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「そのまま春巻」と「なんちゃって大根餅」。

根が食いしん坊なので見知らぬ料理や見慣れない食べ方に出会うとすぐ試したくなる。先日衝撃を受けたのが「市販の春巻きの皮は(すでに加熱調理してある商品があって)そのままでも食べられる」という事実。長年愛読しているサイト「デイリーポータルZ」で静岡在住のライターさんが記事にしていたのだ。

妻も読んでいて、スマホのページをかざしながら「知ってたー?」と目を丸くして訊いてきた。そしてふたりともこれは是非試さねばならないということで一致した。

ところが、肝心の皮が売ってない。

さっそく仕事帰りにスーパーに寄って春巻の皮を探した。ところが、である。あにはからんや、うちの近所のスーパーにはどこにも加熱済みの春巻きの皮が売っていないのである。餃子の皮の隣に並んでいるのはどれもパッケージに「生」と書いてあって、さすがにこれはそのまま食べてはいけないやつ、とわかった。ほしいやつは「そのままでも食べられます」とか「加熱調理済み」と書いてあるはずなのだ。

大手であるイオン系列の店舗含め4軒ほどをめぐったがどこにも目当ての品は見当たらなかった。少し離れたホムセンの隣のスーパーにあったよ、と妻が教えてくれて、どうにか購入することができた。

ここでぼんやり思ったのだが、もしかして加熱済みの春巻の皮、西日本では少数派なのかも

というのも以前このnoteで個人的な調査結果を記事にしたことがあるのだが大阪近辺では春巻の皮自体がそもそも小麦粉ベースでなかった時代が長い。川口の居留地に北京系の人々が多く住んでいた歴史から、薄焼き玉子の皮を用いることが町中華では普通だったのだ。

てなわけで関西ではもともと小麦粉ベースの春巻自体になじみがなく、使うとしても最もメジャーな揚げ春巻以外の食べ方をしてこなかったので「生」以外が流通していないのかもしれない。

こういう食文化の偏り、地域差を見つけると俄然興奮してしまうけど、皆さんはそんなに興味ないですか。私はとても嬉しくて楽しくてついつい筆が走ります。

いそいそとホムセンまでスクーターを走らせて無事春巻の皮を購入。

やっぱりこっちで作った皮じゃない。

これー、ほしかったやつー。イエー。

5軒めにしてようやく手に入れた春巻の皮。パッケージデザインは異なるようだけど、デイリーポータルZの記事と同じ隆祥房というメーカーのもの。むむ、やはり関西ではなく名古屋のメーカーの商品だ。ホームページを見ると名古屋市熱田区で1958年から餃子の皮製造を始めたとあるからなかなか歴史のある会社らしい。

ほら、「そのままでも食べられます」って書いてあるに(遠州弁)。

名古屋かー。やはり私の推理と矛盾しない。そもそも「そのまま食べられる春巻の皮」は京阪神の食文化では馴染みがなかった、ということなんではなかろうか? 

えー、これわりと個人的には大発見なんですけど。

一緒に大根餅も見よう見まねで作るよ。

今夜はこの「そのまま春巻」初体験以外にももう一品をスタンバイ。点心のひとつ、大根餅である。

最初にその存在を知ったときは「え、どういうこと? 大根で餅? できるわけないやん」と混乱した。蓮根やジャガイモのようにデンプンが豊富ならまだしも、あの食物繊維と水分ばっかりの大根でお餅ができるわけがない。しかし食べてみるとたしかにモチッとしていて、その中に大根のシャキシャキ感と風味もきちんとある。何これおいしい、と驚いた。あまりこの国ではメジャーな点心ではない感が否めないが、初めて口にして以来、個人的には気になる一品となった。今夜は「そのまま春巻」と合わせて点心ナイトと洒落込もうというわけである。イエー。

