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#130 フィールドワーク

Ⅰ. 夏の京都にて

お久しぶりです。
季節はめぐってすっかり夏になってしまいました。
飽きずに、めげずに研究を続けていたら博士課程3年目になってしまいました。なんと大学生活10年目!なのですが、人生何があるかわからないもので、京都に研究拠点を移し忙しくも楽しく過ごしてるこの頃です。
すっかり書く習慣が途絶えていました。

でも、こんなにも様々なことを経験し自分が変わっていっている実感があるのに、書き留めておかないのはもったいないと思ったので、まとまりはないけど投稿してしまいます。
今日はフィールドワークを通して気づいたことを書き、最後にフィールドワークを伴う研究を進めるにあたって参考にした本を紹介します。


Ⅱ.フィールドワーク

リアルを求めて

今年の4月、博士課程の3年目を迎えてすぐ、京都に長期滞在しながら研究を進めることにした。
というのも、研究したい対象が京都にあったからだ。ケーススタディが重要なパートである博士論文を書くには、東京にいてはいつまで経ってもリアルな感覚を持って進められない。ならば自分から行ってしまおう、と思ってのことだった。

まだ二ヶ月しか経っていないが、興味をそそられる場面を見聞きしながら刺激的な日々を過ごしている。初めの数週間は慣れないところで全方位に注意を向けていたせいか、週末になるとその週の平日の記憶が吹っ飛んでしまうほどだった(いまだにそういう週もある)。

今は月に一度、数日東京に帰る生活をしているのだが、先日京都(フィールド)から東京に帰ってきて新幹線を降りた瞬間、不思議な感覚に陥って、そうなった自分にしばらく驚いていた。

一変した日常生活

京都ではとある組織に入って研究しているのだが、完全に外部リサーチャーというよりは、半分は内部の人として過ごしている。研究対象ではあるけれど、一緒に活動もする。

そうなると、家のリビングの片隅を主としていた研究生活は全く違うものになった。
東京では9割型自宅で自分の研究を進めるスタイル、京都では平日は毎日通勤する。家で作って食べていたお昼ごはんは、作ってもらったものを食べている。
平日・週末関係なく研究していたのが、今は平日に集中して研究し、休日はカフェに行ったり山に登ったりとON /OFFがはっきりしている。
こんなふうに属するコミュニティも日々の生活スタイルも全く異なるから、東京の私と京都の私は同じようで違う。

冒頭にも書いたが、先日仕事を終えそのまま新幹線で東京に帰ってくると、同じ時が流れているのに、まるで別の世界にいるような感覚に陥った。東京駅のプラットホームから見えるビルを見ながら、「あれ、パラレルワールドにでもきたのかな?」ってちょっと本気で思った。

人類学でフィールドワークをする人たち、あるいは、バックパッカーとして辺境の地をさまよっていた人たちも、日本に帰ってくると同じように感じるのだろうか?


怖かったのは飛び込むまで

ところで、私の大学での所属はランドスケープとかまちづくりとか、土木と建築の境目の分野である。フィールドワークは研究手法としては珍しくないが、文化人類学のように現地の生活にどっぷり浸かって研究していた、というのはあまり聞かない。
せいぜい、インタビューを数名に1時間ずつ行った、現地調査で街の構造を把握してきました、みたいな感じ。
そして対象者や対象地との関係は、論文を書いた後も続いていることはあまなさそうだった。そんなわけで、長期間フィールドに滞在することに対して、ちょっと抵抗があった。
対象者はただ搾取されるだけなんじゃないか、現場で必死にやってきた人ったちに対して意義のある研究ができるんだろうか?そういう確信がない中で、なんでそんなに気軽に調査依頼ができるんだろう、と。

そんなこんなで、私がフィールドに飛び込むまでは時間がかかった。正確にいうと、飛び込んだのは1年前だけど、自分の研究をさせてもらえるように話したのは今年に入ってからだ(自分から申し出たというより、いろんなタイミングが奇跡的に重なってことが進んだ)。

フィールドに浸る

実際にフィールドに飛び込んでみたら、伝え聞くだけでは絶対に感じられなかっただろうということを全身で感じられている実感がある。
対象者と研究者という関係だけでのインタビューだったら聞き出せないようなことがたくさんあることもわかった。

同時に、少し焦る気持ちも生まれてきた。
東京では一週間かけて寄り道しながら考えたり、文章を練ったりしていたけれど、そんな時間が今は取れない。日々の記録は取っているが、情報が溢れ出て行ってしまう。一旦情報を遮断して落ち着いて思考する時間がこんなにもなくて大丈夫なんだろうかと思うようになった。

そんな時、大学院で人類学を専攻していた人が、「今はフィールドワークだからと思って目の前のことを精一杯やればいいんだよ。」と声をかけてくれた。
そうか、今目の前で起きていることを自分の目で精一杯見て、感じればいいのか。論文を書くのは、東京に帰ってからでもきっとなんとかなる、と少し楽観的に思えるようになった。

そういう心持ちでいると、フィールドの色んなことが見えてきた。
これまでなんとなく仮説として持っていたことが現実に起きている場面に出会ったり、誰と話をすれば知りたいことが知れるのかの検討がついたりした。
まださまざまな現象や思考を文章化できていないし、予定通りに終わらないタスクもあって不安は拭えないけれど…
「たぶん大丈夫だよ」
と、いいフィールドでのいい出会いが背中を押してくれているように感じる。

残りの期間も精一杯駆け抜けよう。


Ⅲ. フィールドワーカーにおすすめの本2選

私がなりたかった研究者・研究スタイルはまさにこれだ!と思えた本。
この本を読んで、対象と一線を画す研究に対して感じていた違和感の正体がわかった。「内部者アクションリサーチ」の考え方や手法は、研究だけでなくて組織をよくしたいと思う人たちにも参考になると思う。

量的研究、質的研究の背景にあるロジックを丁寧に説明していて、自分の研究者としての立ち位置を認識することができた。「実践アクションリサーチ」と併せて読むとより理解が深まる。


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