青色のエレジー

【連載小説】「青く、きらめく」Vol.9 第二章 海の章

「何か、用?」
 この人だ。ひと目見て、すぐ分かった。きびすを返そうと思っていたマリは、じっとカケルの顔を見たまま、黙って劇団のビラを差し出した。
「これをもらって。見に来ました」
「ああ」
 カケルは、一瞬ビラに目を落とすと、再びマリの顔を見た。怪げんそうな顔が、少しだけやわらいだ。
「入りなよ。もうすぐ新歓公演だけど。練習見ていく?」
 マリは、こっくりうなずいた。

 入学前から、自分はカケ

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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.8 第二章 海の章

二、海の章

 自分の部屋のドアをくぐると、マリはパタン、と後ろ手で扉を閉めた。いつもの見慣れた部屋が、まるで違う場所にみたいに目に映る。
 ほっとひとつ、肩で息をする。体がほどける。次の瞬間、マリは小さな子どものようにベッドに飛び込み、クッションを抱きしめた。
――キスをした。カケルと、キスをした。
 望んでいたような、望んでいなかったような。抑えきれない感情は、不思議な泡となってマリの胸に押し

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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.7 第一章 風の章

〝今日、会えないかな〟
 マリからそんなメールが入ったのは、日曜日の朝だった。カケルは、バイトの昼休みにそのメールに気づいた。確か、この土日はバイトだから、とマリには言ったはずだ。
 気持ちを抑えた短い文に、今日、どうしても会いたい、という思いが募っているように思えた。ストレートに気持ちだけをつづったメール。マリからの、こういうメールは初めてだった。何かあったんだろうか。少し逡巡してから、〝バイト

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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.6 第一章 風の章

目が覚めたのは、午前も大分日が昇ってからだった。昨夜も、風が吹きすさんでいた。いく分、風がおさまっている窓の外は、陽光が光り輝いている。カーテンのすき間から届く光が、それを伝えている。
 床から身を起こし、どうしておれは自分の部屋の床で寝ているんだっけ、と頭をかいた。そうだ。おれのベッドでは、美晴が寝ているんだった。昨夜、美晴を背負って彼女のアパートまで行ったものの、鍵がどこにあるか分からず、本人

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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.3 第一章 風の章

「これ。首元、寒そうですから」
 部が終わって帰ろうとしたとき、仏頂面のまま、マリがプレゼントの包みを渡してきた。マフラーが入っていた。それは、クリスマス前のことで、世間では、そのイベントに向けて盛り上がっていた。けれど、マリの態度からも、シチュエーションからも、どうとは思えないほど、それはさりげないプレゼントだった。メッセージカードもなく、ラッピングもごくシンプルだった。だから年が明けてから最初

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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.2 第一章 風の章

マリは――と、カケルは思いを巡らす。マリは、新入生の時から、何か堂々として自信ありげだったよな、と。整った顔立ちだけでなく、凛としたたたずまいや、姿勢からも、その自信がうかがえた。女役の良いポジションは当然私のもの、という、言葉にならない意志も強く感じられた。最も、それまでマリのようなタイプの美人が、劇団にはいなかったので、本人のおもわく通りかどうかは分からないが、マドンナ的な役は、たいていマリに

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【連載小説】「青く、きらめく」Vol.1 第一章 風の章

一、風の章

 どこか遠くへ行きたい。できれば、北がいい。子どもの頃からずっとそう思っていた。
忘れていたこの言葉が、ふとよみがえったのは外の風のせいだろうか。夜半から急に風が強くなった。木造のアパートの窓枠は、夢の中でガタガタ鳴って時折カケルの意識をゆり動かした。
 青い風が吹いているのだろう。
 ぼんやりと夢の中で、そう思ったような気がする。それは、子どもの頃海辺の町でたびたび目にした風の色だ

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物語が、はじまる。

こんにちは。清水愛です。

みなさんの子どもの頃の夢って、何でしたか?

私は、「物語を書く人になる」でした。

絵を描いたり、文を書いたりするのが好きで好きで。

5歳のころの夢は「漫画家になりたいです」。8歳のころには「お話を書く人になる」。最初に長編漫画をノートに書いて友達に見せていたのが、9歳のころ。

それから、ほぼずっと「物語を書く」ことがやめられません。

子どものころ、自分にはちっ

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