【小説】すごい冷蔵庫
丸の内オフィスにある一階の冷蔵庫に入ると、猫になるらしい。
「成宮さん。あの噂、本当みたいですよ」
学生インターンの東也(トウヤ)が、真横から話しかけてきた。熱中するといつもそうなのだが、彼は身体を私の方へ少しずつ寄せて来た。私はデスクでコーヒーとパソコンを交互に見つめながら、話半分に聞いているふりをしていた。「大学三年生の爽やかイケメンは得だな」と思った。どんなアホな話をしても、愛らしく見えるのだから。若さを消費する方法に、個人差はある。どうやら彼は貴重な一日を、冷蔵庫に