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シンプルな一品

『シンプルな一品』
この間、食品を入れている引き出しを整理した。
ぐちゃぐちゃに入っていて、引き出しを閉めるときに、ビニール袋の端っこがベロンと挟まってみっともないものだから、ちょっと整理しましょということになった。

賞味期限はあまり気にしないのだが、それでも一応は確かめる。
期限より見た目も大事だから、確認を怠りなく、ごめんなさいと言って処分するもの、残すものを分けた。

粉物は中身をみて、虫とかわいていないかをみておくことも忘れてはいけない。
後で後悔する。

昔人から、乾燥した豆はいつまでも保つから捨てないでいざという時に水で戻して使うといい、と聞いたことがある。
豆は何十年となんとなくそこにある。
勇気が出ないので、調理したことは未だない。

それでも、数年前に自分で買った記憶のある豆は、使えると信じていた。

ひよこ豆が出てきた。

カレーにすると美味いんだよな、よし明日はカレーを作ろうじゃないかと脳内独り言を発して、ひよこ豆を水で戻すことにした。

次の日水に浸されたひよこ豆が、子どもの顔のように可愛く膨れている。
さっと洗って、水に浸す。
台湾の名機、電鍋で湯がく。
すると、今度は艶っぽく、子どもが成長して舞妓さんのお顔のようになっていた。
でも、まだ大人のそれにはなりきれていない。

カレーにして初めて、いっちょまえの君になるだよね。
こんばん作るからねと脳内で話しかけて出かけた。

帰宅がいつもより遅れて、カレーを作る時間がなくなっていた。

でもひよこ豆はおしとやかに待っている。

カレーには十分な量があるから、ささっとできる一品を作って夕食にしようと思った。

岩塩と粒胡椒を砕いて豆にふりかけ、オリーブオイルを少したらして、ひよこ豆のサラダにした。

十分な一品になってくれた。

シンプルで、美味しい。

翌日、待たせた豆でカレーを作った。

シンプルな一品

初出 2022/06/19 

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