「戦略で勝つ」にあこがれるけど、「気合と根性」で踏ん張っている現実

「戦略」にあこがれる。「気合と根性」ではなく、秀逸なビジネスモデルを組み上げて、戦わずして勝ちたい。

シミュレーションゲームが好きだし、三国志とか戦国時代モノでも名だたる武将を差し置いて、軍師という役割のキャラが異様に気になる。

そういう方も一部いるんじゃないかと。

そうです。私が、そんな感じで。

今くらいおじさんになってしまえば、もはやどうでもよいのだけど、若者時代に軍師のように戦略を巡らせるのが好きだと言うと、卑怯な感じがしてモテない。ドラえもんのキャラで言えば「スネ夫」と言われる不遇な思春期を過ごしてもなお、戦略好きを自称する私が一番好きなビジネスにおける戦略の本がこちら。

長い。さらに前置きが長い。だけど、その前置きこそが面白く、わかりやすい。

この本のどこが好きかというと、戦略の本なのに、もったいぶってなくて、わかりやすくて読みやすく、面白いところ。

「ここが面白い」って抜き出すと逆に、どこが面白いんだ、とサムい感じになるんだけど、あえて、引用すると、

いつ見てもすごいと思わされるのが、満員の通勤電車の中で日経新聞を縦に細く折りたたんで、そのハリセン(チャンバラトリオが使っていたようなやつ)のようになった新聞を、手馴れた技を駆使しつつ、最初から最後まで読みきってしまう熟達のビジネスパーソン。ただでさえ他の新聞に比べて厚いのに、ハリセン化するのは日経新聞であることが多いようです。「狭い面積で新聞を読みきる世界選手権」があったら選手層が一番厚いのは日本でしょう。

こんなくだらないこと書いてるから、ページ数がどんどん長くなるんだけど、ビジネスの、競争戦略の本で、かつ大学教授のアカデミックな出自の人の著書で、こういうくだらないことを惜しみなく盛り込んである本は他に知らないし、楽しんで書いてる感じがして、とても好感が持てる。何よりわかりやすい。

で、こんな感じで、本題の「ストーリーとしての競争戦略」に入る前提知識として競争戦略の一般的な知見について、全体の35%の紙幅を使って説明しているのだけど、むしろその部分がめちゃくちゃわかりやすくて、そこだけで、自分にとっては、すごい価値。こういう本をたくさん読みたい。

競争構造と、SPとOCによって、「競争優位の源泉」が生まれる、という話を理解できただけでも、とても収穫が大きい。折に触れて読み返したい本の一冊。

画像1

理屈2割、気合8割

で、今回読み直して、ああ、そうだよな、と改めて思ったのは、この長い本の長い前置きの冒頭に書いてあるのこの話。

ビジネスの成功を事後的に論理化しようとしても、理屈で説明できるのはせいぜい二割程度でしょう。丹羽宇一郎さんは「経営は論理と気合だ」と言います 。理屈で説明できないものの総称を「気合」とすれば、現実の戦略の成功は理屈二割、気合八割といったところでしょう。あっさりいって、現実のビジネスの成功失敗の八割方は「理屈では説明できないこと」で決まっている。

ここ最近、業界の中で小さな競争している限り、ビジネスモデルなんて、ほぼ固まってるから「結局のところ、気合と根性」なんじゃないか、って思うことが多くあって。

一見、業界の収益モデルに矛盾があるように見えることに機会を感じて、新しいコンセプトのサービスを打ち出したところで、結局、何らかの引力によって引き戻される感じがあって。

例えば、リスティング広告のマージンモデルなんて、15年くらい前に現役バリバリの運用者だった頃から「広告業界の慣習以外の何者でもなく、どう考えてもおかしい」と思ってたけど、結局まだまだマージンモデルが主流で、誰もが思いつく、固定費やら成果連動なんて、何度となく試されたはずだけど、いまだに、ほとんどマージンモデルだったりするわけで。

だったら、もはや理屈で考えず、ビジネスモデルは所与として、気合と根性全開のマネジメントをいかにできるかの勝負なんじゃないか、いう、ある意味あきらめに近い確信を深めつつあったんだけど、

ああ、もともと理屈は2割なんだ、それなら納得、と思い直せた、そして、

「理屈じゃないから、理屈が大切」

そのすぐ後にある、この部分、

野性の嗅覚が成功の八割にしても、二割の理屈を突き詰めている人は、本当のところ何が「理屈じゃない」のか、野性の嗅覚の意味合いを深いレベルで理解しています。「ここから先は理屈ではなくて気合だ」というふうに気合の輪郭がはっきり見えています。だからますます「気合」が入り、「野性の勘」に磨きがかかる。「理屈じゃないから、理屈が大切」なのです。

やっぱり理屈から逃げちゃダメだと。理屈バカの自分が気合と根性に走っても、根性ないんだから負けるだけ。頭使わなきゃ、と改めて思ったという、とても軽いはなし。

毎週note書いてます!

※今回は、10月6日(日)~10月13日(土)分の週報になります。


この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?