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【美術】群青に魅せられた「村居正之の世界展」

先日、郷さくら美術館で開催中の「村居正之の世界展」に訪れたのですが、本当に良かったので感想を残そうと思います!
会期は今週末の2/25までなのですが、まだ行かれていない方に是非オススメしたいという気持ちでこの記事を書いていきます!

村居正之先生とギリシャシリーズ

村居正之先生は1947年京都生まれ、現在もご活躍されている日本画家です。
1990年代から約30年間にわたって制作されてきたのがギリシャを題材としたシリーズで、日本画独自の技術である岩絵具を使って描かれています。
特に「群青」は村居先生の象徴的な色であり、展示全体を通して青の澄んだ美しさが際立っていました。
本展覧会ではこの30年の集大成が見られ、その世界に私もすっかり虜になってしまいました…!

(余談)
私も京都にゆかりのある人間なので、京都出身というだけでどこか親近感を感じちゃいます。
インタビュー映像によるとギリシャシリーズ以前には京都の風景なども描かれていたようですが、30年間特定の題材に向き合って独自の絵を確立された「現在の」村居先生が描く京都の景色もすごく見てみたいです。
夜の鴨川とか、古都の夜桜とか…!
最近また日本の風景にも取り組んでいるとインタビューで仰ってた気がするけど、どこで作品見れるのかな…。


展覧会レポ

今回、作品はもちろん鑑賞体験全体が素晴らしかったので、展覧会レポという形で書いていこうと思います!

郷さくら美術館
中目黒駅から目黒川を渡って少ししたところにある、郷さくら美術館。
ひっそりとした佇まいですが、桜のデザインがあしらわれた黒いタイルがお洒落な外観です。

郷さくら美術館

1階展示室
受付すぐのところに展覧会場の入り口があるのですが、この最初の部屋が大作・傑作揃いでして…
この段階ですっかり世界観に引き込まれました。

これだけ魅力的な作品揃いなのに人がまばらで、視界の遮りや余計な気遣いなくじっくり鑑賞できたのが本当に良かったです。
寄ってみたり、引いてみたり、椅子に座ってぼーっと眺めたり…いろんな見方をしながらずっとこの部屋に入り浸っていました。
離れるのも惜しいくらい、居心地良くて贅沢な空間だったな…。

空気感の表現が秀逸で、画家自身もこの場で息を呑んだんだろうなと想像する。
立ち会った人間からすると奇跡のような美しい瞬間だけど、こうした瞬間が何百年何千年もの間この地では繰り返されているんだろうな。
同じ地球上、異なる時間の流れに思いを馳せてしまう遺跡の尊さ。その存在・その場の空気・感動を伝えてくれる芸術の尊さ。
吸い込まれるような青。
月の光がなんとも神秘的で美しい。
目が離せなかった、素晴らしかった。

贅沢な時間を堪能した次の部屋には、遺跡が様々な切り取られ方で描かれた作品が集まっていました。
先ほどの部屋では遺跡や場の全体像を捉えるような作品が多かったのに対し、こちらの部屋は遺跡の一部をクローズアップしたような作品が集められていた印象です。
最初に大作を見てテーマの世界観に引き込まれたあとで、画家独自の視線で様々に切り取られた場面を覗いていくというのは自然と好奇心がくすぐられます。
入口に目玉があるのって中々珍しい気もしますが、展示全体の世界観が一貫している場合にはとても効果的な展示の構成だなと思いました。

また、この部屋の奥では村居先生のインタビューが放映されていたのですが、先生のお人柄や謙虚な姿勢が伝わってきて尊敬の念を抱きました。
まっすぐ物事に向き合うことって気力や時間はかかるけど本当に大切なことですね…。
インタビューを見終えたあとに改めて最初の部屋に戻って作品を眺めてみると、やっぱり心に響く表現の土台にはこうした人間自体の素晴らしさがあるのだろうなぁとしみじみ思いました。

決して大きくはない建物のたった2部屋、
これだけでもうかなり充実感のある内容でした。
しかし、貪欲な私はもっと色んな作品をみたいと意気込んで、エレベーターで3階まで一気に昇ります!

