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今週の読書録(2024.1.6)

年末年始は、お気に入りの美味しい小説等の3冊を読了。


月ぞ流るる

今年の大河ドラマの主人公は紫式部ということで店頭には源氏物語等の平安文学コーナーができていました。

澤田瞳子さんの『月ぞ流るる』の主人公は、赤染衛門。
源氏物語の紫式部、枕草子の清少納言あたりは教科書にも登場します。
恋多き女流歌人として知られる和泉式部も平安女流文学の立役者としては著名。
比較すると赤染衛門は少し地味な印象でした。

若いころは、同じ上司である中宮・彰子に仕えた元同僚である紫式部(藤式部)の友情出演もある本作。
『紫式部日記』でも清少納言や和泉式部に対しては辛口の紫式部目線でも赤染衛門に対しては一目置いていた様子がうかがえます。

ことにやむごとなきほどならねど、まことにゆゑゆゑしく、歌詠みとてよろづのことにつけて詠み散らさねど、聞こえたるかぎりは、はかなき折節のことも、それこそ恥づかしき口つきにはべれ。

紫式部日記より

現代風に意訳するならば「一流の家柄ではないけれど、ちょっとしたタイミングで読む歌はハッとするほど良い!」というところでしょうか。
『月ぞ流るる』の中でも赤染衛門がひくほどグイグイと「あなたも書きなさい!」と執筆をすすめる威圧感たっぷりの紫式部が登場します。

赤染衛門(朝児)は、退職せずに勤続年数を重ねる紫式部とは異なり、3人の子を育て、夫の単身赴任にも対応し、子育てがひと段落したタイミングでオーナーの藤原道長の声がかかりで宮中に復帰することに。
40過ぎれば女性は鬼籍に入っていてもおかしくない時代に、和歌の才能に定評があるとはいうものの、夫と死別し、子が成人してからの再就職せざる状況に巻き込まれる赤染衛門。
「いやいや私なんて…」と戸惑いつつも、娘と同じ職場に勤めることになり、返歌に困るタイミングではアドバイスを求められ、歌会の添削をする等、結構頼りにされています。
権力を巡る抗争に巻き込まれ、苦悩しつつも何だか充実していそう。

これまでの平安文学を読む限りでは、どこか影が薄い印象であった赤染衛門の後年の様子や「栄花物語」を執筆するに至ったきっかけが描かれている本作。
読むと源氏物語や大河ドラマをより一層楽しむことができるかもししれません。。

紫式部が生きた平安中期を描く、豪華絢爛宮中絵巻。

日本初の女性による女性のための歴史物語『栄花物語』の作者である朝児(赤染衛門)からみた宮廷はどんな姿をしていたのか?

宮中きっての和歌の名手と言われる朝児(あさこ)は夫を亡くしたばかり。五十も半ばを過ぎて夫の菩提を弔いながら余生を過ごそうとしていたが、ひょんなことから三条天皇の中宮妍子の女房として再び宮仕えをすることになる。

宮中では政権を掌握した藤原道長と、あくまで親政を目指す三条天皇との間には緊張が入っていた。道長の娘の妍子が、将来天皇となるべき男児を出産することが、二人の関係に調和をもたらす道だった。しかし、女児が生まれたことで、道長は三条天皇の排除を推し進めていくことになる。

朝児は、目の前で繰り広げられるきらびやかながらも残酷な政争に心を痛める。なぜ人は栄華を目指すのか。いま自身が目にしていることを歴史として書き記すことが自らの役目ではないのか。そこで描かれるのは歴史の勝者ばかりではない。悲しみと苦しみのなかで敗れ去った者の姿を描かねばならない。その思いの中で朝児は筆を取る。

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椿ノ恋文

読むと鎌倉や伊豆大島に行きたくなる一冊。
特に稲村ヶ崎温泉は早速調べて、次回近隣を訪れる際には是非とも立ち寄りたいとブックマークしました。

こちらは「ツバキ文具店」というシリーズものの一冊だそうですが、単独で読んでも十分楽しむことができました。
小川糸さんといえば「ライオンのおやつ」が印象的でしたが、同じような日々を一歩ずつ歩んでいく主人公は小川さんの作品ならではの空気感。
人間関係は思うようにならないことはあるけれど、こういう生き方もありかと肩の力が抜けていく作品。

「いつか」ではなく、今、大切な人に伝えたい。                                                              累計70万部のベストセラー、「ツバキ文具店」シリーズ最新作。

鎌倉と小高い山のふもとで、代書屋を営む鳩子。家事と育児に奮闘中の鳩子が、いよいよ代書屋を再開します。可愛かったQ Pちゃんに反抗期が訪れたり、亡き先代の秘めた恋が発覚したり、新しく引っ越してきたお隣さんとの関係に悩まされたり……。代書屋としても、母親としても、少し成長した鳩子に会いにぜひご来店ください。

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世界をめぐるチキンスープ

長月天音さんの「神楽坂スパイス・ボックス」シリーズ早くも三作目。
近所にあれば通うこと間違いなしのスパイス料理専門店。
今作でも、カレー、麻婆豆腐、トムヤンクンと各国の料理が登場します。

冬瓜と豚肉のタジンは特に美味しそうで、モロッコ料理のお店を検索してしまったほど。

神楽坂の路地の奥の奥にある木造家屋のスパイス料理専門店「スパイス・ボックス」。
料理が美味しいのはもちろん、食べるだけで心の不調も治し、整え、癒やしていくお店として、ファンを着実に増やしている。
今回は、ドタバタの子育てに疲れた祖母と母親、やる気を見せない後輩社員とそれを憂う先輩社員のお二人、そしてセルフ・プロデュースと周囲の視線に疲れた女性社員などが人生の岐路に立ってご訪問。
美味しい料理を食べながら前に進む勇気が湧くお店はいかがでしょうか? 心にも栄養が染み渡る、大好評・料理小説。

Amazon紹介より



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