闘病記のようなもの

#子宮筋腫 #エッセイ #病気

2016年の8月、小さな診察室でわたしは医師と向き合っていた。
2人の目線の先はPCのディスプレイなので、膝付き合わせてはいるけれど正確には向き合ってはいない。

薄ピンクの壁や椅子は、いかにも街の婦人科という感じ。痩せた駄馬のような風貌の男性医師は、口数少なく特に愛想がいいわけでもないが、実直な感じがするのでわりと気に入っている。

そう思う人が多いのか、メインの通りを入ってすぐという立地のせいか、受付してから1時間以上が過ぎていた。

「手術したほうがいいとおもいます」

疲れた駄馬のような顔をした医師は、気の毒そうに言った。

3年前に見つけられた子宮筋腫。1.5㎝ほどで、「問題ないから経過観察」と言われた腫瘍は、久しぶりに会うと2㎝を超えるほどに成長していた。

子宮筋腫界では「ないに等しい」と形容される大きさだが、位置がよくないとのこと。

なんということだ。朝は「時間ができたから筋腫の様子でも見に行くか」と、のんきに家を出たというのに。

設備の整った施設で再検査を受けることになり、昨年できたばかりの大きな病院へ紹介状を書いてもらう。

この風采の上がらなそうな医師は、年間に何人の女をあの病院に送り込むのだろう。ぼんやり考えながら会計を済ませた。


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