3階展示室
3階には夜方の静謐な雰囲気の遺跡のほかに、明るい昼の風景が描かれた作品も展示されていました…!
1階ですっかり村居先生のファンにさせておいて、シリーズ初期の作品も含めバラエティを拡げた作品を見せてくれるという展示の構成もニクイですね〜〜


さて、遺跡を映し出す夜の青には悠久の時を深々と感じるのに対し、晴れた昼空や海の青色には今この瞬間の生命力のようなものを感じます!

白と青のコントラストに注目。

大雑把に同じ青でも細かな違いで印象が全然違うことに色の面白さや奥深さがあるんだろうな~
特に岩絵具は粒子の粗さによっても色の濃淡が変わってくるそうで、村居先生はご自身で粒子を精製してサイズごとに分けて場合によって使い分けているそうです。
なんと、Youtubeにその様子も載っていました!

作っている様子を見ると絵具の物質性をまざまざと感じます…。
実際に画面に乗せたときの岩っぽいゴツゴツ感や粒子の繊細なキラキラ感は岩絵具ならではの表現だし、労力に見合う魅力があることがわかりました!


2階展示室

階段を下りると、2階にもまたバラエティ豊かな景色が集まってます。

私が特に惹かれたのは、
それまでの展示でも数点描かれていた「メテオラ修道院」

世界遺産にも登録されていて、孤岩の上に建築物が立っているというファンタジー感のある景色です。
(今回の展示会で「憧れの地リスト」に仲間入りしました!)

雨のメテオラ

この部屋のメテオラは雨の中に描かれています。
メテオラが主題の作品はどれもRPGの世界のような冒険的な空気があってどれも好きだったのですが、今回はおとぎ話の世界のようなまた一味違う雰囲気があって素敵でした。
雨の描き方が装飾的で絵本のようなかわいらしさがあるからかな…?

灰色の背景というのもこれまで見てきた作品からすると珍しくて、雨のどよんとした空気感は捉えつつも、控え目な背景によって主題がこれまでと違う形で強調されていました。
丁寧に描かれたレンガ造りの壁や暖かいオレンジ色の屋根など、この空気感で描かれるとメテオラってこんなに可愛いんだ!と発見がありました。
1つのモチーフにしても周囲との調和の仕方によってまったく異なる印象を生み出すのが面白いところですよね。

展示終了
心惜しいですが展示室を後にして、階段を降りて1階に戻ります。
階段を下りたところに小さなグッズ売り場がありました。(受付兼レジのすぐ隣です。)
いつもはポストカードを買うだけなのですが、今回かなり満足度の高い展示だったので図録も購入しちゃいました!

眺めているとまた本物が見たくなる。
会期終わる前にもう一回行こうかな…


おわりに

本展覧会のサブタイトルにもあるように「歴史を刻む悠久の青」の世界を堪能できてとても充実した時間を過ごせました。

「悠久」は私の心惹かれるキーワードの一つな気がします。
今回の村居先生が描いたギリシャシリーズ然り、以前から好きな写真家 星野道夫さんが撮ったアラスカ風景然り・・・
同じ地球上の遠く離れた地、遠く離れた時間に思いを馳せることって普段の生活の中ではあまりないんですけど、芸術を通してその存在を間接的に感じることで、自分も周りの忙しそうな人達もみんな大きな大きな地球の一部なんだなと思えます。

🌏

こうした地球の一員としての意識を忘れてしまわないように、これからも定期的に芸術に触れたり、遠くの地に足を運んだりしていきたいです!


それでは、長くなってしまいましたが読んでいただきありがとうございました!
写真で見ても綺麗ですが、本物は写真や言葉じゃ伝えきれない素晴らしさなので是非直接見に行っていただきたいです…!
もうすぐ終わっちゃうので、お近くの方はこの3連休にぜひ!!

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