悩むということ

「なぜ人間関係がうまくいかないのか?」「何のために生きているのか?」

 このような問いを心の中で投げかけている方々は大勢いることでしょう。

 私たちは混迷を深める時代の中で、「生きづらさ」を抱えています。ひとたび問題が起こる度に、どうすることもできず、誰にも打ち明けられず、そのまま迷宮入りになってしまいます。そんな状況は心苦しい事ではないでしょうか。

 近年、芸能界で相次いで自殺者が出ています。報道やネットメディアを通じて訃報を知った時、悲しみが広がりました。「一体なぜなんだ?」と叫ぶ声が聞こえてきます。芸能界だけではありません。市井の人々の中には何らかの原因で生きることに希望を見出せず、自死に至ってしまうケースが増加しています。特にパンデミックのような時期はその行為を後押ししました。

 巷では「こころの健康相談室」や厚労省が設置する電話相談窓口で悩みを受け付けているそうですが、応急処置のような対応では生きづらさを解消することは程遠いでしょう。相談者の心の深淵に触れ、悩みを共有することで心に背負っていたものから解放することが望ましいのではないでしょうか。

 人々が抱える「生きづらさ」は千差万別です。仕事・お金・恋愛・家族関係などのような日常生活から民族・国籍・人種差別のような社会事情まで枚挙にいとまがないようです。そのような問題に直面する時、私たちはしんどい思いを抱えることでしょう。

 私自身は「家族関係」で悩んできました。自分の記憶を思い返す度に、苦心惨憺たる思いをしてきたのです。それでも冷静に自分を見つめ、「どうしてこうなってしまったのか?」と自問自答を繰り返してきました。

 そんな日々を過ごすうち、私は政治学者の姜尚中氏の『悩む力』を読んで、思考を重ねてきたのです。姜氏は「悩むことこそ生きる力につながる」というメッセージを伝えてくれます。特に私は以下の通りの言葉に、心を打たれました。

<若い人には大いに悩んでほしいと思います。そして、悩みつづけて、悩みの果てに突きぬけたら、横着になってほしい。そんな新しい破壊力がないと、いまの日本は変わらないし、未来も明るくない、と思うのです。>(姜尚中『悩む力』集英社新書 p.177)

 『悩む力』は感染症の時代でも深く考える点が多々あると思っています。といっても、正直に言って私はまだ難しくて読みこなせていません。それでも、悩み抜けば強くなれることを教えていただきました。

 「なぜ生きづらいのか」という問いについて私自身の人生経験をもとに書き連ねてみます。

 読者の方々にとってはあまり参考にならないかもしれません。エピソードの中には思わず笑ってしまったり、あるいはお叱りを受けたりするかもしれません。それも覚悟の上です。なぜなら当時の状況をリアルに伝えるためには、私なりの文章表現でしか、読者に想像してもらえないからです。

 どう考えるかは読者の方々の自由です。少しでも「自分にあてはまるかもしれない。」と思う人がいれば、「それは思い違いなんじゃないの?」と思う人もいるでしょう。様々な考え方を踏まえて、想いを共感できれば、私としては望外の喜びです。

参考文献 姜尚中『悩む力』(集英社新書)

ご助言や文章校正をしていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。