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失敗は、人間にしかできない。

ビジネスでは「イノベーションが大事」とよく言われますが、現実には口でいうほど簡単なことでありません。

イノベーションには知の探求が必要
本来、企業ではどうしても効率を求められます。当たり前ですが、目の前の売上や利益がないと事業は存続できません。なので、目先の売上につながる仕事が優先されます。これも、普通の考え方です。しかし、それだけやっていてもイノベーションは生まれません。従来とはまったく違う目線を持たないと、新しいことは生まれないのです。

ウチは「貼り箱(はりばこ)」という商品パッケージ、つまり化粧箱を企画・製造している小さな町工場です。コロナ禍で同業他社が苦しんでいる中、おかげさまで何とか好調を維持しています。
イノベーションという言葉は自分には特に関係ないと思っていましたが冷静に考えると、もしかしたら今やっていることが世間でいうイノベーションなのかもしれません。

ウチは家族中心で営んでいる、いわゆる家内工業です。
同業の大きな会社と同じ土俵で戦っても、絶対に勝ち目がありません。資本力、人材、設備、何をとっても無理です。なので、この小さな町工場がどうやって生きていくかを、いつもずっと考えています。

おかげさまで貼り箱製造の技術は、ある程度あると思っています。しかしハードだで戦っても、モノがあふれる世の中ではあまり意味がありません。最終的には価格競争になって、資本力のある企業と対等に戦うことは出来ません。しかし10数年前にブランディング・デザインという考え方に出会い、これはもしかするとウチに合ってるんじゃないかと感じました。

それは表層的なヴィジュアルのデザインではなく、企業のコンセプトやメッセージ、その世界観をデザインで表現するというもの。最終的なアウトプットは視覚的デザインですが、そこに至る情報やプロセスをデザインするという感じでしょうか。

こんな考え方があるんだと思ったのが最初、その後出会ったデザイナーの方から人脈が広がり、ブランディングやデザインのことを勉強し始めました。私にとっては、まさに未知の領域です。製造業とはあまりにも違う世界なので最初は戸惑いましたが、クリエイターの人たちとの交流のおかげで少しづつ理解ができるようになりました。知れば知るほど、面白い世界でした。

単に面白いではなく、何とか自分の事業とうまく融合出来ないかを模索していました。最初の頃はクリエイターたちと一緒に展示会をしたりと、すぐにお金にならないことばかりやってた気がします。

ある意味それが、「知の探索=時間がかかる、一見無駄に見える」だったのかもしれません。でもそれが、今につながっているのだと思います。
まさに長い目で見てやってきたことが、自分では意識していませんでしたがイノベーションだったのかも?
そう考えると、無駄ではなかった。遠回りのように見えて近道だったように思えます。10数年ですから、まぁ〜近道とはいえませんが。笑

ビジネスでは生産性や効率化が求められますが、イノベーションには一見無駄に見えることや時間がかかること。また、たくさんの失敗がつきものです。非効率で失敗の連続、それでもやり続ける。これはAIには出来ません。人間だからこそ、出来ることです。

知の深化(出来上がったものを深堀りしていく)は、AIと相性がいい。つまり今あるものを効率よくこなすのはAIが得意ですが、失敗してもそれをやり続けるなんてことは、人間にしか出来ません。というか人間しかやりません。笑 中長期的なビジョンや信条をもって挑戦していく。ここに、人間の価値が存在しているのかな?

ウチでは貼り箱の高品質なモノづくりは基本にありますが、もっと別次元の考え方があります。ハードだけではなく、ソフトの考え方です。
これはクリエイターの方々から今も学ばせてもらっていますが、パッケージ(化粧箱)を包装資材という機能だけではなく、企業・商品と顧客との接点(コンタクトポイント)と捉え、ブランディングやコミュニケーションのツールだとする考え方です。パッケージとしての価値のベクトルを変えることで、新たな価値が生まれます。
もちろんこれは万人受けする考え方ではないですが、私たちのこのアプローチが徐々にではありますが、お客様にご理解いただけるようになってきています。とてもありがたく、価値のあることです。

町工場の小さなイノベーションかもしれませんが、これからもっとその考えを広めて行きたいです。そのための努力を惜しみなく、やっていきたいですね。

意思を運ぶ箱。人の心を動かすパッケージ
貼り箱の企画・製造:村上紙器工業所

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