塩作りの匠 森保一による塩胡椒を用いたイラン塩蔵調理について

その男は、しゃがみ込んでいた。

打ちひしがれていたわけではない。

絶望しているわけでもなかった。


男は、人差し指を地面につけて、軽くなぞる。

人差し指を口につけて、ペロリと舐める。

小さく頷いて、少し微笑んだ。

今日の塩もいいぞ。

男は立ち上がって、少し微笑んだまま空を見上げた。

その笑顔はまるでモナリザのような、あるいは、法隆寺の百済観音像のような、慈悲深いものであった。

塩作りの匠、森保一

作り上げてきた数々の塩試合。

トルクメニスタン、オマーン、ウズベキスタン、サウジアラビア、ベトナム。

なんで勝てなかったのか。今の日本は決して万全ではなかった。今なら勝てたはずなのに。彼らは何度も自問したことだろう。

しかし、彼らに勝つチャンスはほとんどなかった。何故なら、塩漬けが完成していたからだ。

もちろん、並の塩漬けならば、彼らは屈しなかっただろう。サウジアラビアは、先のロシアワールドカップで、モハメドサラーを有するエジプトに圧勝したチームだ。

そんなチームでも、Jリーグで3度の優勝を経験した匠の前では無力だった。

サウジアラビアの塩漬け、いかがでしょうか。石油王の皆さん、是非買って下さい。

今日の試合はイラン。

日本で作った天塩で、イランを塩漬けにする。

今日はタフな試合になりそうだが、最善の準備はしてきた。選手たちは頑張ってくれるはずだ。

大丈夫だ。勝算はある。

今日の塩はよく出来ている。カラッカラの塩漬けを作れるはずだ。

塩作りの匠、森保一は歩き始める。アジア最強国の一角、イランを塩漬けにするためだ。不安は感じていないようだった。

巨大な塩田を歩きながら、森保一の笑みは大きくなっていった。今日は勝てる。今日の塩漬けは特別なのだ。会心の笑みと共に、腕を振って歩く。

その男の右手には瓶があった。瀬戸内海の天塩というラベルが貼ってある。

左手にも瓶を持っていた。中身は塩ではない。黒い粒が入っている。

これは胡椒だろうか。塩作りの匠が胡椒を手にしている!!

その瓶のラベルには、こう書いてあった。

日本の育てた黒胡椒

大 迫 勇 也

和リルホジッチこと森保一監督が、日本の製塩技術の粋を尽くしてアジアを塩漬けにしようとしている。

イランを機能不全に陥らせることは決して難しいことではない。何故なら、今日は胡椒が使えるのだから——。

日本の真の実力。

塩胡椒。

ご覧あれ。

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はい。

自分でも何を書いているのかわからなくなってきたので気を取り直して続きを書こう。これは、アジアカップのプレビュー記事である。

といっても今日は精神論しか書かない。

日本は決して強いチームではない。

それはそうだ。すべてはハリルホジッチ解任の日に遡る。

ハリルホジッチ監督は、日本サッカーにアイデンティティを作ることを掲げ、育成から一貫して、日本らしい強みを作るために尽力していた。

それはあまりうまくいかない部分もあったかのようなのだが、長期的プランがあった上で、日本代表をどうするかという文脈が存在していた。

しかし、W杯2ヶ月前に、いきなり解任されてしまった。

このことによって、これまで積み上げてきたものはすべて崩された。もちろん、うまくいっていないこともあったはずだ。それを含めて3年やってきたのだ。それなのに、リセットボタンを押して、ニューゲームを始めるという選択をしてしまったのだ。

その結果、西野ジャパンが生まれ、日本らしいサッカーをするという妄言が跋扈した。

日本らしさとは何なのか。ジャパンウェイとは何か。そもそも、Wayという英語の多義性をわかった上で使っているのか、本当に使ってるのか、使っているな?よし今から小テストだ。

問題
wayの多義性に着目し、例文を5通り作れ。

はい、では、タ○マくん。答えてください!

