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 夢でも現《うつつ》でも【シロクマ文芸部|企画「春の夢」】参加記事

ペタ記事以下より、本文参ります。
#シロクマ文芸部  2024.4⏩変わる時→風車→花吹雪→そして、
#春の夢  連作的に続けた一連のラストです。 

春の夢。“春の夜の夢のごとし

平家物語で有名なくだりだ。何となく思い出して口ずさんでみた。
古文の時間は苦手で、授業などは碌に聞いてはいなかったのだけど。

「春の夜の夢のごとし」と言えば、心の中ではこの曲が流れ出す。


風にまたぎ月へ登り
僕の席は君の隣り
ふいに我に還りクラリ
春の夜の夢のごとし

宇多田ヒカルtraveling」 より
作詞:Utada Hikaru,作曲:Utada Hikaru NTTドコモ「FOMA」CM曲



この歌がリリースされたころは二つ折りだったんだなぁ。
今はスマホ時代。端末は変わっても、歌は変わらない。
それならば、私たちは……

「これから全てがはじまるんだ。消え去るなんてゴメンだぞ、俺は」

私の肩に手を置いた、その手の持ち主が私に語りかける。
振り向かず、肩に置かれた手に自分の手を重ねる

「お疲れさま。諸関係の手続きとかは終わったんだよね。助教就任おめでとうございます……って言っていいのかな?」

私の言葉を聞いた雅也が薄く笑った。

「一般的なやりとりでは、そう言うからな。別にめでたくはないんだけど、俺としては。これからだから、何もかも」

そう言って、苦い笑いを零した。


アウトドア、ガテン系にしか見えぬひと

高校時代から変わらない、楠雅也の印象がそれだ。
そうした一面はある。力仕事でも嫌がらず率先して引き受け、文化祭では実行委員を担当した。大学のサークルでも中心人物。社交的というのとは少し違うけれど、参謀役、縁の下の力持ち、という言葉がピッタリの学生。それが雅也だった。

そんな雅也だが、所属サークルは「詩歌研究会」。人文学部に在籍し、詩歌が現代に果たす役割を研究した。その後は大学院に進み、人文学部・日本文学科の博士課程に。その博士論文が認められ、出身大学の助教に就任したのが今日なのだ。


「博士号なんてのはさ。聞こえは大層なものに感じるけど、実際のところ登竜門、まだまだ一兵卒なんだよ。……何か愚痴っぽいな、スマン」
「いいってば。事実を言っただけでしょ?」
「そう言ってくれると助かる。で、だ。直美、本題に進んでいいか?」

珍しく私の同意を求めてきた。
雅也はいつも独断専行、でもそれは「それが最適確」である場合のみ。必要なことを無駄なく、研究者肌らしい彼の行動原理だ。
その雅也が一人で決定しない、それが意味するものとは—


「単刀直入に言う。俺はこれからの人生を歩む中で、直美が横にいることが1番自然だと思っている。ようやっとバイト生活から抜け出した新米大学教員の俺と、パートナーとして一緒に歩いて欲しい。桂直美さん」

唐突ではない。今がその時なのだと、私も分かっていた。分かっていたから私は答える。軽く息を吸い、それを静かに長く吐き出してから。

「私も雅也が一緒に歩いている図が浮かぶわ、これからの時間を描く青写真に。だから、私からもお願いします。楠雅也さん—」

私たちの声が重なり、軽いハーモニーとなって響いた。ハモっちゃったな、そう言って二人で笑いながら、静かに目を閉じる。傍らに大切な人の温もりを感じながら。



この世界の朝焼けに この世界のさざ波に
この世界の陽だまりに この世界の優しさに
この世界の この世界のあちこちに あちこちに
あなたがいたこと
私がいたこと

アンジェラ・アキ 「この世界のあちこちに」 より
作詞作曲:アンジェラ・アキ


楠雅也と桂直美。Ending後の姿を思い浮かべる。MicrosoftCopilotによるAIアート。

拙稿題名:夢でも現《うつつ》でも
総字数:1506字
シロクマ文芸部での最長になりました。全4話合わせれば3000字越え。短編小説的ですね。小牧さん、諸般の皆様、そして—

ここまでご高覧くださった方がおられましたら、そのお心と貴重なお時間に心からの敬意と感謝を捧げます。


シロクマ文芸部
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#歌詞引用
#著作権遵守

みん俳関連のイベントハッシュタグ「曲からストーリー」、お借りしました。合わせて感謝申し上げます。


66ライラン、27日目です。


<©2024春永睦月 この文章は著作権によって守られています。AI画像はフリー素材ではありません。無断使用及び転載等はお断りいたします〉
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