#76 近づかなくっちゃかなわない

ハシビロコウは顔に似合わず寂しがり屋だった。

孤独を好む寂しがり屋は、いつの時代も敬遠されガチ。



突然思い立って、相手の気持ちも考えず、人に甘えようとするからだ。


でも、他にどーすればいいのだ。

と、ハシビロコウはいつも悩んでいる。




ソーシャルディスタンスにかこつけて、いつも悩んでいることを歌詞にしたためた。




落花盛が手グセのようにギターで弾いていたコード進行。

あわせて口ずさんでいたメロディーに上手くハマって、「近づかなくっちゃかなわない」という曲が出来た。



ハニワも満足気だ。あんまし打ち込みのパートも多くなく、すんなり仕上がったからだ。



ハニワは音数が増えるのを嫌うし、気分次第で突拍子もないアイデアを出されるのも嫌った。



ただ、ハシビロコウのギターストロークへのこだわりには毎度辟易させられている。



「どっちがいいかな?」と聞かれるたび、面倒くさいので最初に聞かせてくる方を選ぶようにしている。



最初に聴かせてくる方に賛成して欲しいだけなのだ。



「ミックスしたらそんなニュアンスまでは残らないけどなあ」とも思うが、ハシビロコウの中ではこうでなきゃ、ってこだわりがあるんだろう。

なら悩むなよ、とも思うけど。



ただ、今回はテイクを重ね過ぎだ。


一度説教してやんなきゃ気がすまない。


練習してこいや、と思う。


でも、前回もそう思って結局言わなかった。
大抵の事は、言わない方が良いんだよな。


…to be continued.


ハシビロコウバンド物語
「第七十六話 近づかなくっちゃかなわない」
初出 2022.3.3

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