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『東京公園』を歩く                           第5回 光司と監督、そして春馬くんへ

春馬くんのこれまでの旅路とこれからの長い旅を応援していこう
まだ会っていない人が春馬くんと出会えるよう
世の中が春馬くんを忘れてしまわぬよう
そのきっかけとなれるように祈りを込めて

3年経った去年7月にこんな考えで始めたnoteへの投稿。わたしのようにほぼ 100%知らなかった人間をも夢中にさせる春馬くんの魅力をなんとしても後の世に残したい! なんておこがましいけど、ネットの世界ならそれができるかもしれない。『アキハバラ @ DEEP』のページくんだって「ユイさんに、ネットの海で永遠に生きてもらおうよ」って言ってるじゃないか。それには作品について語っていくのが一番。
とにかく観てほしい、感じてほしい—— まずはそこから始めよう。
多くの人に春馬くん作品が届きますように。

/おもいっきりネタバレします。ご注意ください/
/基本的に敬称略。“春馬くん”だけ例外/

春馬くんとの出会いと、これまで歩いた『東京公園』は 👇

『東京公園』を一緒に歩いてくださった皆さま、ありがとうございました。
長~い公園巡りでお疲れでしょうが、もう少しお付き合いいただけたらうれしいです。
                🐴
映画『東京公園』の世界にどっぷりとハマってしまい、深掘り記事を書いたのは約2年前。今回  note  への投稿を機に読み返してみたら、ストーリーにのめり込むあまり、春馬くんのことについてほとんど書いていなかったことに気がついた。
おっと、しまった。春馬くんあっての『東京公園』だというのに。

公開当時、春馬くんはこれまでの役の中で光司がいちばん自分に似ていると語っている。
しゃべり方がゆっくりで、のんびりしているところがそうなのだと言いたいようだけど、やさしいところだってもちろんそうだよね。
素の自分とあまりかけ離れていない役は演じやすいのだろうか、それともかえってやりにくいのだろうか。
直接、聞いてみたいものだ。
そんな春馬くん演じる光司の好きなシーンがいっぱいあるので、ネットの世界に永久に残しておきたい。
ただただ個人的に好きなところを書きたいだけなので、そんなもん読んでもショーモナイという方はここはすっ飛ばしてくださいね。

