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なぜ? スパイス南蛮漬けの思わぬ仕上がり。

猛暑の予報が出ている三連休初日の朝、いくらか食材の買い足しができればと近所の商店街へ足を運んだ。最近魚を食べていなかったのでそろそろ安い魚が手に入ればと願ってもいた。

と、首尾よくお気に入りの鮮魚&青果店で最高のやつらに巡り会えた。

見よ! うそ、見てください! ばばーん。

さすがにめったに見かけない、驚きの価格。

パックにギチギチに詰め込まれた高知産の小アジが破格の100円。見つけるなりすぐさまレジカゴに放り込んだ。実はこいつらに巡り合うことをずっと待ち望んでいたのだ。自分の好みとして一年を通してわりと酸っぱいものが好きだという自負があるが、特に夏になると一度は「小アジの南蛮漬け」が食べたくなるのだ。そして今年も早くもそうなっていたのだ。よっしゃよっしゃとほくそ笑んで「ご自由にお取りください」の氷とともに保冷エコバッグに入れ、傷まぬようにと急いで自宅に戻った。

一匹およそ3円! 数えたら31匹いた。

まだまだ目の光は澄んで、鮮度を物語っている。

アジは一般にとても鮮度が落ちるのが早い=足が早い魚のひとつとされている。高知産なので近海で獲れたうちには入るが、一刻も早い調理が必要だ。しかも南蛮漬けというやつはできたてもおいしいけれど、少し味をなじませた方がより風味が増す。昼食もそこそこにさっそく調理に取りかかった。

悩むのがどこまで下処理をするか、という点。ワタを除くのは当然として、頭はつけたままにするか、ぜいごは取るか。まるごとカリッと揚げたやつも当然うまいが、何せ31匹もある。ボリュームを踏まえて頭は取っちゃうことにした。で、頭とワタを取ったやつを手に取ったら、どうもぜいごが指に刺さって気になる。ええい、ぜいごも取っちゃえ。ちまちまちまちま31匹処理した。

大変なんだけど、気になっちゃうとほっとけなくて。
ちなみに頭取って、一匹の長さが5〜6cmといったところ。めんどかった。

買ったときにレジでもらったビニール袋に片栗粉とひとつまみの塩を入れて小アジたちを投入しシャカシャカ。

素揚げもいいけど、こっちの方が味がよくからむ。
ちなみに食い気の方が優って、夏でも揚げ物しちゃう派です。

合わせ酢の漬け地も準備万端。

夏野菜たちは主役の登場を待っている。

漬け地にご登場願ったのは、まずピーマン、玉ねぎ、にんじんの御三家は外せないとして、新生姜としめじ、えのきを追加。豪華ー。もちろん唐辛子もキメてピリ辛に、じゃなきゃ南蛮漬けのアイデンティティが揺らぐもの。

ときに、南蛮漬けってかかる手間のわりに評価されてなくないですか? 

コロッケなんかを作るときにも思うけど、家で作るとかなり大変。なのに原価が低いからか、お惣菜売り場ではとってもお買い得。しかもコロッケやメンチカツはテーブルの真ん中で主役を張れるだけまだマシだけど、南蛮漬けはなかなかメインディッシュとしては出せなくて、せいぜい二品目、箸休めでしかないですよね。不憫。

だがしかし、このキッチンではあえて主役を張らせてもらう!

カリカリに揚げた小アジのボディを漬け地にダイブ。バットの大きさをミスった。通勤ラッシュの満員電車みたいになってしまった。

上の方は浸かってないので後でひっくり返したりローテーションします。

待てよ、こんなにあるなら、ちょこっと拝借して、味変バージョンを作ってみてもよくね? 魔改造しちゃってもよくね?

実は揚げながら数匹つまんだ。でもこの量。繰り返すけど100円でっせ。

スパイス南蛮漬け、爆誕?

急遽オリエンタルマスタードシードとクミンシードを空炒りする。そうなのだ、前から思っていたのだ。カレーの付け合わせに添えられるアチャールには酢とスパイスを組み合わせるのが常套。となればこの南蛮漬けだってスパイスを加えてもおいしいのじゃあるまいか、と。

写真に撮るほどのこともないけど。
量はそれぞれ適当。クミンはもっと効かせてもよかったかも。

数匹だけ小さなボウルに取り分けて、そこに炒って香りを引き出したスパイスを加える。

さあ、結果はどうなる?
おいしくなる予感しかないけど。

数時間後の食卓で驚きの結果が……!

できあがったのは午後2時。そこから約5時間冷蔵庫で寝かせる。妻がバイト先から帰ってきて、待望の宴の始まり。

時間がおいしくしてくれる料理のひとつ。

まずは大量にできた通常の南蛮漬け。妻の評価は「うん、まごうことなき南蛮漬け」。やったー。お墨付きをいただきました。自分でも食べてみて大満足。作った本人だから当たり前だけど、100パー自分好みに仕上がってる。これが(絶対食べきれないので)明日も食べられるのかと思うと喜びしかない。

一方、スパイス南蛮漬けには驚きの変化が。

何がどう作用したのかマジで謎。

食べてみると、マスタードの爽やかさ、プチプチ楽しい食感とクミンのこれぞエスニックという香りが、全く邪魔をしていないどころか完全に調和している。料理としての完成度はかなり高い。

けど、調和しすぎていて、違和感がなさすぎて、インパクトがない。妻と協議した結果、カルダモンやフェンネルあたりのスッとする香りをぶつけたほうがもっとスパイスが際立っていい仕事をしてくれるのでは、との結論に至った。

それよりも驚いたのは、酸味がやさしいこと。何がどう作用したのか、化学的なことは皆目わからないけど、明らかに通常の南蛮漬けよりも酸っぱくないのだ。「南蛮漬けの酸っぱさが苦手な人にはこっちの方がいいかもね」とは妻の談だが、そんなら酢を減らせばいいだけの話である。

いや、おいしいよ。まずくはなってない。けど正直、期待していたほどの大化けはしなかったかなあ。不思議。頭の上をいくつものはてなマークと小アジが輪になってくるくる回った。

まだまだ改善と工夫の余地がありそう。これからも小アジの確変を待たねばならぬ。

明日は夏の日。もうすぐ梅雨も明ける。食欲をかき立てる酸っぱいメニューで体力つけて、乗りきっていきましょう。

と殊勝なことを書いて、オチがないのをなんとかごまかす……。ごまかせてませんか、そうですか。

ともあれ、ごちそうさまでした。

このところの大雨で大変な被害に遭っている地域の皆様には、何のお役にも立てませんが、心からお見舞い申し上げます。一日でも早く、笑顔で食卓を囲める日が戻ることを祈っております。

2023/07/16


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