え?わからない?わからないのに英語を使っていたのか。使い方をよくわかっていない英語を用いて、日本らしさを表すというのはどういうことだ?日本らしさを、英語で言うのは日本らしさなのか?

解釈にムラが出るようなものを大方針に掲げるならば、定義づけと、それを実現できるための中期目標、短期目標を掲げてくれよ!!

「日本らしさ」も「ウェイ」も人によって解釈が異なるだろう。そんなものは方針にはならないんだ……。

サッカーから知性が消えていく。進歩史観の終焉だった。

説明しよう。日本サッカーは、大きく遅れていた。ヨーロッパはもちろん、アジアでも決して先進的ではなかった。一つの象徴が韓国にずっと勝てなかったことだ。世界に追いつき、追い越すために、海外の知見を取り入れ、日本サッカーは強くなっていった。

ハンス・オフト(オランダ)

パウロ・ロベルト・ファルカン(ブラジル)

フィリップ・トルシエ(フランス)

アルトゥール・アントゥネス・コインブラ(ブラジル)
※ジーコのことなのだが、文脈的には国内の監督に近い。

イビチャ・オシム(ユーゴスラビア、現ボスニア・ヘルツェゴビナ)

アルベルトザッケローニ(イタリア)

ハビエル・アギーレ(メキシコ)

ヴァヒド・ハリルホジッチ(ユーゴスラビア、現ボスニア・ヘルツェゴビナ)

五百蔵さんの『砕かれたハリルホジッチプラン』(星海社)を読むと、歴代日本代表監督からどのような知見を得て、日本サッカーを強くしていくかという連続性が意図されてていたことがわかる。

つまり、日本サッカーは進歩していく、強くなっていくという幻想があった。ぼくはハリルホジッチ監督のサッカーを十分には理解できていなかった。しかし、それはいいのだ。先進性というのはそういうものだからだ。

日本サッカーが進歩していくはずだという幻想を、幻想にしないためにハリルホジッチ監督は招聘されていた。そして、W杯でベスト8以上に進むという夢を、託されいていた。

ともあれ、ハリルホジッチ監督は解任された。

勝つためにはしょうがなかったという人もいるが、日本サッカーの目標は単に勝つことではなく、日本サッカーが進歩させていくことだった。そういう点では、ロシアワールドカップは非常にネガティブだった。

西野朗監督の采配についてどうこう言うつもりはないのだが、わずか2ヶ月の準備期間で、これまでの日本サッカーを、さらに高みに乗せるための仕事が出来るはずがない。

結果はベスト16であり、そのことには強く喜んだのだが、その先に何が残っただろうか?

何かは残っただろう。しかし、次はどうするべきというビジョンはない。

そこで出てきたのが「ウェーイwww日本らしくやるのが一番wwwwジャパンウェーーーイwwwww」である。

絶句。

ワールドカップ後、日本代表のことをあまり語らなくなっていた。もちろん、過酷な昼夜逆転W杯によって疲れ果てたのもあるのだが、一体どういう展望を持って日本代表と付き合っていくべきかわからなくなっていた。

堂安、中島翔哉、南野の三銃士が活躍していたが、「だったら翔哉をロシアに連れて行ったら良かったじゃないか!!」という怒りも湧いてきた。育成・強化に一貫性がないからこういうことが起こるのだ。

中島翔哉は確かに素晴らしい選手になったのだが、ワールドカップの舞台を経験させておいたほうが、さらなる飛躍を呼び込めたはずだから。ロシアワールドカップは、俺たちのサッカー、友情物語の終焉として一つの契機ではある。

意識の高い仲良しのサッカー選手たちが夢を目指して自分のやり方を貫いていく。そういう流れが美談として語られ続けてきたし、何を隠そうぼくも南アフリカW杯以降の美談を見て、サッカーにはまった口だ。

本田圭佑のことをいつも考えていたし、サッカーをプレーするときは、本田ならどうするか、長谷部ならどうするか、長友なら、内田ならと考え続けた。それはとても素晴らしい経験で、おかげでサッカーが大好きになったし、泥沼の大学院をやめる力も与えてくれた。人生を変えてくれたのだ。

でもそれって、ブラジルワールドカップで終わった話だったよね?

