抱いてはいけない感情はない
『妊娠カレンダー』は表題作の芥川賞受賞作品を含む、三篇からなる短編集だ。
小川洋子さんの作品は入り込めるものとそうでないものがあると思っていたけど、本作を読んで彼女の作品を選り好みせずに読んでみたくなった。
表題作の『妊娠カレンダー』は、どこか客観的な冷めた視点で妊婦の姉を見つめる妹が主人公である。何に不満を持っているか定かではないが、生きているうちに沈殿してゆく"他者の言動や行動に対する気持ち悪さ"みたいなものを姉に食べさせる毒薬入りのグレープフルーツに忍ばせているところ