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「何作ろ?」から「何入れよ?」に行けると料理は楽しくなる、たぶん。

毎朝、味噌汁納豆ごはんを食べるのを日課としている。味噌汁と納豆ごはん、ではなくて、味噌汁納豆ごはんである。その日ありあわせの具でお味噌汁を作って(夏は冷や汁)、納豆ご飯にぶっかけてぞぞぞぞ、である。最近ではもう玉子も味噌汁鍋に落として、白身はふわふわ、黄身はとろーりの絶妙の半熟加減に火を通して一緒に乗っけている。半分ぐらい食べ進めたところで満を持して黄身を割る。濃厚な旨みが米粒と納豆にからんで、脳髄を刺激するおいしさである。

今朝はちょっと趣向を変えて、ちょうど冷蔵庫にあったトッピングを盛り合わせ、「しそ・しらす・チーズ・ごま」納豆ごはんと洒落込んだ。きっかけは昨夜、もらいもののレタスの消費のため(タコライスを作ろうと思って)とろけるチーズを買ったこと。その前の日は、そろそろ時期が終わるほうれん草のおひたしにかけるしらすを買っていた。しらすとチーズは、何なら自分が寝ている間に冷蔵庫の中でイチャイチャしてるんじゃないかと疑うぐらいに相性がいいことは承知していた。そこへ持ってきてシソ(大葉)もあった。これはもう、名バイプレイヤー達の夢の共演の始まりである。

レンチンごはんに鰹節と昆布のふりかけをサッと一振り。そこに、刻んだ大葉、しらす、チーズ、白ゴマをお好みで乗っけてゆく。最後によく混ぜた納豆と、S寸玉子(これまたちょうどあった)を乗せれば、あっという間に極上の朝食のできあがり。

全体の味付けとしてめんつゆか醤油でもかけたくなるところだが、しらすの塩分、納豆パックの付属のつゆと辛子でじゅうぶん。他のさまざまな風味が変わるがわるに口の中で踊り、鼻腔を駆け抜けてゆく。全量テキトーだけど、もし食べていてあなたがいちばん強く味を感じる具材があるとするならば、それはあなたがいちばん好きな具材です。

嬉しいのは、納豆という4番打者を軸に、これだけの最強ラインナップが、自分でも気づかないうちに一堂に会したということ。よくぞこれだけ集まってくれた、という喜び。と、同時に、これだけのメンツを活かせる朝餉を思いついた自分にも拍手を送りたい。

そこで思うのは、これってやっぱり、「朝は納豆ごはん」って決めちゃうことで、「何作ろ」をすっ飛ばせているから楽なんだろうな、ってこと。その次の「じゃあ何入れよ」にすんなり行けているから、毎朝、今日はトマトとピーマンの味噌汁にしよっと(案外いけるのです)、てな感じですんなりメニューが決められるんだと思う。

例え冷蔵庫に世界中の食材が冷えていたとて、いやむしろ使える食材の選択肢が多いほど、「何食べよ」を決めるのは料理初心者には至難の技。そもそも作れる選択肢がそれほどないし。みんなそこで険しい山を見上げちゃった気分になってギブアップしちゃうんだと思う。

そこで、料理初心者のあなたに、曲がりなりにも世の中の主婦程度には作れるようになった自分からの上達のアドバイスは、たとえば朝ごはんに何を食べるか、それをもう決めちゃって、その中で毎日少しずつ冒険して、あれこれ試して行って、自分の中の味覚地図を拡げていってください、ということである。

毎朝納豆ごはんで飽きないのかって? これが実は意外と飽きないのである。人間、一晩寝るといろいろリセットされるみたいで、毎朝新鮮な気持ちで納豆を混ぜている。それこそパックの底が破れるぐらいせっせと。そして毎朝、半熟玉子のとろとろ黄身に相好を崩してもいる。毎朝きっちりうまいんだもの。

それに、もし飽きたら他のメニューに浮気すればいいだけの話だし、むしろ飽きないようあれこれ工夫を凝らすことから、誰も思いつかなかったあなただけのスペシャリテが誕生する可能性だってある。

「何作ろ?」から「何入れよ?」に行けると、料理は俄然楽しくなる。だから朝ごはんを固定メニューにしてみる、その中で工夫してみる、というところから、初心者のアナタは一度チャレンジしてみてほしい。最初は一週間でもいいし。

料理という、人間の三大欲求のひとつに根ざした文化を一生どうでもいいと思って過ごすのは、もったいなさすぎるから。いやほんま。


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