ブラジルからロシアは最低の時代だったと振り返られることになるだろう。代表監督が2人クビになった。ハリルホジッチ監督は大会の2ヶ月前で、ぼくは心の底から怒った。滅多に怒らない性格なのだが、何かに火が点いたのだ。


ハリルホジッチ解任でサッカークラスタが発狂している理由

今読み返すと、アイキャッチもない素朴な内容だし、決して読みやすいとは言えない。しかし、この記事が33万回も表示されたのは驚くべきことだった。

ハリルホジッチのプランでW杯を戦い、何が成功して、何に失敗したのかを総括し、それを踏まえて次のカタール、あるいはその次のアメリカ、カナダ、メキシコ共催までに何をするべきかを考えなければいけなかった。

ジャパンズウェイじゃないよ!

というわけで、酷い状況であった。何の準備もされていない状態のゼロ地点からリスタートするわけだから。

「なんかさ、日本らしいサッカーってあるじゃん?あれをやってほしいのよ。わかる?ジャパンズウェー。ジャパンズウェーよ。ほら、ラグビーの人。なんだっけな?なんかラグビーでうまいことやった人も言ってたでしょ。誰だっけな。

ジャパンズウェー。あれをやればさ、日本も世界一なれっかもでしょ!じゃ頼んだよ!

あ、人いないから、ワールドカップだけじゃなくてオリンピックも頼むよ。ワールドカップはベスト8以上、オリンピックは優勝ね。よろしく!!」

※この発言はすべて妄想である。1%も事実が含まれていないことを祈る。

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酷い状態だった。

一面は荒れ野原だった。

草も生えていない。生物もいない。

こんなところには鳥もやってこない。

乾いた大地を、冷たい風が吹き抜けていく。

なーに、大丈夫、大丈夫。

どんなタフな試合でも選手が頑張ってくれる。

確かに、土地は荒れちまったよ。

でも、塩ってのはよ、心で作るんだよ。

日本にはいい塩が育っている。

この塩なら世界をカラッカラにすることが出来る。

そして今日は塩だけじゃない。

胡椒もあるのだから……。

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華やかな親善試合の結果は、あくまでも親善試合。それでいったら、アギーレジャパンだって、親善試合では華やかな試合をしていた。良いサッカーをしていたと思う。しかし、アジアカップでは、ベスト8でUAEに敗れた。

岡崎、香川、乾、本田、遠藤保仁、長谷部、長友、吉田、酒井高徳、川島。誰か足りない。……。森重だった。

このメンバーは、ブラジルW杯の主力が残っていて、この時点では最強だったはずだ。もちろん、ディティールには意見があるかもしれないが、遠藤保仁というベテランまで動員した、完全に勝ちに行くシフトだった。

しかし、負けた。

アジアカップを勝ち抜くのは非常に難しいのだ。

その大きな仕事を森保監督は担っている。塩職人などといってしまうが、相手を塩漬けにする以外に勝つことが出来ないという現状もあるだろう。

日本代表は招集段階からして怪我人だらけだったのだ。攻撃のキープレイヤーである中島翔哉までいないわけだから、苦戦しないほうがおかしいのだ。

そんな中、自分の役割を淡々とこなし続けている森保監督には尊敬の念しかない。あまりにも試合が面白くないので、「塩作りの匠」と見立てること以外に、このアジアカップを盛り上げる方法はないのではないかとすら思っている。一方で、この状況下でも、最善を尽くしている森保監督は本当に素晴らしいと思う。

