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AI、あるいはシュピーゲルの複製体について。

※この投稿は、マンガ・アニメ「葬送のフリーレン」のネタバレを含みます。未見でこれから楽しみたい方は『零落の王墓』シリーズを鑑賞した後に、投稿をお読みになることをお勧めいたします。

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AIがシンギュラリティを迎え、人間を超える知性を獲得する日が来ると、かなり以前から予言されてきました。

そもそも計算力や記憶力なら、コンピュータやAIは、すでに人間を大きく上回っています。

私が好きな将棋(観戦)の分野では、将棋ソフト Ponanza が、2017年に当時の佐藤天彦 名人に勝利しました。
さらに、DeepMind 社のソフト AlphaZero が、人間の棋譜(将棋の対戦記録)を機械学習することなしに、圧倒的な量の自己学習によって強くなり、従来の将棋ソフトに圧勝した事例もありました。

将棋のように運に左右されず、盤上の駒や持ち駒が完全に公開されているボードゲームでは、AIの力量は人間の知性をすでに上回っています。

2024年3月6日現在、将棋のプロ棋士は、藤井聡太 八冠王を筆頭に、将棋の指し手をAIで解析して研究することは当たり前の時代です。実際の対局時にはAIを使えませんが、対局前や対局後にはAIと協力して準備や振り返りを行っています。

シンギュラリティは、部分的にはもう実現していると言って良いでしょう。

では、AIがさらに発展していった先に、どんな未来が待っているのでしょうか?
人気マンガ・アニメ「葬送のフリーレン」を見ていて、そのヒントがあったように思います。

※ここからネタバレですよん

未踏破のダンジョン『零落の王墓』攻略編には、防御側にシュピーゲルの複製体が出てきます。ダンジョンへ侵入してきた魔法使いたちの技術・思考・記憶までも精巧に模倣した複製体です。そのため『零落の王墓』を攻略しようとするチームは、自分たちと互角の力を持つ複製体との消耗戦を強いられる。

マンガ・アニメ「葬送のフリーレン」は、主人公が魔法使いなだけに、魔法が存在する世界線です。魔法の中には、精神に働きかけて幻覚を見せたり、操作したりする精神魔法が含まれます。ところがシュピーゲルの複製体には、精神魔法が通用しません。なぜなら複製体は、心の働きを精密に模倣してはいても、心が無いから。

これって、いま流行りの ChatGPT にも通じるところがありますよね。こちらが問いを投げると、高い知性と感情があるかのような返答が流れるように表示されてくる。ですが、ChatGPT が心を持っているわけではありません。

先ほどの将棋ソフトの話に戻りますと、将棋のプロ棋士が異口同音におっしゃるのが「ソフトには恐怖心が無い」。将棋は基本的に、お互いの玉将を詰ます(仕止める)ゲームです。どんなに優勢に戦いを進めていても、終盤でやり損なって、自分の玉将が詰まされたら逆転負け。将棋のプロといえども、その恐怖心はあるのです。けれども将棋ソフトには恐怖心どころか心が無いので、人間から見て危ない手順でも機械的に踏み込んでいけます。

「葬送のフリーレン」に出てくるシュピーゲルの複製体は、ダンジョンに侵入してきた魔法使いと互角の力を持つが、心は無い、という設定でした。

AIがさらに発展していくと、人間の知性や力量をはるかに上回り、人間の心の働きを精密に模倣した存在として立ち現れてくるでしょう。されど心が無い。恐怖心も無い。

これが、科学者や哲学者の言うシンギュラリティの定義を満たすのかどうか、私には分かりません。

しかし、このままAIが発展していくと、シュピーゲルの複製体をめっちゃ強くして、心を模倣しているけど心が無い存在として出現するのは確実だと考えます。

人間には、愚かで賢く、醜くて美しい心がありますね。

心を活かして、AIと協力しつつ、何ができるかが問われるのでしょう。

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