このまま醤油かけて食べたい。

鬼おろしを使って大根10センチぐらいをおろす。そこに塩少々、ネギ、小エビ、そして要の小麦粉(小さじ2ぐらい)片栗粉(大さじ2〜3ぐらい)を入れて混ぜまぜ。前述したとおり大根にはデンプンが(ほとんど?)含まれていないので、すりおろしたり刻んだだけでは火を通しても固まらない。米粉・小麦粉・片栗粉などを足してツナギとするわけである。

あとで調べると大根は細かな千切りにするのがメジャーな作り方みたい。そしてツナギの粉は米粉を用いるようだ。うろ覚えで適当に準備しちゃった。

エビの代わりにハムなんかでもいいらしい。

初めて作るから分量の見当がつかない。なんとなく生地にまとまりが出てもったりしたらOKな気がする。完全に当てずっぽう。

ごま油でカリッと焼く。

適当に整形してフライパンで焼く。本当は大きな一枚でーんと焼いてから切るものみたいだけど、もし上手くひっくり返せないと泣きを見るので日和った。食べれば一緒、のはず。

「そのまま春巻」の具も適当に炒める。

名もなき炒めもの。

春巻の具は豚肉切り落とし、ピーマン、もやしを炒めて用意。豚肉はあらかじめ塩コショウと醤油を溶いた紹興酒をもみ込んでおく。中華鍋に刻んだ生姜とニンニクを油で熱し、豚を炒める。豚に火が通ったらピーマンともやしを入れ、鍋肌で豆板醤と甜麺醤を炒めて混ぜ合わせる。最後に水溶き片栗粉でとろみをつけたら出来上がり。

本当はタケノコとか入れたかったけどシーズン的にムリよね。

ちょっと薄味だったかも。

完成!「そのまま春巻」と「なんちゃって大根餅」。

タイトル写真と同じです。

できたできたー。見た感じは意外にちゃんとしてるけど、全て出たとこ勝負の適当ニセ中華。出来栄えやいかに。大事なのはこの「そのままでも食べられます」という春巻の皮の真価を試すことである。

ぺたんとしすぎていて、どう撮ってもうまく撮れない。

問題の皮は言うなれば北京ダックと食べる「薄餅」みたいなもののよう。なのできゅうりも用意。醤油麹、きゅうり、名もなき炒め物を載せて封筒型に巻きまき。

そういえば国産小麦粉に「春よ来い」って品種あるなあ。

いただきまーす。
がぶっ。

おおお? おお! なるほど、このまま食べられる。モチッとしてなかなかの歯応えで、重なったところを噛みちぎるのは一苦労。でも具の水分を吸ったところからふにゃんとふやけて生八つ橋のような食感になる。味はやっぱり薄餅みたい。これは楽しいぞー。

何より手巻き寿司みたいに自分で作って食べるアクションメニューなのがいい。今度はこれをたくさん入れてみよう、と知らぬ間にたくさんおかわりしてしまう。もっといろんな具を用意してもいいかも。それも洋の東西を問わず、ミートソースととろけるチーズ、なんてのも全然アリ。きんぴらごぼうなんかもいいと思う。或いはフルーツと生クリームなんかでクレープみたいに食べるのも合いそう。

うちでは弁当を作る習慣がないけど、昨日の残りのおかずを包んでお弁当のおかずにするのも楽しいかも。

この皮一枚でいつものおかずがちょっと楽しくバラエティ豊かになるうえ、面倒な下準備が一切要らないなんて、頼もしいアイテムを知ってしまった。

酢醤油と辛子でいただきました。いいお酒のアテ。

ああ、そうそう、大根餅の方も成功。モチッとした中に大根のシャキシャキ感と風味があって、立派に大根餅と言える出来。楽勝やーん。また作ろっと。

久しぶりの見よう見まねで作った新メニュー。どちらもまずまずのおいしさでリピ確定。まだ春巻きの皮は余っているので、どう活用しようか考え中。

ごちそうさまでした。


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