森保監督はいつもこう言う。

「タフな試合で、我慢する時間が長かったのですが、選手たちがよく頑張ってくれました。次の試合も最善を尽くせるように、準備していきたいと思います。」

どの試合でもほとんど同じことを言うので、慣れてくると聞いているだけで笑いがこみ上げてくる。

しかし、彼の言う、「最善を尽くす」という言葉に嘘偽りはないのだろう。

もっと、メディア受けをするようなことを言えばいいのに——。

そうは思うのだが、それが出来ないのが日本人だ。目の前にあることを、真面目に、実直に、真摯に片付けていく。

堪ヘ難キヲ堪ヘ…… 忍ヒ難キヲ忍ヒ……

森保監督のような戦い方こそ、確かに日本らしさといえるのかもしれない。確かに、華やかさは皆無なのだが、危ないながらも必死に耐えしのぐのが日本らしさとも言えるのかもしれない。

今日のイラン戦もタフな試合になりそうだ。日本は弱い。決してサッカーが強い国ではない。しかし、みんなで頑張って乗り越えていこう。これがジャパンウェイならそれはそれで歓迎だ。もちろん、現場を統轄する組織が、「弱くてもしのいで頑張るのがジャパンウェー」みたいなことを言っていたら、即刻全員クビにするべきなのだが、現場の考えとしてはこれでいい。特に厳しいトーナメントの最中なのだから尚更だ。

この日本代表、応援したい。

応援しようという気持ちは、トルクメニスタン戦までは正直それほど強くなかった。フレーフレー モリヤス!!絶対勝つぞーー!!!的な心情はあまりなくて、森保ジャパンが何をするのかを冷静に見定めようという気持ちが強かった。

そして、それを見定め続けた結果……。今は応援しようという気持ちで溢れている。イランには必ず勝って欲しい。

強い相手だが、コロンビア、セネガル、ポーランド、あるいはベルギーよりも強いわけがない。どう考えても弱い。

チームの状況はベストではないかもしれない。準備時間だって十分にはなかった。しかし、絶対に届かない相手ではないはずだ。

今夜は必ず勝つ!!!

そしておいしい塩漬け肉を食べよう。

そして、決勝はカタールか、あるいはザッケローニ率いるUAEか。UAEと戦いたい。それは一つの決着だからだ。

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ザッケローニ監督が大好きだった。彼が書いた日本への愛情が溢れる手記を何度も何度も読んだ。美しい夢を見た。

2013年、コンフェデレーションカップ。イタリア代表をすんでのところまで追い詰めた試合は、日本代表史に残る熱戦だった。

毎月100人が殺人事件の被害者となる町レシフェ。

海岸沿いの美しく町でありながら、ブラジルでも有数の恐ろしい町で試合は行われた。

3−4と敗れたのだが、日本代表は美しいサッカーをしていた。

ワールドカップで優勝する!

日本代表選手の言葉を信じて、ほんのちょっとでもその力になれるように、ブラジルワールドカップへと向かった。

そして、舞台は再びレシフェへ。

雨の降るレシフェでの試合は、英雄ドログバの登場と共に砕け散った。続くギリシャ戦、最後のコロンビア戦で、日本代表サポーターとしての自分は死んだ。

むなしさ。あの時のむなしさが何度も蘇ってくる。どれだけ嘆いてみても、あの時の日本代表は戻ってこない。クイアバでの一戦は行われることはない。どんな運命のいたずらか、ロシアでもコロンビアと対峙し、しかも勝利を飾った。

しかし、クイアバで死んだサポーターとしての自分は生き返ることはなかった。

ただ、今は久々に希望を感じている。久しぶりに心の底から応援したいと思っている。日本が生んだ塩職人、森保一。

森保監督の仕事に対する姿勢にだけは敬意を示したいし、カタールワールドカップ、その前の東京オリンピックまで、応援していきたいと思った。

思えば、本田圭佑に憧れていた頃はぼくもまだ若かったのだ。今は若者の夢にはあまり共感できなくなっているのかもしれない(それが良いものに感じられる時代もまた来るかもしれないが)。

今は仕事人に共感している。理不尽と言えば理不尽な要求だろう。監督の緊急解任によってぐちゃぐちゃになったものをすべて立て直し、アジアカップと自国開催の東京オリンピックの優勝と、ワールドカップでのベスト8以上の成果が求められるわけだから。

