見出し画像

読書記録33📚「正欲」朝井リョウ

<あらすじ>
あってはならない感情なんて、この世にない。
それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ。

息子が不登校になった検事・啓喜。
初めての恋に気づいた女子大生・八重子。
ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。
ある人物の事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり合う。

しかしその繋がりは、"多様性を尊重する時代"にとって、ひどく不都合なものだった――。

「自分が想像できる"多様性"だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな」

これは共感を呼ぶ傑作か? 目を背けたくなる問題作か?

作家生活10周年記念作品・黒版。
あなたの想像力の外側を行く、気迫の書下ろし長篇。


<レビュー>
⭐️⭐️⭐️
さすが朝井リョウ。全ての登場人物の心情描写等を多分私は死ぬまで思いつけないだろうな、っていう表現で捲し立てて来る。圧巻です👏🏼

物語自体は自由自在に形を変える水に性的興奮を覚える特殊性癖を所持していて、社会との不和を嘆く人々の話です。


LGBTQ、マイノリティ、多様性、なんて言葉では全ての人間の性的趣向は片付けられないんだって言う話を、とことん比喩表現が豊富かつアイロニックな朝井リョウ節で綴っている小説です。


稲垣吾郎と新垣結衣出演で映画化するとのこと。でも朝井リョウ作品の映画って、原作殺しになってるやつ多くないですか?



あまりにも登場人物の心情や思考が複雑すぎて、小説上では言葉巧みな文章で上手く表現できてるけど、それらを限られたセリフ、演技で表すのには限界があるというか。まあそらむずいよね〜よっぽど口コミ良くない限り、見るつもりはありません😂

映画化に関してのご本人のコメント。この3文だけからでも言葉の魔術師やわ〜天才。

■朝井リョウ コメント
言葉にするとは線を引くということです。明確に名付けがたい感情や現象に無理やり輪郭を与えてしまうのが、言葉です。
映画には、表情、声色、沈黙など、言葉以外のものが沢山映ります。それらが、私が書きながら取りこぼしていったものたちを一つでも多く拾い上げてくれることを願っています。
そして、この物語の核が、いい映画を創るという意思以外の部分で歪められることのないよう、緊張感とともに祈っています。



物語の本筋とは全く関係ないけど、私が酒好きということもあって感動した一文。ビールは人生で何百杯、何千杯と飲んできてるけど、こんな比喩一生思いつかんて〜て思いながら今日もわたしはビールを飲みます。

“よく冷えた苦味が、喉をめりめりとこじ開けるようにして下っていく。炭酸の一粒一粒が、弾けるたび、拭いきれない恥ずかしさや疲労も一緒に破裂して消えてくれる気がした。”

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?