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『カンノンボサツちゃん』

愛しいと抱きしめてしまう

カンノンボサツちゃんは、毎日の日課として瞑想をします。
これはマストです。
必ず雀の声がする朝4時に起きてから1時間のひとり時間を過ごします。
Titititititi。
なかなか雀たちの音量が大きいです。

自分の中の自分に問いかける、自分との対話の時間。
なんだか早口言葉のようですが、そのようなことをする時間を過ごします。
これをすることで、自分の良い部分や悪い部分、恥ずかしい部分や好きな部分、嫌いな部分をえぐり出します。
御香を焚くと、もっといい雰囲気。
白檀(ビャクダン)なんていいかもしれませんね。
ムスクの香りも大好きです。
自分で自分のことを信じることができないと、他者を愛することはできません。
自分の一番のファンは、自分。
そしてたまに、自分を「いい子いい子」するのです。

カンノンボサツちゃんは、今日も五穀米を炊きます。
昨日の夜にセットした炊飯ジャーから
湯気が地獄谷のように吹き出します。
あと少し。もう少しで間抜けなメロディーが流れます。

ぴーぴろぴろぴろ。ぴーぴろぴ、ぴろぴろぴろぴろぴー。

なんてかわいいのでしょう。
カンノンボサツちゃんは、思わず炊飯ジャーを抱きしめました。
「お前は毎日かわいいねえ。声がいいよね」
すると炊飯ジャーは蓋を開け、ポップコーンが破裂するようにゴハンを
次々とあふれ出し始めました。とめどなく、とめどなく。
「おや、まあ。困った」

そう。
カンノンボサツちゃんが抱きしめると、その個体が持つ性質の良い部分が
爆発的に開花されるのです。
炊飯ジャーはゴハンをとめどなく炊き上げはじめました。
「どうしたものか」
横で一連の流れを見ていた猫は、呆れたように「なーお」と一声鳴きました。
「そうだね。こうなることはわかっていたのに、ワタシはだめだね」

仕方ないので、食べきれない分のゴハンは近所の人に配ります。
いつものことです。

このようにカンノンボサツちゃんの一日が始まります。
はて今日は一体、愛を持って何を抱きしめるのでしょうか。

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