それでは、わたしの好きな光司を一挙公開!
バイト先での仕事着姿
白シャツにネクタイ、黒ベスト、黒パンツ、長いエプロン、それにきちんとした髪型がよく似合う。さらに「いらっしゃいませ」のはっきりと大きな声が耳に心地よい。
夜遅くかかってきた電話をいぶかしむ
ケータイには知らない名か番号が表示されたのだろう。だれだこれ? 
公園で光司は名刺を渡したが、相手は名前も電話番号も教えなかったのだから当然だ。おおげさな表情をしないところが良き。
名刺を受け取り「で、これは信じられるんですか?」と言うときのうれしそうな顔
初島さんの言いがかりのような言葉を今日は自分が言えたと喜んだのに、「そりゃ君次第だ、俺の問題じゃない」とバッサリ斬られ、しょんぼりする光司に💘
「1回…1万」
自分としてはかなり思い切って言った金額なのだろう。高すぎるか? と思ったので、ついあんな卑屈な言い方になってしまったけど、初島さんの返事は「2万出そう」だって!
「ケチなこと言うなよ。俺は5万で自尊心を買い戻したんだぜ」
デジタルカメラを持ってないと言う光司にカネを渡そうとする初島さん。ここで受け取っては男がすたると慌ててそれを断ったわけだ。理由を教えろと迫るヒロに対し、自分の言動を確認し納得したい念押しの表情いとをかし🍬
寝起きの顔!
ケータイの音で目を開け、そっちの方向をしばらく見て、鼻から息を大きく吸って手に取り、起き上がって「来たかー」
春馬くんって寝起きがホントにうまい。ウソ寝ですっていう顔で目を開ける人が多いのに、春馬くんは本当に寝てたんじゃないかと思えるような目の開け方と表情をする。だから春馬くんがいま隣りで寝てたんじゃないかって錯覚に陥っちゃう。
「ゾウってゾウさんのゾウ?」
コタツに寝転んで話す富永と光司。「あたし一度死んでるんだよね。ゾウに踏みつぶされたの」と聞いて光司が言う「ゾウってゾウさんのゾウ?」と、その前の「ふ~ん、なんで?」の言い方がすごくスキ。
富永の突飛な話に驚くでもなく笑うわけでもなく、淡々と聞く光司のふんわりとしたやさしさ、良き。
暗室から出てきて「どーした?」とヒロに聞く
ヒロが光司のベッドで光司の母親の写真集を見ている。その様子が何か気になったのか静かに声をかける光司。その穏やかな声。なんだって光司はこんなにあたたかいんだろう。
「あれっ、なんか怒ってる?」と美咲に言う
大島で浮気調査(?)を打ち明けると、美咲の機嫌が悪くなる。全く理解できてない光司がポカンとした顔でつい言っちゃった「あれっ、なんか怒ってる?」。これじゃ美咲さんも好きになるわ。
首の後ろを掻く
大島から戻って自宅にいる光司に、なにか意味ありげに尋ねる富永。「向こうでなんかあった?」
その時、首の後ろをなぜかポリポリと2回掻く光司。意味がわかんないけどスキ💓
「美咲っちは光司くんのことを愛しています」
もう最高。ここ、何度でも繰り返し見たくなる。畳の部屋でなぜだか椅子に座ってる光司が焦点の定まらない目でこっちを見て、眉をちょっとしかめ、目をキロッと動かし思いっきり言う「ハアーッ??」。そして固まってしまう光司。もう…もう…🐮…
後ろ手で部屋の中をウロウロする
これじゃまるで笠智衆だ。ここは、富永の説を聞かせられてる光司が落ち着かない気持ちでウロウロ歩き回るというシーンだけど、こういう時って監督の指示はどこまで出るんだろう。細かいのかアバウトなのか。自分で動いてみせる監督もいるようだが、青山監督はちがうんじゃないかって気もする。知りたいなー、あの動きの発案者。
鴨居の下で大福を食べる
鴨居にピッタリ挟まっちゃってるようなこの光司がダイスキ。鴨居と春馬くんって、なんだか似合うんだよなあ。『奈緒子』でもやってたよね、鴨居に手かけてるの。そんで、また後ろ手で歩き出し、富永の「どうしてよ」にシドロモドロで反論し、豆大福を持って鴨居の下へ。そして憮然とした顔で大福食べてる。もう、このかわいいことったら💘
「お口に物が入ってるときはしゃべっちゃいけません」って育てられた春馬くんだから(個人的推測)、大福食べながらセリフ言うの、やりにくかっただろうな。そしてやっと言った「で、なによ、そのなにかは?」
ほら、言いにくそー。「わかんないわよ、そんなこと」って富永に一喝されたビックリ顔もまた良き。
思わず出ちゃった?
バーのカウンターに座る光司。酒を注いでくれたマスターに「ありがとうございます」と小さな声で言う。ふだんから感謝の言葉をよく口にする春馬くんだから、台本になかったけど言っちゃったのか、なんて思っちゃう。
慶太🐒もそば屋で言ってたよね。
公園で富永に肩を叩かれたときのビックリ加減!
心臓が飛び出しちゃうくらい驚き、肩がビクンとなった光司。観てるこっちもビクッとしちゃったよ。
「うずまき」~「で、意味は?」~「えー、ゲームー?」の言い方
ここの2人が醸し出す雰囲気がスキだなあ。まあ、富永は思ったことをやって言いたいことを言うだけだけど、それに受け答えする光司の、なんて言うのか幼い子どものような素直さがいじらしい。
このあたりの富永と光司のやり取りすべてが💓
尾行し撮影する女性が母親に似ていると言い、光司マザコン説をぶち上げ、美咲さんと向き合って来いとハッパをかける富永。それにオドオドタジタジの光司。そして叩かれた太ももをさする。痛かったよねー、志田くん。
ねーさんの部屋に来た~!
美咲とまっすぐ向き合おうとやって来た光司だけど、どういう態度をしたらいいかわかんない。で、子どもみたいに口を尖がらせちゃって、ちょっと不貞腐れた歩き方になっちゃった。気持ちわかるよ、光司くん。
「ん、なに?」
2階から降りてくる美咲を光司がカメラで狙っている。それを見てなにか言いたそうな美咲に、カメラから目を離した光司が声をかける。この声のあたたかさはいったいなに? なんだかジーンとする。
💋キス
長い長~い間(ま)。美咲の背に軽く触れてる光司の人差し指が少し動き、喉元と口が1回だけ動く。2度目のキスは光司も美咲を迎えに行き、背に回した右手にもしっかり力が入る。愛を感じる、それなのに…。
「なんですか。あれ? 夫婦の秘密ですか」
奥さんの行動はこうなってると宙にうずまきを描く光司。怒ったり弱音を吐いたりの初島さんが「なんだ、そっか」と笑い出したのを不審がり、口を尖らせて言う光司。光司の気持ちが初島に近寄っていく。

