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生きること

私の身体が、今ここ、文字を書くことだけに集中して、半紙に筆で字を書きたい、という欲求にかられた。

書道をやりたい、と思った。


書道なんて、中学生の授業以来、触れてこなかった。

だって、書道の時間が嫌いだったから!笑


お手本通りに、きちんと、上手に、書きたい!
なぜかそこへのこだわりが強かった私。

なのに、自分の技量が足りないせいで自分の思い通りに筆を動かせないから、ちっとも上手に書けない。


だから私は、書道をやり始めると、上手く書けない自分にいつもイライラしてた。

イライラするのはいい気分ではない。
そんな気分にさせられるから、書道は、嫌いだった。


でも大人になった今、ただ、思うがままに、筆で紙の上に文字を書きたい、と素直に思った。
上手いとか下手とか、関係ない。

気持ちよく、自分の心のままに筆を動かしてみたい、と思った。


家に半紙はあった。

書道用の墨汁や硯はなかった。

でも、目の前には絵の具セットがあった。


あ、絵の具でやればいい!

そう思ったら、もう実行していた。

自分が思う色を、パレットにのせていく。

書道をしたい!と思い浮かんだときから、書きたい字は自然と頭の中に浮かんでいた。


生きる、の
「生」

「命」

だから、

「生命」


いざ、半紙と向き合って、筆をのせる。

勢いよく、思いきり。


あれ。

小学生のときの書道の感覚とは、明らかに違う。


筆がスーっと、半紙の上を気持ちよく動いていく。

自分がいいように、心のままに筆を動かしている感じがして、なんだか、とっても、楽しかった!



「生命」
一番最初に書いた「生命」
なんのお手本もなしにいきなり書いたから、
バランスがとれずに「命」の最後の縦棒をのびのびと
伸ばせなかった。


最初より、バランスはとれてる?
でもまだ「命」が窮屈そう…



「生」
のびのびとどちらの字も書きたい!
と思ったから、
別々に書くことにした。



ちょっと遊んでみたり。


「命」
ああ、最後の縦線がかすんでしまった…!
と思ったけれど、一番のお気に入りになった。


「生きる」


色を混ぜて筆に乗せると、半紙の上でどのようにして色が出るのか、書いてみるまでわからない。

思った通りに半紙の上に色が出ることは、なかった。

でも、それも面白かった。

ほぅ、ここでそういう色の出かたをするのね、と思ったり、それなら次はこういうふうに色を混ぜてみよう、こういうふうに筆に色をのせてみよう。

そうやって書いてみるのが面白かった。

気がついたら、小一時間ほど経っいた。

書き終わったあとのパレットの上に、
使った色がランダムに
広がっているこの感じも好きだった。


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「生」と「命」を書いている最中のこと。

生きる「喜」び

生きる「幸」せ

ってあるな、

と思って、


「生」を書いている最中に、
「喜」と「幸」の字も書いてみた。


「喜」
書き慣れない筆で書くから、文字の形が脳内で
ゲシュタルト崩壊しそうになり、何度か指で空中に「喜」と書いて、文字の形を確認した。
バランスは微妙だけど、後からみたら
けっこう素敵な色が出ていたな。


「幸」
最後の縦線、斜めになってしまった。
それもご愛嬌。


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生と死は隣り合わせだから、「生」という字を書いているうちに、「死」という字も書きたくなった。


「死」という字を、どんな色で書こう?


生も死も、どちらも生き物にとっては避けて通れない事象。

生きていれば、いつかは死ぬ。


だから、「生」と「死」の間に大きな隔たりはないはずで、

「生」が良くて、「死」が良くないもの、悪いもの、というような善悪があるものではないと、
ここ最近の私は考えている。


なのに、私は「死」の字を書くときに、なんとなく、「生」と同じ色味で書くのをためらってしまった。

なんだか、「生」よりも、少し暗い色味で書きたいような気がした。

私の頭の中での考えとは別に、私の心は「死」のイメージを、「生」よりも暗いものと感じているんだな。


「死」
今見返してみると、そこまで暗い色にはなっていない
ような気もする。
なぜか、赤色を入れたくなった。


それでも、私は、自分の中にある、

「生」と「死」に隔たりはなく、どちらが善で、どちらが悪、という概念はない。

との思いを体現したい、という気持ちもあった。


だから、書いている途中で、

やっぱ明るい色ももう少しいれて書こう!

と思って、そうしてみた。


だけど、あれれ。

うまいこと、明るい色が出てこない。


それに、「生」や「命」を書いていたときよりも、雑に「死」という字を書いている自分がいた。

「死」は「生」ほど重要ではない、と自分が思っているようだった。


おかしいな。

私はまだ、自分の考えを心の中にまでインストールできていないみたい。


生物としての本能なのか、やっぱりちょっと、「死」と向き合うのは心が落ち着かないのかな。


「生死」
「生と死」


書いていて思った。

暗い色のほうが、明るい色よりも支配的で、その色を覆い尽くしてしまう、ということを。

そもそも、暗い色と明るい色の概念は人それぞれ違うものだから、難しいのだけど…!

現実世界でも、ネガティブなエネルギーって、ポジティブなエネルギーより、強かったりする。

それは、生物としての生存本能がそうさせるから。

ネガティブな方に強く反応するのは、生き物がもともとに兼ね備えている標準装備だから。


それでも私は、私がイキイキと輝ける、自分の好きな自分でいるための選択をとりたい。

暗い色も無視しないで。

暗い色もそこにある。そのことをちゃんと認め、受け入れたうえで、

私は、私がイキイキと輝ける、自分の好きな自分でいるための、選択をとれるようになりたい。

いや、なる。


私にはその選択をとる権利があるし、責任がある。

それは、私のために、私だけが選択できるものだから。


はる
2024.2.4

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