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いろいろ悩んだけどやっぱりホグワーツに進学する(迫真)

贅沢な悩みである。受験した大学すべてからオファーが来てしまったせいで、果たしてどこに進学すればよいのかわからなくなってしまったのだ。大学サイトを見ては唸り、街の観光案内を見ては悩み、知人に相談しまくり、その上にも悩みの余地が増えるのが嫌で、オックスフォード大学は面接辞退してしまった。なんてもったいないことを…。

東大には潤沢なRA予算があるし学費免除の閾値も高いから実質ほぼタダで行ける(らしい)し、インペリアルカレッジロンドンならインターンにも高収入の就職先にも困ることは無い。セントアンドリューズやエディンバラは世界の名門校でありつつ、街は自然と歴史の宝庫で、水も日本と同じ軟水だ。でも、どれだけ理詰めで比較優位性を検討しても、心は常にホグワーツに戻っていくのだった。

ガウンとか、寮のマフラーとか、ネクタイとか

だって、知れば知るほど奥が深くて楽しい。例えば、学生が着てるあのだぼっとしたガウンだ。学士と修士ではガウンの袖の形状は異なっているし、ボタンや刺繍の入り方が修了した分野によってそれぞれ定められている。学士学生のガウンはさらに寮ごとに少しずつデザインが異なっていて、ガウンだけで実に100種類以上ある。映画では全員同じようなの着てたって?それは外様向けの単純化である。寮も4つになってるけど、本当は31の学寮があるのだ。

ガウン選びのフローチャート。ここから分野ごと、寮ごとにさらに細分化される。


卒業の証であるフードもまた千差万別である。といっても学部まではみんな同じフードだが、修士以降は授与される分野ごとにフードの色・形状も変ってくるのでガウンと相まって組み合わせは無限大だ。ここで着るガウン・フードは、晩餐会であったり、博士号の口頭試問委員会に参加するようなフォーマルな場所では正装がわりになる。見る人が見たらどこの大学かすぐわかる。まさに卒業大学を背負い続けるのである。

卒業式のありさま。ふかふかのフードは学士号の印である。先生が着ているのはPhDガウン。

この上さらに、学寮ごとにうっとこのカラーと紋章を持っているのだ。当然映画の通りにスカーフ・ネクタイ・セーター全て寮自前のデザインの物を持っている。寮対抗クィディッチの箒も、最近は寮のカラーのものが支給されるようになったらしい。Gonville CaiusとSt. John'sのだけ寄附金で超高性能であるという噂がある。

寮カラ―をまとうホグワーツの生徒たち


寮カラーの箒。寮じゃないのも混じってるけど。


晩餐会とか建築とか

全部映画そのままである。それに、晩餐会のホールは映画では一つだけだったけど、本当は寮ごとに少なくとも一つは晩餐会場があるのだ。

Magdalene寮なんかは典型的なホールだけど、

Magdalene寮のホール。マグルの写真なので止まっているけど本当は肖像画も含めて動いてる。

ウィリアムモリスが天井に至るまで全面監修したところもある。

Queens'の古いほうのホール。壁紙、ステンドグラスから全部モリス柄だ。

建物がかっこよくてもイギリスだから料理はまずい?あなたが赤門ラーメンおいしいと思ってるのじゃない限り、これは日本の大学も大概なのでノーカウント。
ちなみに、古くて権力がある寮ほど晩餐会の格式も高く、ジビエが晩餐会に出てくることがある。雉とか。白鳥とか。孔雀とか。それジビエ?ちゃんと国王に許可も取ってるから違法じゃないらしい。

ある日の晩餐会のテーブルのありさま。大学博物館に行けば学外者でも見学できる。ザリガニ…。

基本は自分の寮の晩餐会しか参加できないけど、他の寮に友達を作ればいくらでも招待による寮ホッピングが可能である。創設時代や財政状況(Trinityとそれ以外)ごとに建築の様式もとりどりで、見ても見ても楽しみが尽きない。スリザリンと仲悪い?何言ってるの?どの寮もちゃんとしたスリザリンだから、他の寮と互恵的な関係を保っているのである。

例外はなぜか南半球にあるGirtonとHommerton学寮くらいである。彼らは広大な敷地を活かして自給自足しているので、他と関わる必要がない。自前の林檎園で食べ放題がしたかったらGirtonへどうぞ。25mプールもあるよ!


夏は家に帰らなきゃならない

こんなに楽しい大学なのだから、できれば早めに現地入りしてコース開始前までに環境の良さを満喫しておきたいところである。

だが、残念だけど、夏は大学にとって世界中から超富裕層の子女の体験入学を受け入れるかき入れ時である。寮の部屋は空けないといけない。とはいえ、入学予定者向けの語学サマースクールに参加するなら、1か月で100万円くらい出せば、最古の寮であるPeterhouseに住んで超富裕層中国人参加者たちと仲良くなったりできるらしい…。いけるか。いやそれならセブ島留学でもするわ。幸い私はバーノンおじさんの家には帰る必要がない。

ハリーポッターシリーズを読んでるときは分からなかった世知辛い現実も、実際に自分が入学するとなると見えてくるものである。今はせいぜいオタク気質を活かして、歴史とか文化を深堀して気分を高めつつ、最後の海鮮を楽しもう。


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