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明日の記憶

鑑賞時の感想ツイートはこちら。

2006年の日本映画。広告代理店に勤める働き盛りのサラリーマンが、ある日「若年性アルツハイマー」と診断される。打ち込んでいた仕事、家族との穏やかな日々など、大切なものを病によって徐々に奪われてゆく中、それを献身的に支える妻――。夫婦の深い絆を描いた、感動のドラマ作品です。

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若年性アルツハイマーを患う主人公に、渡辺謙。その妻を演じるのは、樋口可南子。監督は『はやぶさ/HAYABUSA』、『トリック』シリーズの堤幸彦

原作は荻原浩の小説

本作の原作は、荻原浩(おぎわら・ひろし)の小説『明日の記憶』。

自身も30代の頃に白血病を発症し闘病経験のある渡辺謙さんが、この小説を読み、著者へ熱心な手紙を送ったことが映画化のきっかけだったそう。

主演の二人がとにかく良い!

主人公・佐伯(渡辺謙)は 49歳。広告代理店のバリバリの営業マン。沢山の部下を抱え、仕事に打ち込む日々を過ごしていました。妻の枝実子(樋口可南子)は専業主婦。

一人娘の梨恵(吹石一恵)は間もなく結婚を控えており、公私共に忙しく、幸せな日々を送る佐伯夫妻。

そんな中、佐伯に少しずつ異変が訪れます。

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怒りっぽくなる。社用で外出した際、道がわからなくなる。大切なクライアントとの約束を忘れてしまう――。

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妻の説得により、病院を受診。「若年性アルツハイマー」との診断。狼狽する佐伯。

・・・

この、ね、
「あれっ、どうしたのかな?」
「なんだか、ちょっとおかしいな……??」

が積み重なってゆく様子。これがじわじわとリアルなのですよ~! それでいて、端的で理解しやすく、スムーズに物語を展開させてくれます。

病名の診断が出るところは本作の第一の山場だと思うのですが、病院の非常階段でのシーン、二人のお芝居がもう泣けて泣けて!!涙

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闘病モノにありがちな “クサい” 泣けるシーンではないのです。本当に同世代のわたしが観ていても “身につまされる” ようなリアルさ。自然さ。

この時に妻が言うセリフ。心に響きます。

樋口可南子さん♡

特に、樋口可南子さんの演技が全編を通して素晴らしいです♩

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病に翻弄されナーバスになっている夫を気遣い、刺激しないように振る舞う繊細さとか。それまでは専業主婦で家庭にいたけれど、夫の病気を機に外へ働きに出て、社会の厳しさに触れるつらさだとか……。細やかな心の機微を見事に表現しています。

この映画、何回か観ていますが、何度観ても涙してしまう……。

・・・

余談ですが、年齢を重ねてなお透明感に溢れ美しく、糸井重里さんの奥様でもある樋口可南子さんは、新潟県加茂市のご出身。(加茂高校!)

実はわたくしも、生まれは新潟県加茂市。母の実家、つまり母方の祖父母の家が加茂市にあり、祖父母が他界した現在も叔母一家が住んでいます。

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加茂山公園、懐かしいなぁ♩
加茂へは母の帰省に連れられて夏休みに行くことがほとんどだったので、わたしの記憶の中では夏のイメージ。
池の端の茶店で「ところてん」や味の良く染みた「こんにゃく煮」を食べるのが楽しみでした。ところてんは割箸 “一本” で食べるのが加茂流。茶店には、お池の亀さんにあげる用の「お麩」も売っていて、餌やりが楽しかった想い出……♩
秋には紅葉の名所だそうで、こんなに見事なんですね〜!

わたしの親戚を含め加茂市民にとっては、樋口可南子さんは「加茂が生んだ大スター」! 憧れと親近感を持って、いつも応援しているのです♡

ところで、主演の渡辺謙さんも新潟のご出身(魚沼市)なのですね!
なんと同郷! 新潟県人らねっかね~♩笑

手堅い布陣の脇役

以下、感想ツイートより。

主役のお二人以外も、良い役者さん揃いで豪華。
大滝秀治さん、遠藤憲一さん、渡辺えりさん、香川照之さん、他。

本作は脇をかためる役者さんたちも、芸達者ばかりです。

○ 主人公夫妻が出逢った若い頃のエピソードに登場する、大滝秀治さん(ある意味、縁結びのキューピッド。終盤、圧倒的存在感で放つ名セリフあり)
○ 主人公と同期の広告代理店の偉い人に、遠藤憲一さん
○ 樋口可南子さんが必要に迫られて働きに出る時、仕事の世話をする旧友に、渡辺えりさん(長年、社会の中で働いてきた女性の “酸いも甘いも噛み分けた” 感が、とても良く出ています)
○ 主人公の仕事上のクライアントであり、お得意様、香川照之さん(取引先の担当者である渡辺謙さんを「佐伯選手~」と呼ぶところが、昭和のおじさんサラリーマンっぽくて良いです♩笑)

同世代だからこそ、感じられる機微

わたしが「年齢を重ねてきて良かったな――」と思うのが、本作のような映画を観た時。ちょうど主人公の夫婦と同じくらいの年代なんですよね。

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仕事のキャリアを積んで、家庭を持って、子育てを終え、子どもの結婚があったり、孫が生まれたり。

もちろん、50代前後といっても、どんな人生を歩んできたかは人それぞれに違うでしょう。けれども、“年輪を重ねてきた” という点においては、どの人にとっても一緒。

ケヤキも、クスノキも、松も、種類や生えている場所は違えども「樹齢50年」の木。

この年代だからこそしみじみと伝わってくる、人生のあれやこれや。「今」や「過去」や「未来」といった部分的な視点ではなく、「人生全体」を俯瞰で眺めたり、実感を伴って感じたりできる年頃になってきました。

近年では稀にしか出逢えないようになってしまいましたが、本作は間違いなく “ちゃんとした邦画” のひとつだと、わたしは思います。

なので、どの年代の方が観ても感動できる作品ではあるのですが(うちの息子も観て号泣してました)、わたしのようなアラフィフ世代の方は、より一層、たくさんのものを感じることができるのではないかなぁ。

「ほぼ日」での特集も。

本作が公開された 2006年当時、樋口可南子さんの旦那様である糸井重里さんの「ほぼ日刊イトイ新聞」で『明日の記憶』の特集が組まれたことがありました。そのページがこちら。

○ 渡辺謙さんと糸井重里さんのメール
○ 堤幸彦監督の対談
○ 樋口可南子さんインタビュー(糸井さん同席)

の3つのコンテンツがあります。樋口さんと糸井さんが、ご夫婦でお互いにやりにくそうに照れ合うインタビュー記事とか、面白いです。ご興味があれば、どうぞ♩


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