うわー、ものすごい量になっちゃったのでやめる。まだまだあるけど…
ここからはちょっと気になる部分。
🌳冒頭、カメラをこちらに向けてシャッターを切る光司。こっち側の自分が写されちゃった、とドキリとする。その後、カメラを下ろして光司が向けるまなざしは…。
「光司と目が合ってドキドキした」という感想をよく見るが、自分はどうしても目が合ったとは思えないでいる。カメラのレンズはまっすぐこちらを向いているが、光司の視線は微妙に右後方に逸れているように感じてしまうのだ。光司くん、その目にはいったいなにが写ってるの?
🌳光司の家のテレビ上にある光る塔はてっきりスカイツリーだと思ってたけど、その開業は2012年5月、映画撮影よりあとだった。よく見ると確かに形が違う。じゃあ、あれはなに?
🌳富永がカメラを構えたとき、どうして光司は顔をそむけたんだろう。本心をのぞかれちゃうと思ったのだろうか。
🌳竹風鈴はヒロが現われるとき鳴るみたいだけど、おでんを食べて富永が帰ったときにシャラリンと鳴ったのはなぜ? 光司が首をひねってヒロの部屋のほうを見て反応してるけど、富永が帰ってからヒロが出てきたってことなんだろうか。 

あれれ。また次々と謎が出てきちゃった。これもキリがないのでおしまい。

オマージュについての再考
『東京公園』の資料を探していた2年前。オマージュオマージュと書かれた文章を複数見つけ、それは感想でも解説でもないだろうと思い、第2回に率直に書いた。その考えは今も変わらない。ほかの作品と似ている部分を書き連ねても評や感想にはならないと思っている。
だが気になって調べていると、映画ファンの間では似ている箇所を見つけることが楽しみなのだというクチコミを発見。さらにメディアの映画評や解説記事などでも、似ている部分を「オマージュ」と記述している文章を多数目撃してしまった。
以前からこの使い方には引っかかるものがあったので、いい機会だからもう少し掘り下げてみたい。

オマージュとは、芸術や文学において、尊敬する作家や作品に影響を受け、似た作品を創作すること、またその創作物を指す語である。しばしば「リスペクト」(尊敬、敬意)と同義に用いられる。
「オマージュ」には必ずしも似た表現や表象がある必要はなく、作品のモチーフを過去作品に求めることを指す。本来は騎士道から生まれた言葉であるため、モチーフに対する敬意ある親和性がオマージュであるかどうかの判断基準となる。そのため厳密には、映画などで「単純に似たシーンがあること」を指してオマージュとはいえない。

(Wikipediaより一部抜粋)

わたしが言いたかったのはこれこれ!
「単純に似たシーンがあることを指してオマージュとは言えない」
敬愛する監督の撮影手法を用い、好きな作品の雰囲気やシーンを取り入れる。それは感銘を受けた監督や作品に果敢に挑戦しようとする気持ちの表われなんじゃないか。意識し参照し引用し接近し、そしてそれを越えようという思い。
オマージュとは主観的なもの。であれば、そう言えるのはその作品をつくり出した側だけだろう。観る側が断定できることではなく、できるとしたら推測だけである。
そう納得しかけたとき、Wikipediaの解説下部にこんな一文を見つけた。

ロックやポピュラー音楽においても、盛んに「オマージュ」の語が用いられるようになり普及した。その後は本来のリスペクトの意味が薄れ、しばしばパロディや引用とも混同して、恣意的に「オマージュ」と呼ばれることが多くなった。

