見出し画像

ライトノベル

 「ラノベなんて」、「所詮ラノベ」というときの、「ラノベ」は、だいたいゼロ年代後半から近年の作品をさしていて、それいぜんの作品を考慮にいれていないものと思われるが、それは、「松平健」という名前を聞いて「マツケンサンバの人でしょ?」というのに等しい。

 実際には、ライトノベルにもちゃんと歴史があり、あの有川浩先生も、桜庭一樹先生もライトノベル出身である。
 わたしは主にゼロ年代前半にライトノベルを読んでいた世代なので、上遠野浩平先生の『ブギーポップは笑わない』や、谷川流先生の『涼宮ハルヒの憂鬱』などを読んでいて、現在のような「異世界転生もの」が流行りはじめる前に、自然とSFや一般文芸に興味がうつっていった(残念ながら『ゼロの使い魔』は未履修)。

 結局、ラノベが現在のように「異世界転生もの」ばかりになったのは、流行っているからというよりも、「てっとり早く売れるマーケット」を見つけたからだろうと思うので、ある意味でバラエティー番組がペットものやクイズものばかりになるのに似ている。
 きっと映画やドラマも似たようなルートをたどったのだろうと思う。


 このテーマは本気で語ると無限に長くなりかねないので(実はこのへんは、自分のライフワークの軸足というか、出発点だったりする)、書籍紹介して終わり。

 葉山透先生の『9S』は、わたしが人生ではじめて「いっき読み」して1日で読み切った作品。ラノベの中では、比較的ボリュームのある作品であるにも関わらず、テンポがよく引きも強いので、ずっと「次どうなるの?」というモチベーションでいられた。
 ストーリーは、ぶっちゃけ『ホワイトアウト』に似ている。巨大施設をテロリストが占拠して、それにたまたま巻き込まれた主人公が、手探りで問題を解決していく、というプロット。
 天才少女が物語に深く関わってくる、というアイデアは、森博嗣先生の『すべてがFになる』に着想をえていそう。
 この『9S』の最大のウリは、やはりテンポのよさと、難しいテーマをちゃんとミドルティーン向けのアクション小説に落とし込める葉山先生の技量にあると思う。

 あまり長く書けるスタミナがないので、以上。


わたしの活動が、あなたの生活の一助になっているのなら、さいわいです。