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新人戦終了後、飲み会で全てバラされる話。

今年も秋の新人戦が終わった
誰も入賞できなかったがみんなよく頑張っていた
2年前の私はあれだけ真っ直ぐに頑張れていたのか。今年の新入生は眩しかった。

終わりのミーティングで上級生全員が話しをする。話す人の方をジッと見つめてくる、それだけでもう胸が苦しい。そんな澄んだ目で見ないでと思う。

学年の若い順からなので私は最後から2番目だ。
「それぞれよく頑張ったと思います。しんどいこともたくさんあったと思うけどみんな偉かったです。怪我もなくこの日を迎えられて何よりです。今日を境にひとり立ちすることになります。毎年上回生はこの時期は少し寂しいものです。これからも…同期…を大事にして…自己ベストを更新…してください…ぅぅっ…」

声が詰まる
なぜかボロボロと泣いた
はいはいはい、と隣の同期女子に背中をさすられる

1回生が「どーした、どーした?」とざわつく
先輩いつも笑ってるのになんかあったのか…?と戸惑っている

近くでミーティングしている男子部まで「なんかあったんか?揉めてる?」という視線を送られる

同期の女子主将が最後に挨拶する

「はい、ごめんねー。みんな歳とったら分かるけど年々涙腺が緩くなるもんなんです。りょうちゃん、みんなが射ってる時から「みんな頑張ってるねぇ、偉いねぇ」って後ろで泣いてたよ。

本当授業参観に来た保護者みたいだよね〜。この子ね、情緒と感受性がバグってるから気にしないであげてね。

みんなが頑張ったのがとても嬉しかったんだと思います。はい、さっきも話題に出たけどひとり立ちになりますが、ペアの先輩と後輩は1番の信頼関係が出来てると思うからこれからも励んでね。以上!解散!」

