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「システム・シンキング」とは?「実践 システム・シンキング」湊宣明:著(@講談社)を読んで考えてみました。

「システム・シンキング」とは?「実践 システム・シンキング」湊宣明:著(@講談社)を読んで考えてみました。

 いま社会人大学院で学んでいる「システム・シンキング」の科目。いまいち、私の頭の中でこの意味がきちんと理解できていないのではないか?と自身で思う所があり、図書館に立命館大学の湊先生の著書があったので予約して読んでみました。
 そもそもこの「システム・シンキング」は米国のMITの教授だったジェイ・フォレスターが1950年に創始した、システム・ダイナミクスという学問分野に由来するそうです。授業ではこの「システム・シンキング」という学問は軍事から来ているということを教えていただきました。軍事行動では戦略(strategy)・作戦・戦術・兵站(物資の輸送や供給などのこと)をうまく機能させないと大変なことになる。そのためにどのようなシステムを構築していくのがいいのか?というようなところから来たのだと想像します。
 本書ではこのシステムと言うものは以下のように定義されている「複数の構成要素が相互作用しながら全体としてまとまった機能を果たすもの」とされています。それを理解するためにはそのシステム全体を俯瞰で見ることがまずは重要であります。大きな視点から見る事。そしてそのシステムにはどんな関係者や会社、組織がかかわっているのか?を見る事も問われてきます。
 ステークホルダー分析などというフレームワークがあるのですが、そのシステムにどのようなステークホルダーがどんなかかわりを持つのかを考えます。そして各ステークホルダーからの視点を今度は並行して考えます。その視点はステークホルダーによって違うので様々な視点からシステムを捉えるということになっていくことになります。上記のように多面的にシステムを捉え分析していきます。その際に重要なのはMECEという概念です。MECEとはmutually exclusive and collectively exhaustiveの頭文字を取ったもので、もれなくダブりなく、網羅するという意味だそうです!見落としがないようにせなあかんね。という意味です。
 こうしたシステムの分析やそのための分析ツールであるフレームワークは、基本、要素に分解して行く作業であるとも言えます。もちろんその要素は互いに関係しており、その関係性の流れの方向、力の増減、あるいはベクトルの向きなどが、分解して図解していくことによって見えて来ます。このことを本書では「システム・シンキングは、分析対象を構成要素に分解するのみならず、分解した構成要素同士を再び統合することで、全体をバランスよく俯瞰して考えることに長けた思考技法といえる。」(P011)と書かれています。
 「システム・シンキング」は学問形式なので科学的思考法が重要になって来ます。その時に考え出されたのは各様相の関係性を「変数」と捉えて数値化し、それで客観的に関係性を捉えようということです。そのことによってシステムの理解が主観ではなく客観となり、多くの方が誤解することなくその変数の考え方などを理解してシステムを捉えることが出来るということになります。そうすることで齟齬がなくなりコミュニケーションがシンプルになっていくというのは何となく想像できませんか?私はこの辺りまで来てだんだんと腑に落ちるようになって来ました。 
 また授業で面白かったのはシステムのスタートとゴールを決めるという考え方です。ゴールを決めることによってその目標に到達する。というシステムを考えるということが見えて来ます。ゴールを認識して、その状態と遅れなどの時間軸を認識することがこの「システム・シンキング」では求められます。この方法を獲得すると様々な現在の不確実性の高い社会の課題の発見や解決などに応用できるそうです。そのことでシステムが破綻を来たさない、システムに矛盾が生じないという状況を把握しやすくなると思いました。
 本書では分析ツールとして「因果ループ図」についてのことが多くのページを割かれています。どの要素と要素が関係しているのか?その関係性の流れはどの方向か?またその関係性は正の因果か、負の因果か?例えば「コストが増えると利益が減る」というのを「負の因果」と捉えるということです。ステークホルダー分析などから導き出された要素間をつなぐベクトルを考え、その方向と正負の定義、さらにはその変数の定量化などを考えていく作業をしていくと自然とその「因果ループ」が完成されそしてシンプルで美しいものになっていくそうです!最初はその要素がどういう関係になっていくのかがこんがらがってしまうことも良く起きることだそうです!本書ではそうした因果ループになっちゃったケースを「スパゲッティ化」という言葉で語っておられます。 実際のループ図などに関しては以下のサイトなどをご覧ください!

 本書の第4章―実践編を読めばどのようにしてシンプルで美しいループ図にしていくのかが具体的に書かれています。

 本書に書かれていることは大体以上のような感じですが、湊先生が書かれているコラムで印象的なものがあったので、2か所だけ引用させていただきたいと思います。一つは教育のことに関しての記述です。スタンフォード大学の数学者、ジョージ・ポリア教授が書いた「いかにして問題をとくか」(@丸善)(How to solve it.)の中で「教師の大切な仕事は学生を助けるということである。この仕事は余りやさしいことではなく、それには時間と労力が必要であり、熱意と健全な指導原理とが必要である。」というくだりです!学生が考える力を養う手助けをするということにとても共感致しました。(P036 )
 また、効率性と創造性についてのコラムで「クリエイティブな結果を創出することを目的とした場合、まったく逆の結論となると筆者は考えている。すなわち、創造性を発揮するためには、ムリ、ムダ、ムラは極めて重要な3要素として、意図的に残しておくべきだ。」(P135)にもおおいに共感しました。こうしたクリエイティブな思考法と本書での「システム・シンキング」の思考法などを組み合わせながら曖昧で不確実な今の時代の課題発見とその解決策を考えることが求められているのではないでしょうか?

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