だけど、やり通して欲しいなと思う。外国人監督がいいか悪いかという議論は別の次元で、日本に育った日本人らしい監督を応援したいという気持ちは自分にはあるようだ。

森保監督の顔には「仕事」が刻み込まれている。文句を言ってくるやつもいる、言うことを聞かないやつもいる、世間では悪口も言われよう。それでも、自分のやるべき仕事をやり通す。そんな覚悟が感じられる。

だから、応援したい。

イランに勝って、ザックを超えて、日本史上最高の代表監督と言われて欲しい。

今夜は決戦。相手はイラン。不足はない。

熱いサッカーを見せてくれ!!

いや、熱いサッカーは無理かもしれないな。

玄人好みの地味な展開に持ち込んで、イランの選手やサポーター、監督のカルロスケイロスを渋い顔にさせて欲しい。

VARの恩恵なども駆使してピンチをしのぎ、セットプレーからのこぼれ球を押し込むなどして何とか1点もぎとって欲しい!!

そして、そのまま、決め手の塩谷を投入し、ドロドロのドン引き戦術に引きずり込むのだ。

試合に勝ったとき、日本の選手に満面の笑みはないだろう。うまく出来なかったという気持ちが強いからだ。

しかし、相手はもっとうまく出来なかったので、絶望的な塩辛い顔つきになる。

日本が育てた塩試合

塩試合を2つ続けて、日本が優勝だ!!

ワールドカップもエキサイティングだったが、コロンビアに勝って、セネガルと引き分けるという夢のような展開に少し頭がふわふわした。

アジアで勝ち上がり、最強のライバル国の一つであるイランを倒し決勝に行く。決勝で、カタールやUAEを倒すという目標のほうが、リアルに感じられる。生々しい目標だ。

それに今日は胡椒も効いている。
大迫勇也がおそらくフルコンディションで出場できるからだ。

これまでの試合は大迫なしだったので前線がどうしても安定しなかった。しかし、今日はスタメンのはずだ。コロンビアのダビンソンサンチェスや、セネガルのクリバリを相手にも一歩も引かなかったのが大迫だ。

いや、凌駕していたと言ってもいいかもしれない。大迫がもたらす前線での安定感は、紛れもなくワールドクラスなのだ。

そんな大迫のことを思い出す。

2014年の親善試合のニュージーランド戦では、本田を中心とした旧来のメンバーとかみ合わず、まったくパスが入らなかった。無視されているんじゃないかといぶかしむファンもいた。

ぼくにとって思い出深いのはその少し前のこと。

2013年J1最終節。
ぼくは鹿島サッカースタジアムにいた。

両チームにとって優勝がかかった大切な試合だった。

ホーム鹿島アントラーズの絶対的なエースは大迫勇也。圧倒的なポストプレーとフィニッシュ力で、J1最強のストライカーに成長していた。

対するのは……。

サンフレッチェ広島。

前年のチャンピオンであり、堅牢な守備を誇るチームであった。

この試合については拙著『サポーターをめぐる冒険』の第13節「カシスタで奇跡は起こるのか」について詳しく書いたのだが、改めてここでも書く。当時とは気分が違うからだ。

あの時の鹿島アントラーズにとって、大迫勇也は絶対的な存在であった。大迫がボールを持てばすべてがチャンスになった。

それを理解していたサンフレッチェ広島は、大迫勇也を塩漬けにしたのだ。

大迫は徹底してマークされた。ボールは入らないし、万一入ってもすぐに潰される。大迫は明らかに苛立っていた。そして、何度もボールをロストした。失ったボールの一つが、広島の先制点に繋がってしまった。

そして、前半のアディショナルタイム。せっかくだから拙著の記述を引用する。

大迫のチャントが鳴り響いた。エースストライカーの大迫が活躍してくれない勝ちようがないのだ。しかし、広島の戦術がぴたりとはまったらしく、期待に応えられそうな状況ではなかった。

