浮輪鈴女(うきわすずめ)達の、ホッペふっくらスキンケア施術体験を受けるのは2回目だ。

本来であれば施術体験は本契約した後の特典であるはずなのだが。。。。。

前回は体験分として扱えるものなのであろうがしかし、今回は単にサービスでやってくれているのか、はたまた恩着せ商法の一環なのか…。


期待以上の効果を実感しているのは間違いない。
割賦払い契約書へのサインは目の前か、、、悩むハシビロコウ。

今日は、前回持ち帰った契約書類の内、重要事項説明書に記載されている項目に数か所疑問点があったので質問したくて来たのに、話もそこそこに施術に入って夢心地。

「施術10回分プリペイドチケットもお得でおスズメだよー」と、浮輪鈴女(うきわすずめ)のレッドが言う。

確かに約2回分もお得になるなら、と思いかけたハシビロコウだったが、本契約についてはギリギリ踏みとどまっている。


『俺、あと10回もやるか？この施術。。。』

というのが本当の本音だ。

無料体験だからやってもらっている、という、元々の姿勢を思わず忘れそうになっていて焦る。



まだ、重要事項説明書に記載されている「解約の条件」についてハシビロコウ自身しっかりとした理解に至っていない。

本来であればこういったことは一字一句読み合わせをして説明を受けなければならないところだったが、何しろ重要事項説明書だけで160ページあったので一旦持ち帰らせてもらって自宅で熟読するハメになった。

3日かかった。

こういう、マルチ商法的なやり方についてはやはり友達としては不安がある。

が、浮輪鈴女（うきわすずめ）達を責める気にはなれない。


彼女らは信じている。

美容の効果を。

実感した上で、おスズメしているのだ。

だが、浮輪鈴女達自身がこのホッペふっくら美顔器セットの販売代理店を未来永劫やり続けるとは限らない。

それもまた事実。

というか多分ゼッタイこんなの一過性のモノだ。

ハシビロコウは、熱しやすく冷めやすい性格のママビロコウに育てられたので、そのあたりの女性特有の感覚には慣れている。



明るい未来を信じる気持ち。

シェアしてあげたい。

幸せのお裾分け、ハイ喜んで。

きっと貴方も実感できる！という純粋なキモチ。

誰が責めれるというのだ。

責めるくらいならはじめから断って距離を置けばイイだけ。

それだけ。

それだけのことサ。。。



が、そう簡単に距離を置くつもりにはなれない。

ハシビロコウにとって、自分に優しく接してくれる容姿端麗な女友達は重要だ。

熟読したホッペふっくら美顔器セットの重要事項説明書の中のどの項目よりも重要だ。





とかなんとか色々ウダウダ考えている間に、じんわりほんのり、、まぶたが閉じてくる。


ケイヤクジョウケン、

カイヤクジョウケン、、、

ケイヤクカイヤクサイアクカイアクケイヤクカイヤク……………………

…to be continued

ハシビロコウバンド物語
「第七十五話　ビギンザビガン」
初出　2022.3.3