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ブダペスト8区でハンガリーの未来を思う。

バスに揺られて片道24時間。
フォルケホイスコーレのSchool Tripでハンガリーへ!

美しい観光名所を巡るだけではなく、地域の方々との交流やボランティアワーク、ディープなローカルスポット訪問、ソーシャルディスカッションまで企画された、フォルケらしい、濃い旅でした◎

中でも、特に興味深かったのは、「首都・ブダペスト8区」へ訪れた時のこと。

ブダペスト8区とは?

ハンガリーの首都ブダペストは、東京と同じく23区の行政区があります。その中で、特に移民・難民、低所得者層が多く暮らしている8区。

一時は、No-Go zone(立ち寄らない方がいいゾーン)と呼ばれることもあったのだそう。

今回のSchool Tripでは、ここ8区で活動しているNGOやコミュニティスペースに訪問して、話を伺いました。

そこで耳にしたのは、民主主義の後退に揺れるハンガリーのお国事情。
そして、自国の現状を少しでも変えたいと活動する市民たち。
そんな、リアルでちょっぴりディープなハンガリーの一面を紹介します。

驚きのハンガリーお国事情!

①移民・難民支援は犯罪!反NGO法


2015年、ヨーロッパに中東からの難民が数多く押し寄せた際、いち早く国境付近に高圧電流フェンスを設置したハンガリー。そんな反移民の姿勢を貫く現ハンガリー首相の極右派・オルバン氏。

さらに今度は、移民・難民申請者を支援するNGOや法律家が刑罰の対象となる法案が2018年6月に可決されたそうです。なんてこった!

これを聞いて、私は数年前にフィンランドで出会った友人(アフガニスタン人の難民)のことを、思いだしました。彼はセルビアからハンガリーに入国する際、負傷して命からがら逃げていたところを、心優しいハンガリー人の青年に助けてもらったことを、本当に感謝していました。元気にしているかな。

それにしても、ここまで徹底して反移民的政策をとるハンガリーよりも、難民受け入れ人数が少ない日本って一体。。。

②ジェンダー研究を禁止

ハンガリー政府は、2018年にジェンダー研究における学位の授与を禁止しました。政府の姿勢に対立してきたブダペストにある名門・中央ヨーロッパ大学(CEU)は、学部の大半をウィーンに移転することに。

ハンガリー政府担当者は、「基本的に人間は男性もしくは女性として生まれる。生物学的な性ではなく、社会的に創出された性の在り方を学問として取り上げるのは容認出来ない。」と発表したそうです。驚いた、、、!

学問の自由・教育の権利を脅かすハンガリー政府の姿勢は、国際社会からも非難を浴びているようです。

③路上で眠るホームレスに罰則

2018年6月の憲法改正により、ホームレスが公共の場で眠ったり生活することを禁止する法律が成立。これによって、ホームレスが路上からの退去に従わない場合は、警察による強制退去や所持品の差し押さえが可能になりました。それに加え、ホームレスがシェルター(収容施設)に行くことを拒むと、刑務所に収監することが可能に。

政府が運営するホームレスのシェルターは、劣悪な環境で、130人分の寝床しかない施設に、300人以上が収容されるケースもあると言います。

社会的弱者を作り出す根本的な社会システムには触れず、表面的にホームレスを“見えない化”する政府に、危機感を感じている市民が多くいます。

8区の未来に光!?ブダペスト新市長

先月10/13に行われたブダペスト市長選では、50%以上の票を獲得した野党・Karácsony氏が当選しました。極右的な政策を押し進める国政に、多くの市民がNO!と意思表示した結果に。

Karácsony氏は初年の優先事項として、
*低所得世帯の社会的セーフティネットの改善
*ホームレスのためのシェルターへの資金投入
*公共交通機関の改善
を掲げた他、Pride(セクシャルマイノリティーのパレード)への参加なども約束しているそうです。

当選時のスピーチでは、「忘れ去られた存在だった8区の問題に、積極的に取り組む」と言及し、今後の動きに期待が高まっています。

コミュニティーセンター・Auróraの存在

今回私たちは、8区にある「Auróra」と呼ばれる、コミュニティーセンター(市民の集いの場)に訪問をしました。ここは、ライブスペースやカフェバーも併設されていて、様々なイベントが開催される他、政治やsocial justiceをテーマにしたワークショップやディスカッションの場所にもなっています。

また、いくつかのNPO/NGOのシェアオフィス的な役割も担っていて、
* ロマ族の子どもたちへの教育サポート
* LGBTQ(性的マイノリティー)についての正しい認識を広げる活動
* 社会的弱者の社会・医療サービスへのサポート
* ユダヤ人の文化保全活動
* 社会派アーティストの芸術活動支援
など、様々なソーシャルな活動の拠点になっています。

リベラルな活動の拠点になっていることから、極右派の現政権から目を付けられ、何度も運営の危機にさらされ、乗り越えてきたAuróra。多くの市民の想いが詰まった、大切な場所だと伝わってきました。

Auróra’s long-term goal is to create an innovative and self-sustaining practice which increases the number of socially active citizens to advance the broadening of democratic practices in Hungary. 

ブダペスト8区で感じたこと。

Auróraで活動するボランティアたち
ドキュメンタリー映画をつくる人
学問の自由について語るCEUの学生
障がい者の雇用をサポートする人
多様な人々が共生できる社会を目指して活動する人

この日、ちょっぴりディープな8区で出会った人々。彼らの熱のこもった話に、心を動かされた1日でした。

自分が暮らす国や社会が抱えている問題に、素直に向き合うこと。
不満や不安を言葉にするだけでなく、自分にできるアクションを見つけて実行すること。
自分たちの手で、社会を動かすことを諦めないこと。

ハンガリーの若者たちから、そんな学びをもらった気がします。

ロマ文化の食事を頂きながら、ロマのおじちゃんたちの音楽を聴く夜。なんだかとても心地良かったなぁ♪

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