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What real-world asset would they like to see tokenized in the future 2023.09.26

今年のToken2049でもトピックとなった「Real World Asset」について、インド発のブロックチェーン開発企業である「KANA Labs」とのAMAを、Twitter Spaceにて実施しました。
私が担当し、発信した内容について、少し加筆修正を加えたうえで、以下にまとめています。


1.市場分析

司会:Web3マーケットの現在の市場状況と、この 1 年でどのように進化したと感じているかについて教えてください。

HARA:そうですね、Token2049、Korea Blockchai Weekや日本でもWebX、IVS京都に参加しましたが、いずれもとても活発な印象を受けました。特にグローバルは、ベアマーケットでもプロジェクトが元気ですね。市場が盛り上がっていないときこそ、技術開発、特許取得、業務提携の準備に注力している企業が多く、着実に事業を進めているプロジェクトが残っているという印象です。

2.注目するリアルワールドアセットの用途


司会:暗号通貨市場において、Web3におけるリアルワールドアセットの採用に影響を与えそうなトレンドや動きはありますか?

HARA:まず、リアルワールドアセットといえばステーブルコインが最大のテーマだと思いますが、当社もステーブルコイン市場への参入を発表しました。日本発のステーブルコインは、トークンの裏付けとなる資産を法的に紐付けることが求められているため、安全に発行し、運営できることが特徴ですが、純資産が1億円以上であることが継続的に求められるなど、投資家を保護するための安全性については、高い規制があります。
当社を含め、多くの企業がその規制の中で、慎重に準備を進めていると認識しています。

また、私の考えるリアルワールドアセットとトークンの組み合わせとは、これまで価値化されてこなかった資産のトークン化であり、具体的に3つの分野に注目しています。

(1) エネルギー

再生可能エネルギーの分野では、エネルギー生産を証明することでトークン化することができます。私たちが推進しているカーボンクレジットを含め、太陽光や風力などのエネルギーを売買するためには、例えばNFTなどでエネルギーの発生源を証明することで、発行したトークンの収益力や環境への影響力による価値を創出することが出来ます。さらにこのトークンはボランタリーマーケット(自主的な二次流通市場)での流通を図る事が可能となり、環境に対する配慮を価値化する、ひいては環境維持への投資を促すことが可能です。

(2)データ

個人データや機微情報の所有権もしくはアクセス権をトークン化することで、データの価値を証明することができると考えています。これはまさにジャスミーが最も注目している、ユーザーが可視化できていない価値の主眼だと考えています。

(3) ヒューマンスキル、テクノロジー、時間

実は、ここ最近私が注目しているのはこの点です。
私たちのサービスは、DID(分散型ID)としてWeb3の世界で自分自身を証明する事に有用ですが、自分自身の持つスキルや経験は非常に貴重なものである一方で、匿名の状態で、つまりWeb3の世界感で、他者に対して証明し、提供する事は困難な場合が多く、課題が残ります。
私は、P2Pでそのスキルや経験を他者が証明することで、その人のスキルをトークン化できると考えています。
例えば、ある人がマーケティングに長けている場合、特定の顧客や上司がそのスキルを証明することで、その人のマーケティングスキルは、トークンを通じてその価値として、その人個人の収入・年収・スキルの価値として、直接表現できる可能性があります。
DIDは複数のサービスに共通で適用できる共通IDのような使い方をしている場合が見られますが、私の考える新しいDIDの形は、P2Pの証明によって自身のDIDの情報を補完し、充実させ、さらにその利用によって収益化できる新しいビジネスIDとなり得るものだと考えています。

3.NFTがリアルワールドアセットに与える影響

司会:暗号通貨市場において、Web3におけるリアルワールドアセットの採用に影響を与えそうなトレンドや動きはありますか?

HARA:NFTは情報や電子データに付加価値を与えるという点で、大きな市場を創出したと思います。日本では、特にゲーム市場に大きな影響を与え、この市場の大きさは、多くの上場企業が存在していることや、世界中から16万人以上が来場した先日の東京ゲームショウ2023の盛況を見ても明らかでした。
しかし、まだNFTは、本来のデジタル用途の域を超えているとは思いません。私たちは、NFTを個々の製品レベルまで細分化することを検討しています。エンドユーザーがスーパーマーケットやコンビニエンスストアで手に取る商品1つ1つにNFTが紐づき、トレーサビリティを持たせることができれば、ビジネス領域でのNFTの利用はさらに広がると思います。
つまり、私たちのプラットフォーム開発はその目標に向かって進んでおり、ビジネスにより役立つ機能を開発しているということです。
この分野での技術革新はまだまだ続くと思います。

4.現実世界の資産をトークン化する利点や投資への影響

司会:現実世界の資産をトークン化することの利点と課題、そしてそれが所有と投資に与える影響とはなんですか?