はい、その通りです。代わりに言ってくれてありがとう。と、頷く。

もう〜卒業式じゃないんだからそんなに泣くことないでしょ。明後日も会えるんだよ。
そう言いつつ駅に向かう、大丈夫?電車乗れる?と呆れられながらも気を遣ってくれる。

うん、乗れる。てゆうか最寄りまで一緒じゃんか。切符を買うあの路線図がどうしても分からなくて交通系ICを使っていた
これでチャージしとけば大丈夫だ

切符を買う後輩たちを待ってみんなで同じ車両に乗る。

下級生を座らせてあげたいので私たちはドア側で立っておく。

同期になんか懐かしいよねと話しかける
ほんとだね
こんなに人が減ると思わなかったよね
そうだね

りょう、スーツクリーニングだしなよ?
またビチャビチャじゃん…笑
相変わらずだけどなんでそんなに泣けるの?
情緒面、心配なるわ

スーツは家で洗えるやつでよかったよ、ほんと。
うん、年々ね〜緩くなるよね
下級生が頑張るのってホントもう涙腺にくるよね。

てか眠い…乗り換えで起こしてね
立ったまま眠れるほど疲れてしまった

それぞれの家の方向の路線へと解散していく。
笑って手を振る。

この頃にはもう同期のHの家で一緒に暮らしていた
「ただいま〜」
「おかえり。」

「なんか疲れちゃった」
「そうでしょうね、明日オフでよかったね」

「…なに?」
「泣き虫ちゃん。自分が出てないのにコメントするだけで嗚咽ってどうゆうことなの」

「しょうがないでしょ。勝手に出てくるの。1回生なんて子どもみたいなもんでしょ。可愛いしかないの」

「まぁそうだね」

私服に着替えて身支度を整えている
「あれ?どっか行くの?」

「うん。男子部はお疲れ会あるからね」
「すごい体力だね。大丈夫なの?お店どこ?」

「ここから徒歩5分」
「あの焼き鳥屋ね」

女子部のお祝い会は後日である。

「私もう眠たくてしょうがないからお風呂入って先に寝てるね、昨日ドキドキして寝れなかった」

「また熱出てないか?」
大丈夫だと思うけどちょっとだけ頭痛い。
「枕、アイスノン敷いとけ。悪化したら電話な。」

昨日のうちに作り置きしていたおかずとご飯を少し食べて眠った

午後20時に何度も着信が入る
どうしたんだろ…?
男子の同期たちが何人かがかけてきている
1番最後にかかってきていた子にかけ直す

「ごめぇん。寝てた、なんかあったの?」
「あぁよかった。繋がった。」
「Hが変な酔い方しちゃってりょうに電話してよぉ!って大騒ぎしてて…今は寝ちゃったけど」

「え?こんな浅い時間に泥酔してんの?」
「みんなごめんね〜、すぐ迎えに行くね」

あっちが悪化してんじゃん。
そこらへんに落ちてる練習服を適当に着て髪を束ねる。
少し寒い秋の夜道を歩く。

お店に着いて〇〇大学の卓はどこですか?とお店の人に尋ねる

「はい、お迎えにあがりましたよ」
下級生が騒いでいる
「それH先輩の練習着ですか?さっきの話ホントだったんだぁ、何か食べます?」とニヤニヤしながらすすめてくれるので、盛り合わせで残っていたハツに手を伸ばす。うま。やっぱ塩だよね。

「え〜…何聞いたの?」
「あと未成年組は飲んでないよね?!」と聞く

「烏龍茶でこのテンションでぇす!!」
元気でなにより。

Hはどこー?
「あっちで寝てしまいました。」

電話をくれた同期に「どんくらい飲んだの?」と聞く
「ビール1杯だよ」
はじめの乾杯だけじゃんか。

…え?家では私とウイスキーとかロックで飲んでるのに?

「なんでこんな流れになったの?」

「それがさぁ〜」笑


1年生が部内で誰が好き?みたいな話になったらしい
ほとんどが同級生同士で気になってるとか猥談みたいになっていったんだけど、何人かが3年女子がいいって言い出してさ。

ハツを食べながら聞く
気の利く後輩が別のテーブルからもハツを持ってきてくれた
あれ?ハツ好きって言ったっけ?1番好きな部位だ。

「りょう先輩一度も怒ったことなさそう。虫も殺さんタイプでしょ〜優しくされたいっすね」「分かる〜大人だよね。いい匂いする」「あれが色気なのかなぁ〜…」

って会話があってHがめっちゃ笑い出したの。
多分あれがきっかけになったんだと思うんだけどね〜と同期が言う

「本気で言ってる?アイツ超怒るよ。怖い怖い。虫も余裕で踏み潰すし。
それにね俺らも1回生の時に同期の中で誰が好き?って話になって半数くらいがりょうだったんだよ。何人か告白して一瞬でフラれて辞めたやつもいたし。練習場にまで見にくる関係ない学部生もいて先輩たちが蹴散らしてたんだよ」

やばいっすね〜

「俺も入部したばっかりの時は可愛いなって思ってたし、意外にも男らしいとこも面白くて、授業も一緒で嬉しくて同期で1番の仲良し友達でいいやって思ってたの」

告白して距離が出来るくらいならそっちのほうがいいですよね

「だろ?そんでだんだん仲良くなってさ。
アイツはさぁ〜試合の度に結果が出ないと拗ねて感情的で機嫌もめっちゃ悪くなって俺に当り散らすんだよ。
初めての記録会の後に大学の近くのファミレス誘われてパフェ食べながら泣いてんの。
泣くか食うかどっちかにしろよって言ったら
食べるって言って黙々と食べてて、半分くらいで
もうお腹いっぱいで食べれない〜って泣き出すんだよ」

記録会で思うように点数出なかったからってここまで悔しがる?びっくりやろ?残したパフェは俺食ったけどさ。

「1年の時にちょっとした事故から俺と殴り合いになってこっちは多少手加減してるのに、結局アイツがブチキレて、跳び関節してコンクリートに地面に背中ぶつけて擦れて背中ズル剥けになってるのに黙っててさ、罰則で黙想してる時に痛いってワンワン泣いて、先輩に怒られてさ。
腕完全にキメられたせいで痛いし、泣きたいのは俺の方だよ!って内心思ったけどね。しかも医務室行くのに途中もう歩けないって言っておんぶしてよって甘えてくるし。俺も腕痛いっての」