(Wikipediaより一部抜粋)

あっ! 自分の感じていた違和感ってこれかも。
元来の意味を忘れ、ただ単に似ている箇所を「オマージュ」と呼ぶ。そういう使い方が増えていたってことか。
そりゃ、あかんやろ。
映画が発明されてから数えきれないほどの作品が世に出た。何にも影響されないまったくのオリジナル作品はもうすでに存在しないと、かなり前から言われているほどだ。
意識的であろうと無意識であろうと、別の作品に似ている箇所はどの作品にも必ずある。それを探しものゲームのように見つけてはオマージュと呼んで終わりにするのではなく、そこに反映されるつくり手の心情を探る旅に出たいものである。

青山真治監督へ
2年前、どうしても確認したいことがあり、青山監督に本当に手紙を書こうと思っていた。でも他の作品は観ていないし、それは失礼だなと躊躇しているうちに監督も虹の向こうに旅立ってしまった。いつか空の上でお目にかかり聞けることを夢見ているが、いつになるかわからないので、せめて今は残されたものを読んでいこう。
これまでに読んだのは以下の4点。

+act mini 2011年vol.12【三浦春馬完全保存版】(2011年1月31日発売)
『東京公園』に関する青山監督の談話掲載。ほかでは聞いたことのない超貴重な撮影裏話あり。

『映画時評2009-2011』(2012年5月 講談社刊)「混沌」から「透明」へ(初出は『群像』2011年7月号)
青山監督と映画評論界の重鎮で監督の師でもある蓮實重彦氏との対談掲載。映画『東京公園』と監督、俳優陣を蓮實氏が絶賛。

宝ヶ池の沈まぬ亀 ある映画作家の日記2016-2020 青山真治(2022年1月30日 boid刊)
宝ヶ池の沈まぬ亀Ⅱ ある映画作家の日記2020-2022 ——または、いかにして私は酒をやめ、まっとうな余生を貫きつつあるか 青山真治(2022年12月25日 boid刊)
青山監督が亡くなってから出版された2冊の日記。映画と音楽関係の大量なるカタカナ名に翻弄されるも、監督の熱い想いがガツンと伝わる。
2020年夏、数回にわたって春馬くんについての短い記述あり。

このほか映画に関する著書や共著、小説が多数ある。それらとまっすぐ向き合い、少しでも監督に近づけたらと願っている。
              
                 🌸

20歳の春馬くんが、難解な映画を撮ることで有名な青山監督の作品に挑戦してくれたおかげで、こうして『東京公園』の世界にどっぷりと浸る喜びを味わうことができる。
春馬くんは、それまでとは少し膚合いの違う作品と監督に少しも気負うことなく、つかむのが難しい光司というキャラクターを穏やかに、しかし鮮やかにこちら側に提示してくれたのだと思う。
だが、きれいな女性陣に囲まれた甘く爽やかな春馬くんを期待したファンたちは、このちょっと風変わりな作品に戸惑ったのだろうか。興行的にヒットはしなかったらしい。ホントにホントに残念なことである。
しかし、これからでも遅くない。いつまでも歩いているうちに、周りの人もその良さに気づくかもしれない。
好きになってまだ3年。だから、これからもまだまだ歩きつづけよう。

未来の多くの人に『東京公園』がまっすぐ届きますように。
                               〈終〉

【作品情報】
東京公園/TOKYO KOUEN
2010年製作/119分/日本
第64回スイスロカルノ国際映画祭金豹賞審査員特別賞(準グランプリ)受賞
第85回キネマ旬報ベスト・テン第7位
劇場公開日:2011年6月18日(土) 
配給:ショウゲート
原作:小路幸也『東京公園』(2006年10月 新潮社刊)
脚本:青山真治、内田雅章、合田典彦
監督:青山真治

【この頃の春馬くん🐴】
2010年4月5日:20歳誕生日
9月25日:『君に届け』劇場公開
10~11月:『東京公園』撮影
2011年1月17日:ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』第1回放送
6月18日:『東京公園』劇場公開
7月21日:ドラマ『陽はまた昇る』第1回放送

@マンゴの“ちょいと深掘り”-三浦春馬出演作品を観る⑦
『東京公園』を歩く 第5回 光司と監督、そして春馬くんへ
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