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【ミニ社長塾 第44講】目標設定をするうえで役立つ5つの視点。

おつかれさまです。
中小企業診断士で、社長の後継者に【徹底伴走】するコンサルタントの長谷川です。

昨年11月にスタートした第20期社長塾は、8月に入り佳境です。来月の半ばには1年間の成果発表である「価値創造計画のプレゼン大会」があり、それが終わると無事修了となります。私も伴走コンサルタントとして、20期の受講生2名の「価値創造計画」策定のサポートをさせていただいております。

漠然とした想いや考えを言語化していくと、迷いなどから目標が定まり切らない(ブレてしまう)ということがあります。そこで今回のミニ社長塾は、「目標設定」についての話をしていこうと思います。修了生の皆さまは、計画の見直しや更新をする際の参考にしていただければ嬉しいです。


1.「目標」を設定する「目的」

「10年後の目標は?」

とお聞きした時に

「(経営)環境が目まぐるしく変わっているので、先が読めません」

と答えられると、何とも言えない気持ちになります。なぜなら、目標は辿り着くべき目的地のようなものなので、

「これから、どこに行きたいですか?」

と質問しているのに、

「道が混んでいるので、先が読めません」

と答えられているようなものだからです。あなたの意見(意思)が聞きたいのに答えてもらえていないし、質問の回答にもなっていない。目標を設定しないということは目的地を決めずに進むようなものなので、会社を経営するという視点に立つと望ましくないことだと思います。

目標を設定することのメリットを3つほど挙げさせていただきます。

①やるべきことが明確になる

先ほど述べさせていただいた「目的地」を決めることの話です。目的地が決まれば、現状(現在値)とのギャップが生まれるので、そのギャップを埋めるような行動をどう取っていけばよいかを考えることができます。

また、目的地を決めるときには併せて「期限(時間)」を決めます。目標に焦点を当てることで、時間や労力を目標に対して集中して投入することができます。その結果、目標達成の確率が高まります。

②達成感を感じることができる

仕事を行う上でモチベーションは非常に重要です。モチベーションは、ものごとを行う上での動機や意欲、やる気と関係しています。ただ漠然と仕事をしていると成果や効果性を感じることができず、前に進んでいる感じもしないのでモチベーションは低下してしまいます…。

そこで具体的に目標を持つと「ここまでやる」という基準ができるので、自分の仕事に対する意欲が高まり、また目標を達成させたいという意識が強まることも期待できます。さらに、目標達成のためにチーム全体が協力し、連帯感が生まれることで、組織全体の効率とパフォーマンスが向上します。

その結果、目標を無事達成できたときには、大きな達成感が得られます。そして、大きな達成感を一度味わえば、次も同じような達成感を得たいという気持ちになるはずです。

③評価と成果の見える化

経営には再現性が求められるため、目標を設定することは組織のパフォーマンス評価と成果の見える化において重要な役割を果たします。目標は達成度を評価するための明確な基準となりますので、経営者は組織のパフォーマンスを客観的かつ一貫性のある方法で見ることができるようになります。

また、評価と成果の見える化は社員にとっても重要です。目標が明確で透明性がある場合、社員は自分の役割や責任を理解しやすくなり、自己評価や成長への意欲を高めることができます。上述の①や②のように従業員は達成感や成功体験を得ることができるからです。

これらのメリットは目標を設定する目的でもあります。すなわち、目標を設定する目的とは、

①やるべきことを明確にするため
②社員に達成感を持たせることでモチベーションを維持させていくため
③評価と成果を見える化し、経営の再現性を高めていくため

です。この点を踏まえて、目標設定のフレームワークとして「SMARTの法則」をご紹介します。

2.目標設定のフレームワーク「SMARTの法則」

「SMARTの法則」は、目標設定の視点を5つに整理したフレームワークです。5つの視点とは、「Specific(具体的な)」「Measurable(測定可能な)」「Achievable(実現可能な)」「Relevant(関連した)」「Time-bound(期限を定めた)」で、これらの頭文字を取って「SMART」です。

それぞれを解説していきます。

①Specific(具体的な)

