳の部位が違うと感じている。

しかし、その脳の切り替えがうまくいかないこともよくある。

例えば、日本語を話しているのに急に韓国語が出てきてしまったり、はたまた韓国語を話しているのに急に日本語が出てくることもある。

つい先日、高校時代の友人と飲みに行ったのだが、友人に何かをツッコまれたあと、自分でも知らないうちに、盛大に「아니~!!」(韓国語で「ちゃうねん〜!」という意味)と言ってしまった。

自分でもびっくりしてしまったが、気づいた頃にはすでに遅かった。

私はお酒を飲んだり、極度にリラックスしている状態の時に、よくこの現象が起きる。

自分の脳がどのようにしてこのようなバグを起こすのか、自分でも非常に興味深いところである。

また面白いのが、母国語は日本語であるのにも関わらず、韓国語の表現を先に学んでしまったが故に、日本語ではなんと言うのか知らない単語もあったりする。

私の場合は、植物の名前や、ファッションアイテムの名前などに多い気がする。

例えば、こちらのお花。

夏に咲くオレンジ色の綺麗な花。
去年、日本で撮ったもの。

韓国語では능소화というが、私はいまだに日本語でなんと言うのか知らない。

おかしな話ではあるが、私はこの花の名前を韓国で初めて知った。

音の響き的に漢字語っぽいが…
もし日本語の名前を知っている人がいたら、ぜひ教えて欲しい。

あとは、例えば日本語を喋っているのに頭の中に先に韓国語が出てきてしまって、脳内で韓国語から日本語に翻訳して話すなんてこともある。

そうすると、うまく翻訳ができなくて、すごくぎこちない日本語になってしまったりする。

母国語のはずなのに、めちゃくちゃ日本語が下手くそになってしまう。

母国語より先に韓国語が出てくるなんておかしいだろうと思われるかもしれないが、これがまあよくあることなのである。

しかし、ひとことに「バイリンガル」と言っても、私は先天的なバイリンガルと後天的なバイリンガルには、大きな違いがあると思っている。

私は典型的な後天的バイリンガルで、幼少期は日本語しかできなかったが、大きくなってから韓国語の勉強を始め、今に至るといった人間だ。

今回の0か国語現象の話は、あくまで後天的バイリンガルの実体験に基づくものであって、実際のところ先天的なバイリンガルの人たちはどうなのか、私にはわからない。(気になるところではある。)

ただひとつ言えるのは、私の周りにいる後天的なバイリンガルたちは、みんなこの0か国語の壁にぶち当たっているということだ。

なぜ0か国語現象が起こってしまうのか。
私は論文を1本書けるんじゃないかと思うくらい、興味深いテーマだと思っている。

私が思うに、母国語の語彙力や国語力も大きな要因ではないかと思う。

でも実際のところは、よく分からない。

ぜひ皆さんの0か国語エピソードがあれば、コメントで教えてほしい。

おばあちゃんと済州島に行きたい!