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パブリックアフェアーズの視点から岸田再改造内閣を見る #001

今月14日に岸田総理は内閣改造を行い、第2次再改造内閣が発足しました。新たな内閣の基本方針も閣議決定し、「物価高対策と新しい資本主義の加速」「人口減少に打ち勝つデジタル社会への変革」などを引き続き取り組むことを明らかにしました。

内閣改造とは、憲法に定められた首相の閣僚任免権に基づき大臣及び副大臣や大臣政務官の一部または全てを入れ替えることです。「1期1年・最大3期迄」と定められている自民党役員人事と合わせて行われることが一般的であり、閣僚を刷新することによるイメージアップ(支持率向上)が主な目的です。

今回は、今月に発足した岸田再改造内閣を通して政策と人事の関係性に触れ、今後、パブリックアフェアーズを行う上で重要となる視点についてまとめます。

『正しい政策が行われるのではない、選ばれた人が正しいと思う政策が行われる』

理想は「正しい政策」が行われることです。ここでいう「正しい」には様々な考えがあります。政治は与党と野党との権力闘争の過程であり、政策はその結果とも言えます。それぞれ異なる考え方を持つ政党(政策集団)が互いに考える「正義」を掲げ、マニフェスト等で示され選挙によって国民が審判を下します。

人事は「政策の正しさを判断して実行する人が選ばれる」と言い換えることもできます。各団体が考える正しい政策に対して理解がある人が選ばれることで一気に政策が進む場合もあります。政策実現に向けたスケジュールを策定する良い機会となるため注目するべきです。特に注目すべき「大臣三役」「大臣三役にならなかった与党議員」について取り上げます。

視点① 大臣三役

大臣三役とは内閣が任命する「大臣、副大臣、政務官の総称」のことです。副大臣は大臣不在時に職務を代行したり、大臣の命を受けて政務を処理します。大臣政務官は特定の政策・企画に参加し政務を処理します。

ある政策を実現するためには大臣三役から理解を得ることが何よりの近道になります。就任前から関係を構築しておくことが望ましいです。なかったとしても、就任に寄せて手紙を書く・祝電や胡蝶蘭を送るなどタッチポイントを増やしていく必要があります。

大臣三役の中には任された政策領域と自分の専門領域が異なってしまう場合もあります。そのような場合でも「日本企業の海外進出を応援したい」「イノベーションを応援したい」といった政治信条はHPや国会質問から知ることができます。

今回の第二次岸田再改造内閣の大臣三役名簿
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/meibo/index.html

視点② 大臣三役にならない与党議員

もう1つ着目すべき点が大臣三役にならなかった与党議員です。大臣三役として公的な立場となると、公務で忙しくなるため議員連盟の運営はのみならずアポイントを取ることも難しくなります。立場上、1企業や1団体と面会することにも制約がつくことになります。

そこで頼りとなるのが大臣三役にならず、しかも与党の部会の副部会長や部会長代理、与党の委員会や議員連盟の事務局長などの立場になることができる与党議員です。政策は省庁内の審議会でアジェンダセットされるものもありますが、与党議員が起点となって政調などを軸に議論が進められることも多いです。公務にも縛られることも少ないため、比較的フットワーク軽く政策実現に向けて動いてくれることが多いです。

今後、自民党や公明党の政調や税調、部会のメンバーが公表されることとなります。その際に自分の政策領域について詳しく、柔軟に意見交換がしやすい与党議員に目をつけておくことで、今後のパブリックアフェアーズ活動が進展しやすくなります。

自民党役員名簿
https://www.jimin.jp/member/officer/

今回の岸田再改造内閣について

各派閥への配慮に次ぐ配慮

今回の岸田再改造内閣の特徴は自民党各会派への配慮が十二分に滲み出ているところです。大臣は会派の規模に基づき順送りに選出され、副大臣・政務官も細かく気配りがなされています。女性の副大臣・政務官がいないことが指摘されていますが、こうした派閥の論理とともに女性局のフランス出張問題等で選出できる人材がいないことも挙げられるのではないでしょうか。

日本経済新聞社「内閣改造、派閥順送りと「適齢期9人」起用のなぜ」より引用

今回の内閣改造からも見られるように、日本では長らく与党依存の政権・国会運営がなされてきています。これには法案審議が国会の専決事項とされ、法案を提出した内閣には国会の議事運営に関与する公式の手段は与えられず、与党に頼らなければ何事も進まないことが背景として挙げられます。また選挙前には首相が党の顔として適切でないと判断されれば「降ろし」が行われます。

そして岸田首相の側近として支え続けた木原誠二氏が内閣官房を離れ党の役職(幹事長代理・政調会長 特別補佐)についたことは政策過程の大きな転換点であると考えています。

防衛費増額・防衛3文書の改訂、原発処理水のあり方など昨年秋頃から行われた政策の転換は主に首相直下で行われてきました。そうした岸田首相の決定を支えたのが木原氏です。これから選挙前までは自民党政調会(萩生田光一 政調会長)らの意向が政策決定に強く出ることになるでしょう。

今後の政治スケジュール

今後は臨時国会で補正予算の審議が始まります。秋頃からはR6予算・税制改正に関する審議が本格的にスタートし、12月頃の取りまとめに向けて与党政調・税調での審議が加速します。また規制改革推進会議では次期規制改革案の策定に向けて情報収集を行っており、来年度において政策実現が必要となる項目があれば秋頃から動いておくべきでしょう。

参考文献


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