「目標は具体的で明確なものか」というもので、誰が聞いても同じ認識を持てるくらいに目標が具体的かつ明確になっているか、が重要です。例えば、

・新商品の販売個数を伸ばす

という目標設定では、どれくらい販売すれば良いのかという目標に各々で認識のズレが生じる可能性が高いのでいけません。

・新商品を1,000個販売する

というように目標個数を具体的にすることで良い目標になります。

②Measurable(測定可能な)

「目標設定した数値は測れるものか」というもので、客観的に測定できるように数字を使った定量的な目標設定にすることが重要になります。例えば、

・部署内でのコミュニケーションを活性化する

という目標設定では行動が曖昧になり、継続していく事は難しいと思われます。そこで、

・一週間に一度は部内ミーティングを行い、情報共有やコミュニケーションの活性化を図る

と測定可能な数字を入れることで行動を具体化させることができます。

③Achievable(実現可能な)

「頑張れば達成できる目標になっているか」というものです。達成が難しい目標であればなかなか達成感が感じられずモチベーションが下がるかもしれませんし、逆に達成が容易であれば手を抜いた行動になってしまいます。

なんとかギリギリ達成できそうな目標設定が望ましく、上長と社員が一緒になって面談などで話し合っていただきたいです。

④Relevant(関連した)

「個人の目標が経営のゴールと直結した目標か」というもので、個人の目標を達成すると会社全体の目標達成への貢献に繋がることが見えていると、社員個人のやりがいに繋がります。

また、昇給や賞与などの個人の利益とも関連していると、より意欲が高まることが期待できます。

⑤Time-bound(期限を定めた)

「目標に期限があるか」というものです。この時にポイントとなるのが、目標達成までの期間が先延ばしにならないように、期限を数ヶ月~数日といった中間、あるいは短期間にすることです。規模が大きいものについては、目標を区切って設定していきましょう。

この「SMART」の5つの視点で設定する目標を見ていくのですが、もちろん定量的に表現しづらい目標もあります。その時には、②Measurable(測定可能な)の部分は満たしていなくても良いですが、その代わりSpecific(具体的な)をシッカリ整理し、誰が見ても認識のズレがないように言語化することが求められます。

この「SMARTの法則」はあくまでもフレームワークで、漠然とした目標を具体化・言語化するためのサポートするためのものです。漠然とでも「こうなりたい」という「あるべき姿」を思い描くことが大事ですので、松下幸之助氏ではないですが、

「まずは願うこと」

が目標設定の第一歩だと思います。

3.目標を設定するときの注意点

最後に、目標を設定する上での注意点を3点挙げさせていただきます。

①経営理念(長期的なビジョン)との整合性

自社の経営活動は経営理念の実現のため、と言えます。したがいまして、立てられた目標の延長線上に経営理念がないといけません。この整合性が欠けてしまうと組織としての方向性がブレてしまい、様々なリソースが分散してしまうことになるので注意が必要です。

②実現可能性の検討

SMARTの法則にある③Achievable(実現可能な)の話でもあるのですが、目標は「なんとかギリギリ達成できそう」が重要です。過度な目標は社員へストレスを与え、モチベーションの低下を招いてしまいます。昨今話題にもなていることでムリや不正をしてでも目標(ではなくノルマ)達成のために頑張るということは望むべきものではない、と皆さんも思われているはずです。

③リスク管理とバランス

伊那食品工業の塚越最高顧問は「いたずらに急成長や規模の拡大、効率性を追い求めてはいけない」と言われ「年輪経営」の重要性を話されています。

例えば、増産できるように工場を設けて生産したとすると、ブームが落ち着けば工場は遊休資産となり一転負債を抱え込むことになります。また、そこで働いていた従業員も最悪リストラしなければならなくなってしまいます。これは非常にリスクです。

「膨張」と「成長」は違います。目標を設定する際にリスクを適切に評価し、バランスの取れた目標を設定することが重要です。

今回の記事は『目標設定をするうえで役立つ5つの視点。』ということで、目標設定について見てきました。書かせていただいたことは考える切り口で、ここから何か生まれるかというよりも皆さまの頭や心の中にあるものを多面的に見て、整理していただく時に役立てていただければ幸いです。

次回の【ミニ社長塾】も、どうぞよろしくお願いいたします。

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