見出し画像

社名を変えた話

会社をつくって4年が経った。サラリーマンをやめてからは7年。

4年前、お客さんと契約を結ぶときに会社じゃないと、と言われたので慌ててつくったのが今の会社。

慌ててつくる中で、困ったのが「社名」

当たり前だが社名なんてそれまで考えたことなかったし、あんまり気にしたこともなかった。サラリーマン時代に「兵神装備さん」という取引先があって妙に印象に残っていた(※)が、それ以外は創業者の名前とかサービス名とかで差し当たり社名というものについて考えたことはなかった。
※ 「兵庫」と「神戸」の頭文字だったのかな

いざ自分の会社の名前を考えるとなると、どうしたらいいんだろう、と。別に消費者向けのサービスや商品があるわけでもないし、創業者の池田なんて何とか使える気がしないし。

で、「あ、これいいんじゃね?」と思い付いた社名は大体使われている(笑)ドキドキしながら検索をかけるとΣ( ̄ロ ̄lll)ガーン、みたいなことを何度繰り返したことか。ま、当たり前と言えば当たり前。確か最初はホークアイ(タカの目)とか組織(オーガニゼーション)とかを起点に考えていたような記憶がうっすらある。

その路線で考えていても打開できなかったので、切り口を変えて「将来的に自分がどういう会社をつくりたいか」を集中的に考えてみた。

突然、話は20年くらい前にさかのぼる

ところで、昔ちまたで流行った「カウボーイビバップ」というアニメがある。作曲家の菅野よう子さんが売れ始めの頃だったのかわからないが、それはそれはカッコいい音楽がついていて、作画もカッコよくて中学生の時にはまった。どうでもいいがサントラは全部持っている。

ある話の中で、主人公が「ブルース・リーはこう言ったんだ。『水になれ』ってね」みたいなセリフを言うシーンがあって、それがまた中二病の僕には妙に心に残った。なんかよくわからんけど、水、いいよな、と。

ちなみに、僕の名前は池田治彦というが、どう見ても水っぽい。ちなみに親が付けたわけではなく、おじさんが自分の名前から一字を取って付けてくれた。三番目の子どもともなると親もテキトーになるので僕の名付けには困っていて、(あやうく?)三郎になりかけていたらしい。三郎だったらまた人生違っただろうなと真剣に思う。

「げーっ孔明!」

また話は飛ぶように見えるが、僕は小学生の頃から『三国志』が好きで横山光輝全60巻のマンガは10回以上繰り返し読んでいた。兄二人の影響でシミュレーションゲームもやっていたし、『天地を喰らう』とか懐かしい。
(写真:三国志展で買ったクリアファイル。ちなみに史実ではマンガで有名な逸話はほとんどなく、演義の創作が多い)

で、三国志をきっかけに昔の中国にすごく興味があって、大学を出た頃に宮城谷昌光さんの歴史小説に出会う(※)。宮城谷さんの小説はタイトルからして『孟嘗君』とか『楽毅』とか、漢字漢字している作品しかなく、登場人物も漢字ばかりで(当たり前だ)、描写も漢字ばかり(僕の記憶ではカタカナが出て来たことが2回くらいしかない)。そもそも、三国志よりも前の時代のことなんてよく知らなかったものだから、すごく楽しく読めた。
※ ちなみに最初に読んだのは確か『夏姫春秋』。すごい話だった。

サラリーマン時代に宮城谷さんの小説に「これを縮めんと欲すれば、すなわち膨らますにしかず(相手をやり込めたいなら、まずは相手を増長させて調子に乗らせた方がよい)」みたいな言葉がすごく印象に残っている。その当時ムカついたやつがいたので何とかしようと思っていたのだが、その言葉に出会ってから反発ばかりしていてはダメなのだと悟り、態度を改めたのが功を奏し、最終的には自ら墓穴を掘って会社から去った。

その時、昔の凄まじい時代を生き抜いた人たちの言葉はすごいな、力があるな、と実感した。それで、宮城谷さんの小説を全部読んだ後、もっと勉強しようと思って司馬遷の『史記』とか『孫子の兵法』とか、漢文の授業に出て来る『戦国策』とか、文庫でまとめられているのを読むようになった。今考えると、20代の若者がのめり込むようなことではない(笑)なんてオッサン臭かったんだ・・・

老子との出会い

それで、ようやく本題に還ってくるのだが、色々読んでいくうちに『老子』に出会う。老荘思想というと、荘子の「あれ、俺って蝶になったんだっけ、蝶が俺だったんだっけ」とかちょっとイカれてる感じのやつか、みたいな認識だったが、老子の言葉は実際に読んでみるとなんだかすごく心に残った。

『論語』はちょっと説教じみているし、上下関係とか父子長制とか、封建的な考え方を裏付けるのに使われていてなんかヤダなと思っていて、実はいまだに手を出していない(もうすぐちゃんと読む予定)。

その点、『老子』は自由で、主体性を重視していて、自然な感じがしてとても良かった。例えば「他人が『これが(進むべき)普通の道だよ』と言っているような道は、実は普通の道ではない」とか、「曲がっているように見えるものこそ、実はまっすぐなのだ」とか。ちょっとトンチっぽいような、禅問答みたいな感じがするけど、要は「当たり前を疑う」、「他人の考えや意見を所与のものとしない」といった主体的な態度のことを言っている。

その中で、最も有名と思われる一節「上善は水のごとし」に出会う。お酒好きな人はこの名前のついた日本酒をご存知かもしれない。要は「水のあり方をモデルにして、生きようね」と言っているわけで、ようやく中二で出会ったブルース・リーの伏線を回収っ!

