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『小早川隆景』著者:童門冬二 を読んで

こんにちは。はったんです。

今回は童門冬二先生の『小早川隆景』について紹介します。

ネタバレを含む内容となりますので、気になる方はご注意下さい。

〇小早川隆景の紹介

小早川隆景は1533年に毛利元就の3男として生まれました。

幼名は徳寿丸といい、12歳のころ竹原小早川家の養子となります。
※18歳の時には本家の沼田小早川家も相続し小早川家を統一した。

小早川家は瀬戸内水軍をまとめる家であったため、隆景は家督を継ぐと同時に水軍の頭領にもなります。

後の厳島の戦いや木津川口の戦いでは、海賊として有名な村上水軍をも率いて活躍します。

また、隆景は毛利元就の教えの1つとして有名な「三本の矢」に登場する元就の息子の1人です。
※「三本の矢」は毛利元就が子である毛利隆元・吉川元春・小早川隆景に「矢は1本だと簡単に折れるが、3本まとめると簡単には折れない」と一族の団結を説いた話です。

そんな隆景は物事をよく考えてから決断する冷静沈着な性格であったため、元就の死後は毛利家の中心人物として家を支える立場となりました。

その能力の高さは豊臣秀吉黒田官兵衛からも評価されています。

豊臣秀吉からは毛利家の家臣でありながら伊予1国を与えられ、黒田官兵衛には「人生における師」として尊敬されていました。

そして豊臣秀吉の天下になると、主君である毛利輝元とともに五大老に選ばれます。

このことからも、秀吉からの信頼と評価の高さは絶大であったと言えるでしょう。

1594年には、豊臣秀吉の甥にあたる羽柴秀俊(小早川秀秋)を養子に迎え入れます。
※秀吉の血縁を養子に迎えたのは毛利家を守るためであったと言われています。

養子の小早川秀秋は関ヶ原の戦いで東軍に寝返り、西軍敗北を決定づける要因となりますが、残念ながら隆景はその戦いの3年前(1597年)に生涯を閉じることになります。

〇本の概要

毛利元就からの教えと知謀を強く受け継ぎ、毛利家の中心人物となった小早川隆景。

一方、日本は織田信長や羽柴秀吉の台頭により、著しく変革の時を迎えます。

元就が生きていた時代とは違う世が形成され、彼の教えを守るだけでは毛利家の存続も危ぶまれる状況に。

「亡き父の教えを貫くべき」か「新しい道を歩むべき」か。

この本は、元就の教えと変化する時代に翻弄され、毛利家のために尽力する隆景を中心に描かれています。

〇この本の見所

私が思うこの本の見所は、隆景とその妻ますの会話です。

ますは隆景が沼田小早川家の当主となるときに結婚した妻であり、聡明な女性で隆景のよき理解者でもありました。

元就から「三本の矢」の教えを受けた際に目の前でおられた矢を自分だと思い、いらだちを隠せない隆景を冷静に諭し、女性ならではの目線から助言を行っています。
※この時隆景に対する悪い噂が毛利本家であり、それを解決しようと元就は三本の矢の話をしていた。

実際、ますの指摘をうけ、隆景は現状を打破することに成功します。

まさに隆景の女軍師といったところですね!

また、毛利家の重臣達の前でいつも淡々としている隆景も、妻のますには自分の思っていることをさらけ出していました。

上月城救援のため織田軍と戦う際には、吉川元春と隆景の意見が食い違い、気まずくなる場面がありますが、みんなの前では伝えない自分の熱い思いをますには全て語っています。

あの冷静沈着な隆景の珍しい一面が垣間見える場面です。

皆様も2人の会話を楽しみに読み進めてください。

〇学ぶべき点

この本には小早川隆景がよく言っていた助言が2つ出てきました。

それは下記の2つです。

「つねに急ぐことはゆっくり書け。」

「人に話をして、すぐわかりましたと言う者にわかったためしはない。本当にその話を理解する者は、必ず質問をする。」

冷静沈着な隆景らしい助言ですね。

実際に、上記2つの助言は現代においてもとても大切なことだと思います。

私自身も急いでいるときは雑にメモをするときが良くあり、後から読み返してみると何を書いているのか分からない時があります。

また、人の話を聞き終わってしばらくしてから、「あれはどういうことなんだろう?」と質問が出てきて、「あのとき聞いておけば..」後悔することがよくあります。

まさに、隆景が指摘している悪い例ですね(笑)

現代人にも通ずる助言を残されるとは、さすがです…

〇おわりに

私がこの本を読む前までの小早川隆景に対するイメージは
「頭がとてもよく、合理的で冷静な判断が下せる武将」
でした。

実際にこの本を読んでみても、私のイメージと合致する隆景のエピソードは多々登場します。

しかし、冷静な判断の根底には毛利家に対する熱い思いがあり、想像の何倍以上も情に熱い武将である事が分かりました。

時には小早川家をも犠牲にして毛利本家を守り抜こうとするその姿にはとても感銘を受けました。

この本を通して、皆さんも隆景の意外な一面に出会えるかもしれませんよ?

最期まで読んでいただきありがとうございました。

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