HARA:リアルワールドアセットに関する利点は、いままで識別していたけれども価値を体現できなかった、有形・無形の資産価値です。
これまで価値化されてこなかった資産の出現は、多くの新たな価値を生み出す機会を得ることになります。
例えば、私たちは日本の小さなスタートアップ企業ですが、暗号資産を通じて世界中の人々から投資や協力を得ています。ブロックチェーン及び暗号資産の最大のメリットは、同じようにボーダレスにビジネスを展開し、投資を受ける機会を得ることです。投資家はより安心して投資できる環境を求め、市場は成熟していきます。そこに現実世界の資産と紐づいたトークンは、ある種一つの最適解だと考えます。

5.潜在的なユースケースと産業の成長

司会:現実世界の資産をWeb3に統合することで、どのような潜在的なユースケースが生まれ、どのような産業が最も恩恵を受けるとお考えですか?

HARA:日本企業は高い技術力と大きな投資機会に恵まれているが、残念ながらWeb3では後手に回っています。 複数の暗号資産取引所におけるハッキング被害の影響で約3年間市場が停滞してしまったことが主な理由だと考えていますが、リアルワールドアセットは日本市場が拡大するチャンスだと考えています。そういう意味では日本市場の参加企業、また日本企業に製品・サービスを提供するグローバル企業の全てに恩恵があると思っています。

特に日本企業はアジアから注目され、高い技術力を世界にアピールできるチャンスがこの市場には存在しています。ビジネスを支える資産の安全性と高い規制は、新たなビジネスチャンスを生み出すはずです。豊富なIP(知的財産)とモノづくりの力を、ボーダーレスで展開していく企業が増え、同時にそれを支えるグローバルなブロックチェーン、アプリケーション、インフラの開発企業が参入する事で、日本マーケットはさらに拡大していくと思っています。

6.KANA LABSとの事業提携

司会:この事業統合を成功させるためには、どのような規制上の検討事項や課題に取り組むべきでしょうか?

HARA:まず重要な課題としてあげられるのは、各国で適用される法律が異なるため、事業を展開する各国で法的見解が必要になることです。日本からは「トラベルルール」と呼ばれるトークン送信のためのKYCが展開されようとしていますが、セキュアな取引のための規制が市場拡大には重要になると思います。
「セキュアな取引環境の構築」というのは非常に難しく、また抽象的な課題ですが、使いやすいプラットフォームの展開とブロックチェーンの安全な運用を実現していきたいと考えています。

7.今後のプロジェクトの展開

司会:現実世界の資産とブロックチェーンの橋渡しに取り組んでいるエキサイティングなプロジェクトやイノベーションで注目しているものはありますか?

HARA:著名で革新的なWeb3におけるリアルワールドアセットプロジェクトは、まだ生まれていないか、誰もが知らないものだと思います。私たちの経営幹部は、多くのB2Bビジネスを通じて企業が何を必要としているかを知っていますし、世界中に潜在的な顧客がたくさんいることも知っています。
だからこそ、取引に十分安全なプラットフォームと、トークンをシームレスに取引・保管できる環境を提供する必要があると思います。
今回の協業は、多くの既存ユーザーだけでなく、新たな市場参加者にも満足してもらえるような、シームレスでセキュアなトークン活用に大いに役立つと思います。是非ご期待ください。

8.最後に

HARA:リアル・ワールド・アセットには大きな可能性があり、私自身はこれまで価値化されたこなかった無形のアセットも含めてその市場規模を考えている分、マーケットよりも広くその意味を捉えているのかもしれません。だからこそ、具体的なトークンの活用方法、つまりユースケースの拡大は何よりも急がなければならないと考えています。
今日のテーマは多くの人が語る非常に面白いテーマであり、継続して市場の調査や新規プロジェクトの動向をチェックしていきたいと思っています。

ご清聴ありがとうございました。

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