このホットチョコレートは恋も悲しみも救う傑作だ

「冬が寒くってほんとうに良かった」と歌ったのはBUMP OF CHICKENの藤原基央で、なぜなら「君の冷えた左手を、僕の右ポケットへお招きするための理由になるから」だった。

冬の寒さはたいてい嫌われ者だけれど、それを「良い」と感じられるときがあるのは、そんなふうにくっついていても怒られないし、むしろ心地よいと思えるからだ。今日も心地よくて、目が覚めるたび恋人にくっついて、そのあたたかさに何度も、うとうと、寝たり起きたりした。

夜にホットチョコレートをつくった。レシピは、noteでTravelingFoodLab.さんが紹介していたもの。そんなやる気が起きるのも、冬の寒さのおかげかもしれない。

「作りたては格別の味です」というフレーズに、使う材料がスーパーでも手に入るものばかりで、前々から気になっていた。夜の散歩中、恋人に「ホットチョコレートをつくったら飲む?」と聞くと、「飲みたい!」と目を輝かせてくれたので、それならばと試してみることにした。

ドン・キホーテで間に合わせに買った、980円のアルミ製のミルクパンをつかったのだけれど、とくに問題なくホットチョコレートはできあがっていった。思っていたよりずっと甘い仕上がりだったけれど、とろりと濃くて、ゆっくりゆっくり飲むと、お腹の底から嬉しみが湧いてくる。

寂しい日も、つらいときも、イラつきが止まらなくても、このホットチョコレートがあれば心がほどけるような気がする。「たいへんだよね、でも、とりあえずこれ飲んで落ち着こうよ」って念じながら飲めば、自分を支えてくれるような一杯、という感じがある。それくらいにおすすめです。

もっと早くこのホットチョコレートがつくれたら、流さなくていい涙も、交わさずに済んだ諍いもあったかもしれない。まぁ、そんなのぜんぶ妄想なんだけれど、冬はそういう感傷にもひたりやすいものだとおもう。

いやいや、たらればに気持ちを取られるよりも、今を見よう。大事なのは、今だ。気に入ったみたいだし、恋人にねだられたら、いつでもつくれるようにしておこう。

「……ホットチョコレートが飲みたい」

「あるよ」

ドラマ『HERO』の田中要次マスターのように、黙々と、台所に立つのだ。

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