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アート+インテリジェンスモール

こんにちは、コーイチです。
今回は、上海の新しいエリアである西岸エリアに2021年12月下旬にオープンした「AI PLAZA 西岸凰巣」を見ていき、今後の都市型商業施設はどのような業態が望まれているのか考えてみたいと思います。

1.西岸エリア

(出典:Meet in Shanghai youtubeより)

 「西岸エリア」とは、上海市内の真ん中を流れる「黄浦江」を南西へ下ったところで、南北約1.5kmの龍騰大道沿いのエリアのことを言います。
 最寄り駅は、北側が地下鉄7、12号線「龍華中路」駅、    南端が地下鉄11号線「雲錦路」駅となります。
 西岸エリアが整備されたのは2013年ごろで、2010年に開催された上海万博の跡地に隣接しており、もとは旧龍華空港を中心とした古い工場街でした。
 そのため、現在点在する美術館の多くが工場や飛行機の格納庫をリノベーションしたものが多くなっており、まだまだ発展中のエリアとなります。
 「西岸エリア」はアートの自由貿易区としても話題で、
美術館は基本的に私設施設が多く、オーナー好みの企画展を開くため、めずらしい作品が見られることもあります。
 また、建物のデザインもユニークなものばかりで、変わった風景が見れる場所として地元の人々にも人気のエリアとなっています。

2.AI PLAZA 西岸凰巣

(出典:遇见中国 Meet China youtubeより)

 2021年末にオープンした複合モールで、「垂直のシリコンバレー」がコンセプトの高層ビル「AI Tower」と、著名建築家・妹島和世が手がけたゆがんだようなビル「Art Tower」とが連動するモールとなっています。
 オフィス棟の「AI Tower」にはマイクロソフト、アリババなどの上海オフィスや人工知能の研究を行う上海期智研究院などが入っています。
 「AI PLAZA 西岸凰巣(以下、AI PLAZA)」の「AI」とは、「アート+インテリジェンス」の略ということで、無料で見学できるギャラリーもいくつかあり、屋外にもさまざまな仕掛けがあります。

 このショッピングモールは普通のモールとは違い、ホワイトカラーのビジネスマンの仕事体験を豊かにする空間となっています。
 「AI PLAZA 」を運営するSGG上海によると、徐匯河沿いの大型商業施設であるこのモールは、通勤客、近隣住民、この地域を訪れる観光客のニーズを考慮する必要があるといいます。
 そのため、「AI PLAZA」のリテールミックスは、周辺産業のニーズを考慮し、30%が高級レストラン、30%が社会体験、20%が付帯サービス、20%が専門店となっています。
 また、人工知能、金融技術、文化・メディアなどの異なる分野で働く周辺のホワイトカラーのニーズに対しては、都市スキーの新しいライフスタイルを提案する「SNOW51」や、日本の芸術訓練機関「EXPG」、ライフスタイルトレンド小売業「KV」などの体験型ビジネスを導入し、親子、スポーツ、娯楽、レジャーなどの多面的かつ統合的なライフスタイルシーンを創造しています。

 尚、テナントの50%以上は、中国初の体験型技術インタラクティブ探査館「ネルボ・テック・ミュージアム(上海館)」 、「アルファロメオ・ グローバルイメージコンセプトストア(上海館)」や、三体没入型SF体験ホール「Beyond Gravity」など、国内又は地域初のテナントとなっています。
 又、西岸の芸術的・文化的な雰囲気に呼応するように、入居ブランドの90%以上が新たな店舗デザインで展開しています。

 全体の空間は「自然、芸術、知恵、人文」の要素を取り入れ、「OPEN TO OPEN」という商業コンセプトのもと、西岸のサービスブランドを鍛え、最も水辺の生活「ホットスポット」を創造しています。
 
 モールの3階と4階にある「かわいいペットの楽園」と「楽しいキャンプ」は、半屋内・半屋外の体験シーンとして特別に設置され、300㎡近い緑をフロアの設置テーマと組み合わせて、水辺と休息のエコロジーを縦長のモール空間に表現しています。

 西岸スマートタワーにつながる立体的な屋外通路は、モールの屋外アトリウムの「路面テナント」の集いの場となり、これらの半オープンスペースにスーパーマーケット、カフェ、レストラン、ジムなどが入居しています。
 また、モール自体にも庭園のような空間がいくつもあり、それらはすべて地下空間や複数の1階部分や通路のデザインに関連しています。

3.緑、風、水、光に満ちた高層都市

(出典:LOVE SHANGHAI youtubeより)

 「AI PLAZA 西岸凰巣 」のデザインアイデアは、航空機の翼からインスピレーションを得た「フェニックスの尾」からきており、「巣を作ってフェニックスを呼び寄せる」という意味ということです。
 「鳳凰の巣」のデザインは、「鳳凰を呼び寄せる巣を作り、無限に成長する」という意味を持つ、「鳳凰の尾」に着想を得ているということです。

 このプロジェクトは、上海の黄浦江西岸地区にある上海龍華空港の飛行場と航空産業向け用地を再開発したもので、再開発の設計と都市デザインは、2009年の国際コンペで選ばれた日建設計が10年間の年月を費やして完成させました。
 
 この郊外の複合施設は、2つの超高層ビル、ハイエンドなオフィススペース、航空機格納庫、美術センターならびに高級ホテルで構成されており、2つのタワーのうしろには、大規模な商業施設も建てられています。
 設計の基本コンセプトは「風」で、かつて地方空港であった歴史、その周辺で栄えた航空業界、ならびに現在もそこにある「趣ある空気の流れ」がその発想の元となっているとのことです。
 建築とインテリアの構想、公共商業施設の設計、眺望およびウォーターフロント環境の取り込みといった、あらゆる要素で流体シミュレーション技術が活用されているということです。

4.最後に

(出典:REC Shanghai youtubeより)

 「AI PLAZA」はこの地区の旗艦商業プロジェクトとして、過去10年間の徐匯濱江の開発で蓄積された「産業エネルギー」を「ライフエネルギー」に転換するベンチマークとして注目されています。
 「西岸メディアポート」、「西岸ドリームセンター」、「西岸ファイナンスシティ」、「龍華クラブ」など、50万㎡以上の商業プロジェクトが次々と公開され、黄浦江沿いに壁のない開放的で共有できる生活空間が誕生します。
 
 また「AI PLAZA」は、徐匯濱江の将来の産業発展を助けるという重要な任務も担っています。
 地域の産業が重なり合い、人材が集まり、活動が豊かになり続ける中で、「モール」は柔軟で可変的、快適で便利、そして流行の公共空間の機能を担うことが求められています。

 2021年以降も、上海では多くの商業施設が開業し、その多くは、「一河(蘇州河)」沿いに位置しています。
 約75,000㎡の上海では中規模な「AI PLAZA」が安定した経営を維持し、徐匯河沿いの産業や文化芸術活動の集積に真に貢献できるのかが注目されています。

 昨今、商業施設のチェーン化が進み、プロダクトラインや標準化がほぼ画一的な行為となった今、開発会社もデザイナーも様々な表現方法を求めています。
 又、ここ数年中国では、モールのオープン時に初進出テナントの割合は必ず報道されますが、ルイ・ヴィトンやグッチなどの有名ブランドや、ユニクロ、無印良品、スターバックスなどではもう集客が難しいのかもしれません。

 今後の商業施設は、ライフスタイルの延長線上にあり、様々な体験が出来、施設内で自由に遊んだり、学べたりする施設が求められているのかもしれませんね。
 日本でも同じようなことになっていくのか今後注目したいと思います。

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