でも背中に痕残ったらどうしようってHも泣いたじゃんって同期が言う

「うん、まぁ残らなかった。腰の方は残っちゃったけど…」

え?なんで分かるんですか?と一回生が不思議がる。てゆうかりょう先輩に怒りの感情ってあったんですね…。

「やべぇくらいあるよ。まぁでも、このくらいの時期になったらほとんどの同回生はあんな暴れ馬乗りこなせんって諦めていったね。お前らもそーなるよ」

何か意外ですよね。
そんな気が強いところあったなんて…
「気の弱い女はいない…アイツらはじめは基本猫被りだよ、身を持って知った」

そっから1回生が誰が好きか聞いてキャーキャー言ってたらしい

「しかもさ、1年の夏に卒業生と付き合いだしてさ、もぉなんなの?!って感じで。卒業生も卒業生だよ!社会人なんだったら色々出会いもあるだろぉ、なんで学生に手ぇだすかなって!思ってた!」

「でもちょっと前に別れたんだよね。その時はまじで大変だったけどやっと俺のとこ来てくれたんだよ」

え?それって付き合ってるんですか?

「そうだよ〜!!今一緒に住んでまーす!アイツの服のいい匂いは俺と同じ匂いでーす!ちなみに俺が洗濯物干してまーす!アイツ基本飯しか作りませーん。
そんでりょうの作るご飯めっっちゃ美味しいの。惣菜屋でバイトしてたのもあって料理詳しいし何か俺すこぶる体調いいの」

えー!?なんていうか執念ってすごいっすね。

「お前らも好きな子は簡単に諦めんなよ!」

この時点で顔は真っ赤だったらしい。

バカだねぇ〜と食べおわった串を専用のケースに突き刺す

しかもまだ続きがあった

後輩になんか2人だけの思い出ないんですか?って聞かれて、
「いっぱいある、俺しか知らない。なんていうか気が強いのに泣いたり怖いことあったあとはめっちゃ弱気になって可愛い、すぐ泣いちゃうから。声出さずにポロポロ泣いてんの」

怖い思いってなんすか?
怒られたとか?

「アイツ練習場で絶対に1番最後ならないようにしてるの知ってる?
昔、たまたま最後になった日に、帰る前にトイレ入ってる時に誤作動で非常ベル鳴っちゃって、大絶叫。男子部も残ってた奴で見に行ったら、オバケが鳴らしたのかもしれないって、すげぇビビって腰抜かして震えてんの。んな訳ないっての」

「そんで我慢出来るとか強がるし、でもまぁこの歳で漏らしたらさすがに可哀想だから、結局別の階のトイレの前まで連れて行ったんだよ。そんで俺を外に待機させて用足してる時まで怖いー!!何か話してよぉ!って大騒ぎ。マジでガキだよ。」

まぁそれは仕方ないですよね
怖いでしょうよ

「とにかくね、すげぇ手のかかる女なの!みんなが見てるのは仮の姿だぁ!なんなら今も手ェかかる、寝相は悪いし、何度布団かけても蹴ってんの。俺は基本ベッドから落とされる。それに寝言も酷い。寝てる時まで俺の名前ハッキリ呼ぶんだよ?びっくりするわ!」

でもりょう先輩、1番点数安定してるし教え方とか話し方も分かりやすいですよね
継ぎ矢したのも今いるメンバーでは先輩だけですよね。

「そうなんだよ。意外かもしれないけどみんな知らないところで色々調べたり何か難しいこと考えてるっぽい…ぶっちゃけ俺より上手いよ。あんなに情緒バグってんのになんで弓だけは冷静なんだよ、訳わかんねぇわ。」

「でもさアイツがすげぇ元気で走っててカッコよかった1回生の時が、懐かしい。あと意外に優しいところもある。俺、写真もめっちゃ見ちゃうの。
2回生から身体の調子悪くして倒れるたびに本当に怖かったし、色んな先輩と後輩にも助けてもらって辞めずに済んでよかったなぁって思ってる。最近はだいぶ身体の具合も良さそうだし、俺、すげぇ安心した。みんな、ありがとう。」