社名決まる

で、社名を考えるときに色々思い出していくうち、老子の言葉を大事にしたいなと思うようになった。なんか水みたいな組織をつくりたいな、と。当時の契約内容はビジネスモデルからして限界があったので、やがては会社を違う方向に持っていかなければ、とも思っていた。

それなら「如水」かな。でも、福岡には有名なお菓子屋さん「如水庵」があるし(黒田官兵衛の別名・如水は、恐らく老子の言葉から取っただろうし、黒田家には「水五訓」が伝えられている)、それはさすがに失礼だな、と。

原文に当たると「ごとし」は「若し」だったので、最終的に行きついたのが「若水」(じゃくすい)

うーん、なんかとても古臭い感じがするが…まぁ、いっか。このテキトーな性格によってついに社名は決まった。

しかしその後、僕は後悔することになり、自分のテキトーさを呪うことになる。

社名を変えたくなった理由

まず、何の会社かわからない(笑)

水とかお酒を扱っているのかと勘違いされてしまう。というか、そもそもお客さんは少ないのだからそんなに名刺交換したりすることはないだろ、と高を括っていたのだが、会社経営者になると色々な場に出ることがあり、そのたびに説明に苦しんでしまう。名刺を変えて、「組織開発」と「採用支援」の言葉を入れるようになってからは、説明は少し楽になった。が、第一印象に偏りを持たせてしまうことに気付いた。

次に、言いにくい(笑)

言いにくいと覚えてもらいにくい。ご年配の方々にはインパクトがあったようだが、なんとなく自分も社名をあえて言わないなど、存在感を薄めてしまっていた。

そして、読みにくい(笑)

もはや苦笑だらけだが、漢字は音読み訓読みで、さくっと読めないと相手に対して不親切だ。その点、カタカナはいい。基本的に誰でも読める。

4年間、悩む

会社をつくって割と早い段階で、僕は社名について悩み始めた。本当にこれで良かったんだろうか。いや、なんかもうちょい考えればよかったんじゃないか、とか。

そんなこんなで実に4年間、僕は社名について悩むことになる。しかし、考えてもピンとくるものが思い浮かぶわけでもなく、そんなことよりも仕事を一生懸命しなければならなかった。

あっという間に時は過ぎ、転機は4年目も残り数ヵ月で終わる頃、自宅を引っ越しをしたときだった。会社役員はなぜか自分の住所を登記情報としてさらさなければならず、住所が変わったりしたら登記し直さなければならない(税金だけで1回3万5千円)。司法書士さんから登記をし直す話をもらったときに、「そうだ、社名もついでに変えればよくね?」と思った(ちなみに、最初のお客さんは3年目の終わり契約がなくなったので、それもある意味転機になった)。

ヒントはティールから

そしてこれまた慌てて社名を考え始める。しかし、自動販売機にお金入れてボタン押せば商品出て来る、みたいなそう簡単に思いつくものでもない。どうしようかな、と思っていたちょうどその当時、僕はお客さんの組織ビジョン&組織戦略策定のお手伝いをしていて、どういう組織にしたいかについて一緒にまとめる仕事をしていた。その仕事を通じて、ん? これってうちの会社にも必要では? と思い始め、自分の頭の中にあるイメージを次々と書き出すことにしてまとめた。

書き出してみることはやはり大切で、4年前は思いつかなかったような、ああしたい、こうしたい、がたくさん出て来る。社員がいるわけでもないのに、働き方についても具体化した。それだけ、4年間でインプットをたくさんしたし、組織のあり方について本当に考えたのだと思う。

結局、社名は変えても原点である「水のごとし」の精神は変えたくないな、と思い、その方向性で考えることにした。でも、Like Waterだと意味わかんねぇな、みたいな。また水屋さんですか。

それで、ちまたで流行った『ティール組織』にあったこの図をぼんやり眺めていた(図:https://www.kaonavi.jp/dictionary/teal/ から拝借)。

ふと、「組織が進化するという前提なら、ティール(青緑)の次はどんなだろう?」という問いが頭に浮かんで、あ、ブルー、いいかも。青は割と好きだし、水のメタファーで使える。

それで、いったんブルーを使った社名を思い付いてこれいいかも、と思いながらロゴを作ってくださるという義理の父に相談したところ、「なんか違うんじゃない?」と言われてΣ( ̄ロ ̄lll)ガーンって。それが〆切の数週間前。

追いつめられてからの

まぁ、そう言われて決心が揺らぐということはまだ考える余地があるんだろうな、と思い、ブルーは残しながらなんかないかな、とずーっと考えて、まぁいっか、また今度の機会でも…とあきらめかけていた頃、電車に揺られていたときにふと思いついた

「Like Blue(青=水のごとし)」・・・!

今度こそと思い持って行ったら、義父もいいかもね、ということで。だいぶ夜遅くまで考えてくださったようで、とても良いロゴを作っていただいた(本当にありがとうございました)。

実際には「株式会社ライクブルー」のカタカナ表記にしている。これも反省を活かした結果である。

会社のサイトはこちら。
https://like-blue.co.jp/

そういうわけで無事に社名変更に至り、僕の4年に及ぶ悩みの種はなくなった。相変わらず何の会社かはぱっと見ではわからないが、少なくとも読み間違えとかはないし、思い入れもあるし、響きもいいし、気に入っている。義父に一回却下されて良かったとも思っている。もし問題が出てきたら、また考える…のかな。

振り返りってみてのオチ

だいぶ長くなってしまったが、社名について振り返ってみて思ったのは

僕って昔からオッサン臭かった。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。
もし社名について悩まれていたら喜んで相談に乗ります(笑)

この記事が参加している募集

名前の由来

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?