見出し画像

#3 古民家暗中模索中その3


DAY11 4月3日 
屋根裏の見積り


朝は貝塚で朗読教室。
午後からトミーが紹介してくれた業者さんが見積もりのために来てくれる。
家自体に湿気もないし、天井掃除も大体終わっているからいいですね、でも新たなフンがいくつかありますね。
出入り口は五箇所、40坪
清掃、消毒、穴塞ぎ
でそれぞれ見積もりを出してくれるという

業者さんが、一通りのやりとりをしたあとそわそわしだして、もう少しお家を見ていいですか、と切り出される。
実は自分の本業は美装家なのだそう。
古い家をきれいにする、というのがお仕事らしい。
この家に大変興味があるとのこと。
おもしろいお家ですね。
大変だけど、触るのは面白いですよ、と話される。
やー、わたしは面白いとはまだいかない。


DAY12 4月5日
樋の掃除

この日は、朝から熊取朗読の会、らうらうの新年会。
コロナでのびのびになってこの日になる。
みなさん、60.70.80代の女性たち。
とにかく元気。次から次へとお話が止まらない。

今晩から雨になるので昨日から頭が痛いし、身体がだるい。
いや、このだるさは風邪かも。

しかしご飯を食べて煉瓦館に帰ってくる頃には少ししゃんとする。
今晩から雨になってしばらくふるとの予報。
なので竹由庵に行って1時間だけ作業することにする。
ずっと懸案になっていた樋の掃除が気になっていたのだ。
雨の前にやっておこうと、作業着に着替えて脚立に登って溜まった草を取る。
松の木の近くの樋が松葉でいっぱいになっている。

松葉を取ればいいだけと思っていたけれど、案外砂も樋にいっぱい詰まってたり、何かの糞のようなものがあったり、砂から草が生えていたりしている。
風向きによっては砂や訳のわからないものを浴びてしまう。

脚立に登っても手が届かない所もあるし、脚立の置く場所が植え込みの中なので平行ではなくて、しっかり固定できない。グラグラした不安定な状態での作業。
去年の9月に手の指を骨折して今だにリハビリをしている。使い方によっては腫れたり、手が動きにくかったりする。ここでバランスを崩して落ちて再骨折したなんてことになったらえらい事だととにかく慎重にゆっくり作業。

しかしあまりに砂埃がひどいので
髪の毛と口元をタオルで覆い、箒とちりとりを持って再度挑戦。
樋には金網が張ってあるけどその中にいっぱい詰まっている。


なんとか頑張ってやれるだけのことをする。
とりあえず、ここら辺でいいかと思った途端に大粒の雨が降ってきた。

気がつくと2時間は軽く経っていた。
今回はそれしかできず、家をあとにする。


母が昨日、白内障の手術をして、姉がそれに付き添ってくれた。
外出好きの母もしばらく外には出られないらしいので、その間に叔母たちに連絡取ってくれるという。
叔母たちは、この家で育った。そしてこの家の権利も持っている。
今回わたしがこの家を片付けることを承諾してくれた。お願いしますとのこと。
とりあえずは、一歩進んだことになる。


母は司法書士さんにも話をしてくれたらしい。
わたしが竹由庵をどうしたいかで変わる、とのこと。
どうしたいか?
まだわからない。自分のものにしたいかどうかも含めて。
このままこの家がただ朽ちていくのが嫌だった。
そこにラボの2人のサポートが入って急速に進んだ。
ほんの数ヶ月前まで思いもよらなかったことだ。
今年はとにかく人を呼んで、この家に興味を持ってくれた人たちとワイワイやれたらと思う。
その先のことはわからない。

瓦の見積もりがもとさんから来る。
天井裏の見積もりも来た。
天井裏は自分たちの掃除と穴塞ぎでどうにかならないかと思う。
うっきー、もとさんにまず相談しよう。
どうなるだろう。

DAY13  4月19日
あっというまに二週間たった。


樋の掃除をした翌日から具合が悪くなった。
低気圧のせいか、黄砂のせいか、風邪のような症状で頭が痛く、とにかくだるい。
そんな中、阪急うめだ百貨店で4月7日、10日、11日とアイヌの昔話朗読劇を9Fで3日間開催するイベントを持つ。
その阪急が終わると、週末は中目黒へ行って朗読劇の発表会。
翌週は秩父で1泊の看護学校の合宿のお仕事。
なんとか、仕事の合間に身体を休めながら体調を立て直す。


その間もこの家の天井をどうするか考えている。
まずはうっきーにメッセージする。
それからもとさんに。
もとさんが、穴塞ぐのを合間見つけてやりますよとメッセージが来る。

とにかく秩父の仕事を終えて電車を乗り継ぎ、和歌山駅に辿り着いたのが23時59分。
母がなんと車で迎えにきてくれた。
両目の手術を終えて、よく見えるようになったというのだ。
家に帰ると、家の中が綺麗になっていて驚いた。
今まで汚かったわ・・・。見えてなかったわ。
という母。
あ、いや〜私はそれで暮らしていたのだけど・・・。


