ムダな医療

『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)(8回) ムダな医療を防ぐ手段とは?

ムダな医療を防ぐ手段とは?

 国際的に見ると、こうしたムダな医療を防ぐには、診断や治療の根拠に目を向けることが重視されるようになっています。根拠とは何かと言いますと、研究の成果です。人々が診断や治療を受けた結果として、その後に何が起きたのか、ということを統計的に確認するような研究が世界中で行われています。この結果を参考にして、診断や治療にメリットがあるのか、デメリットがないのかを考えることができ

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『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)(1回)

はじめに

 インターネットで「ムダな医療」と検索すると、私の著書が最初のページに出てくるようになってから、もう久しくなりました。2013年に、米国の医学会で広がっているある動きに気がつき、そこからおよそ1年以内に『絶対に受けたくないムダな医療』(日経BP社)という書籍を書き上げたことから始まります。その本はおかげさまで好評をいただくことになり、そこから雑誌やラジオでの発言機会も増えたために、今の

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『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』(室井一辰著,洋泉社,2019)(0回)

洋泉社さんの近々、新書である『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術』についても連載としてこちらでご紹介していきたいと考えております。

 どうぞよろしくお願いいたします。

【連載の紹介】

 室井一辰と申します。この2019年に、『続 ムダな医療』(日経BP)、『世界の医療標準からみた受けてもムダな検査 してはいけない手術 (新書y)』(洋泉社)という2冊の書籍を刊行しま

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『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)(111回)

【第110回】

 あとがき
 冒頭で獣医学を学んでいたと述べた。誤解を恐れずに言えば、人間の医療は「生の医学」で、獣医学は「死の医学」と考えたことがある。
 獣医学を学べば分かるが、獣医学の世界では医療と死が常に隣り合わせだ。「殺処分」が選択肢の一つとして当然のようにつきまとう。
 ウシの場合、口蹄疫に感染すれば有無を言わさずに殺したうえで、埋却あるいは焼却しなければならない。高病原性鳥インフル

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『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)(110回)

【第110回】

 医療側による「医療の再設定」が不可欠

 医師ら医療従事者と話していると、患者と同じ目線で検査や治療について話し合うのを「時間の無駄」と考える傾向があると感じることがある。医師らの立場に立てば、「むべなるかな」と思う。医師になるために必要な知識を得るには長い期間を要する。患者に理解してもらうにも、患者側に一定の知識があることが前提だ。「患者側が医療側と対等に話そうとするのは無謀

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『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)(109回)

【第109回】

 「パック料金」で変わる医療

 国の動きも無駄な医療をなくすうえで重要だ。その中でも、医療費の「包括化」は大きな可能性を秘めている。
 従来の医療は、個別の医療行為に対して報酬が発生する「出来高払い」が一般的だ。医療機関にとっては検査や治療を実施すればするほど儲かる。賢い医療機関ほど、患者から許容される範囲で検査や治療をやり尽くし、「診療費を必要十分にいただく」ことが定石になっ

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『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)(108回)

【第108回】

第三部
  専門学会が設定している
基準値にNO! 医療費の急増を
  前に動き出した保険者

 2014年4月、医療の常識から見て驚くべき出来事が日本であった。日本人間ドック学会と健康保険組合連合会(健保連)の研究グループが健診データを解析し、健康の新しい基準値を提案した動きだ。150万人の検査データから「超健康」と認定される1万5000人ほどを抽出して、その検査値の分散から健

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『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)(107回)

【第107回】

治療根拠の説明能力が問われる時代に

 大腸ガンの罹患率は一般的に米国よりも日本の方が低い。また、内視鏡メーカーはオリンパス、富士フイルム、ペンタックスなど日本企業が大半で、日本は内視鏡が広く普及しやすい条件が整っている。内視鏡の検査費用も低いため、内視鏡検査を受ける人も多い。結果として、日本の医師は米国の医師よりも内視鏡の取り扱いや内視鏡を使った診断の能力が高い可能性がある。さ

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『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)(106回)

【第106回】

この10年で1日当たりの患者数は70万人の増加!

 まず患者周囲の変化について考えれば、そもそもには患者数の増加があるのだが、同時に患者が無駄に気づく機会も増えている。
 その背景にあるのは、インターネット情報の拡大だ。SNSのサービスを提供する会社に勤めるある友人に、10年前に聞いて驚いたことがあった。SNSのサービスを利用する人が、当時で既にパソコンよりもケータイの方が多い

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『絶対に受けたくない無駄な医療』(室井一辰著,日経BP,2014)(105回)

【第105回】

 過剰診断の裏に皆保険制度の存在

 「Choosing Wiselyはあくまで米国における推奨であり、そのまま日本には当てはまらない」。日本の医療界に身を置く人はこう思うかもしれない。
 ただ、その言葉には表と裏の理由があると思う。表の理由とは医療経済的な問題や医師養成における日本と海外との差であり、裏の理由は医師らの知識不足、儲けやリスク回避の問題である。
 まずは分かりやす

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