苦闘する若きストライカーと、信じて声援を送り続けるサポーター。この構図は、息が苦しくなるほど美しかった。大迫のチャントがスタジアムに響き渡った。この日一番の迫力だった。みんな大迫が何とかしてくれることを信じているのだ。

しかし、得点が決められないまま前半のアディショナルタイムに突入した。その時、この日何度目だっただろうか、大迫の周辺でボールを奪われてしまった。大迫勇也は相手選手を後ろから止めに行き、笛が吹かれた。そして無情にも掲げられるイエローカード。2枚目のイエローカードに続けて、レッドカードが掲げられた。退場だ。

サポーターをめぐる冒険』(ころから) 


試合はそのまま塩漬けとなった。

それはそのはずだ。今となって改めて納得している。

サンフレッチェ広島の監督は、塩作りの匠、森保一だったのだから。

そして、その時の動画が残っている(スマホで撮ったので画質は悪め)。

試合に勝利したサンフレッチェ広島であるが、優勝できるかどうかは他会場の結果次第であった。

途中、優勝が決まり、大盛り上がりになる広島サポーター。彼の多くは広島から来ているのだ。鹿島から広島の遠さは半端ではない。日本で一番時間がかかる移動の一つではないだろうか。

その広島サポーターが喜びを爆発させた時、森保監督はピッチで大喜びしていた。

中途半端な位置をフラフラと歩いている白いシャツがスーツの隙間から見えている男が森保監督なのではないかと思うが、広島サポの皆さんいかがでしょう?

すべては流転し、すべては繋がっている。

試合後には、岩政大樹選手とのお別れセレモニーが行われた。その時の大迫勇也はベンチコートのフードを頭までかぶり、消え入りそうなほど小さくなっていた。そして、静かに鹿島アントラーズを去って、海外へと去った。

余談だが、この時ピッチの中にいた岩政選手と、今は裏実況の同業者になっているわけなので、人生一寸先は闇である。何が起こるかわからない。ぼくはこの言葉をポジティブな意味で使っている。

さて、それから5年。
大迫勇也は森保一監督の切り札になった。

日本が誇る黒胡椒

大迫勇也

かつて、ヨーロッパには塩だけしかなかった。塩だけ使えばある程度、肉を保存することは出来たのだが、胡椒がないとまずいのだ。胡椒があるとないとでは華やかさがまったく違う。

胡椒は肉の味を引き立てる。

肉とはすなわち、堂安や南野という攻撃の主力であろう。イランは強いが、日本の心の強さはこの大会ではほとんど見れていない。日本は胡椒なしで戦っていたのだから。

2019年1月28日。
胡椒を手にした塩職人が、決勝への切符をつかみ取る。

日本史上、最も華やかなサッカーをしたイタリアンの鉄人、アルベルトザッケローニを塩漬けにするために!!

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というわけで自分でも何を書いているのかさっぱりわからなくなっているのでここらへんでおしまいにします

本日のニコ生は、試合の1時間前からじっくりとプレビューを行います。ニコ生がなければ寝てしまっていたよという評価を多数頂いております。塩試合を愛を持って語ることには定評のあるニコ生です。是非ご視聴下さい!!


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この記事はここでおしまいですが、ほんのちょこっとだけおまけ記事をつけます。この記事が面白かったとか、ぼくの活動を応援して下さるという方は、是非ご購読下さい。

テーマは「北川、南野、堂安の3選手に言いたいこと ポジティブ精神論編」です。

かつてないほどぐちゃぐちゃの記事でしたが、整えた文章よりも、酔っ払ったような記事を書きたくなることもあります。そして、この記事の分量は約10000字です。狂った量です。

普通のサッカー記事は2000ー4000字なので相当長いです。

書き始めてそろそろ6時間くらい経っているので、手間もかかっています。個人の記事なのでギャラもありません。

なので、以下のおまけを購読してくれると本当に嬉しいです。是非よろしくお願いします!!

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塩作りの匠 森保一による塩胡椒を用いたイラン塩蔵調理について

中村慎太郎

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中村慎太郎

スポーツコラム

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