DAY14  4月20日 
火入式


いよいよへっついさんの火入式。
ふうちゃん、今ちゃんと朝筍を掘って筍ご飯にしようと企画。
もとさんもお呼びする。
式というくらいなので、ふうちゃんがお塩とお酒と榊を用意した方がいいとのこと。

朝7時くらいから起きて、筍掘る道具や、釜を洗うものや
筍ご飯の具材、お汁のための味噌など用意して
久しぶりの竹由庵に向かう。
なんと15日ぶり。

和歌山は昨日まで大雨が降ったとのこと。雷もすごかったらしい。
雨漏りしていないか、家を見て周る。

大丈夫!
屋根の動物も雨宿りをしてたのかな。
とにかく家は何事もなくきれい。

まずは羽釜を洗う。
たぶん50年以上使われていなかったでしょう。
重曹とクエン酸で銅とアルミの羽釜を洗い始める。

ふうちゃんと今ちゃんが10時過ぎに来る。
もとさんが11時くらいに来るので、筍を掘ってる場合ではないかもと、それぞれ準備する。
この間、山道の竹林で掘ってきた筍をいただいて母が煮ていたので、予備として持ってきていてよかった。
それを筍ご飯の具材にする。
羽釜を何度も洗う。
ふうちゃんは薪を割る、今ちゃん料理の準備。
みんなそれぞれやるべきことを淡々とこなす。



11時過ぎにもとさんが来る。
火入式にお酒をもってきてくれた。


お塩をお釜に少し。
それからお酒に浸した榊でお釜を撫でる。
みんなで二礼二拍手一礼。

3人から
おめでとうございますと言われ、釜をひらいたのだなと実感する。

午前中に日が照ってくると、なんと羽蟻がどんどん飛んでくる。
見ると、納屋の屋根が崩れて垂木が腐っている箇所から羽蟻がどんどん出てくる。

もとさんが雨上がりには羽蟻が出てくるんだよ。という。

それを見ていると、早くここを直さないといけないなと思う。

もとさんは、今すぐ崩れるわけではないから、腐っているところを切って新しい木に継いだらいいんだよ、と話してくれる。
それにしても、色々と直すところはいっぱいだ。

もとさんは、いろいろと忙しくなったので穴塞ぎを業者に頼んだらいいよという。
そうか、それならと業者の人に速攻頼むことにする。


火入の準備はできた。
一番左の銅釜に6合のお米と筍、野菜、揚げを刻んだものや昆布を入れる。
おしょうゆはふうちゃんが作った今年のおしょうゆ。

真ん中のアルミニウムの羽釜では汁物を作る。

へっついさんの火入には、まずは新聞を捻ってその上に細かく裂いた木を入れる。火がついたら薪を大きいものに変える。
広葉樹の木よりも針葉樹の木の方が煤が出にくいと、もとさん。
外に出てみると煙突からモクモクと煙が・・・。
やった〜!無事に機能しています!!



それを見届けてもとさんが帰る。

ありがたや。それを見にきてくれたのか・・・。
羽釜のご飯は煙と匂いとで今ちゃんとふうちゃんが火を調節する。
20分くらいであっという間に炊き上がる。蒸らしに20分くらい。

果たして自分だけでこんなに華麗にできあがるのか?!

何度か失敗しないとわからないだろうなあ。

お汁も作る。
お味噌はうちの5年ものの味噌と、熊野の道の駅で買った味噌と九州のお味噌を合わせたものを用意した。

ふたりがテキパキと動いて料理はあっという間に完成。
ふうちゃんの庭にある木の芽と三つ葉をちらしておいしいご飯が完成する!



筍ご飯もお汁も軽く二杯はおかわりする。
おいしすぎる!!
今ちゃんと、ふうちゃんがそれぞれ手作りドレッシングを作ってきてくれた。
それを交互にサラダにかけて味わう。
今ちゃんが手をかけて作っているおこうこも美味しい。
山椒の葉っぱと三つ葉をご飯だけでなく、アクセントとしてサラダ、お汁に入れる。
ほんとうに美味しい。
野性が目覚める味。
たけのこ掘りに行こうと何度も言いあうけれど腰が上がらず。
2時間くらいかけて庭を見ながらゆっくりゆっくり食す。

最後は竹林に行くことを諦め、今ちゃんが焼いてきてくれたケーキと
ふうちゃんがじっくりと煮出したチャイでいただく。
あっという間に5時になった。

ふたりが帰る。
それからまたゆっくりと片付ける。

この家が人の気をどんどん吸い込んでいるのがわかる。
そうすることによって家の空気が変わってきている。

よそよそしかった家がどんどん懐をひらいてくれている感じ。
きっと私の感じ方が投影されているのだろうと思うけど。
でもそう感じることもうれしい。

少しずつみなさんに紹介していく。
まずはゴールデンウィークだ。