そういって座ったまま眠ったらしい。

下級生たちがニヤニヤしている。
「仲良しだなぁとは、思ってましたよ」
付き合う前からあんなに好きってヤバイですよね。

「そうかもねぇ。付き合う前には私がバイトしてる惣菜屋まで片道50分かけて買いに来てたんだよ。原付もないから大変だったろうに。」

「それはちょっと引きますね…笑」

「そうでしょ?
でも嬉しかった。」

のろけないでくださいよ〜と笑われる。

一通り事情を聞いてため息がでる。

「みんな新人戦お疲れ様。1人立ちおめでとう。
こんな日にごめんね…?びっくりしたよね。
大人はさ、お酒飲むとちょっとおバカになっちゃうの。多分本人は明日には忘れてると思う。

内緒にしてあげてね、お願い、この通りです!!
私も幼い時期に若気の至りで、ついHには八つ当たりしたり本音が出ちゃうっていうか恥ずかしいことばっかりバラされてもう本当…どうしていいか分からないよ。あと焼き鳥ごちそうさま」

大丈夫です!内緒にしときますから!

「部内で好きな子いるなら頑張るんだよ、私たちは遠回りしたから一緒にいられる時間が短いのは少し寂しいから、後悔しないようにね!」

ちょっとぉ〜ラブラブすぎませんかー?と笑われる

「へへへ、ごめんよぉ、ありがとう。
まぁとりあえずこの酔っ払い連れて帰るね。
お先です。」

その前にこっそりと帰る前に幹事に1万円をこっそり渡す。
「Hの分これでたりる?残った分で下級生の会計軽くしてあげて、よろしくね。」

「帰るよ。起きれる?」
楽しそうに眠っている。
「無理だよね。ヨイショっとおんぶする。」

え?体重差めっちゃあるのによく持てますね。
2倍くらいありますよ?

「まぁおんぶなら大丈夫。足腰は強いから、距離も割と近いからいけるよ。あ、ごめん。だれか靴だけ箱から出してくれる?」

「じゃぁ、お疲れさま。楽しんでね」
そう言って店を後にした。


家に着いて横向きに寝かせてると
「あれ?俺どうやって帰ってきたの?」
割と早い段階で起きた

とりあえずお水飲める?
トイレとかも大丈夫?

…あれなんかちょっと…ヤバイかも…

あートイレ行こう、間に合う間に合う
ちょっとだけ我慢して

トイレの前に座らせて背中をさする
いつもと逆だなと思う

大丈夫大丈夫、出そう?

気持ち悪いのになんかでない…

吐きやすいようにちょっと水飲もうか
頑張って飲んでみ

ぐったりして辛そうにしている
普段はこれくらいの酒量で潰れることないのになぁ、疲れてたのかなとさする

うん…しんどいよぉ…
泣いているのがあまりに気の毒に見えた

しょうがない
ちょっと下向いて下の奥下げる感じで口開けれる?

ごめんね、一瞬苦しいよ
指を2本使って喉の奥をぐっと刺激する

うぁ…バシャっと少し出たのをきっかけにどんどん出てくる。大丈夫大丈夫。楽になるよ。

ちょっと落ち着いた頃に
「ごめん…」
いいって、いつもと逆なだけだよ

トイレの方は大丈夫?
1人で出来そう?

出来る
じゃぁあっちで待ってるねとドアを閉める

フラつきながら出てきて
横になろうと支える

「気持ち悪くなったら起こしていいからね」
そう言って眠る

夜中何度か起きて息してるから確認するとりあえず大丈夫そうだった


翌朝、「うぇ〜頭が痛い。喉も乾いた。しんどい、何だこれ」と珍しく弱っていた。

二日酔いだよ、珍しいね
お水飲もうか。
ちなみに昨日のことどれくらい覚えてる?

「家出てビール飲んで話してたら眠くなって気がついたら帰ってきてた。やば、俺会費払ってないわ。」
「払っといたよ。」
「え?なんで?」
「迎えに行ったからね」
「…まじで?」

「疲れてたのかな、あんなに酔っちゃうの珍しいよね。」

「うーん…分からんな。とりあえずオフで良かった」

聞いたことはもうしばらく教えないでおこう。


何か色々喋った気もするとボーッとしている

疲れが溜まってるとお酒飲むと爆発するタイプなんだねぇ、と笑う。

平和な日々は突然に終わる。
その前にシングルラウンドがあった。

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無印良品のポチ菓子で書く気力を養っています。 お気に入りはブールドネージュです。