日銀決定会合における退席時間と中断時間に関するメモ

今回はちょっと細かい話ですが、簡単にメモを記載しておきます(下記に記載してあることは、日銀をフォローしているエコノミストや記者からすると常識だと思われますが、必要に応じて、修正・アップデイトします)。

まず、昨日、日銀の決定会合がありました。そのプレスは下記の通りですが、下記に記載してあるとおり、決定会合には 総裁・副総裁・審議員以外にも、政府関係者が出ています(財務省と内閣府の審議官および副大臣)。そして、出席時間をみると、途中で6分間程度離席しています(赤色でハイライトしている部分)。

k230922a.pdf (boj.or.jp)

この離席は毎回の会合でみられるのですが、これは政府関係者には議決権がないので、その間、席を外しているということによるものです。政府の参加者については、日銀法第19条によって「政府からの出席等」という形で認められています。しかし、投票時には政府関係者は席を外すということです。

例えば、10年以上前のことであれば、議事録が読めるため、下記のように政府関係者が投票のために退席が求められていることがわかります。

金融政策決定会合議事録等(2013年6月10、11日:議事録) (boj.or.jp)

政府による参加についてですが、制度的には、必要に応じて参加できるという形ですが、木内さんの書籍によれば、政府による参加は「参加が恒常的に」としています。その一方、「政府側に対して意見を表明する機会が与えられる、といったプラスの側面も指摘できる」とも指摘しています(木内さん自身経験では政府代表者の参加によって直接的に影響を受けたことはなかったように思う、と指摘しています)。

政府関係者が決定会合についてまったく影響力がないかというとそうではないと思います。まず、これはたまにあるのですが、政府関係者が決定会合を一時中断するということがあります。最近にあった事例だと、昨年末の決定会合に、10年金利を0.25%から0.5%に拡大したわけですが、37分間の中断がなされています。
12月日銀会合で37分間の中断、政府出席者から申し出-議事要旨 (2) - Bloomberg

この中断があったことは決定会合直後にはわからず、その後発表される議事要旨をみることでわかります。例えば2022年12月のケース(10年金利の誘導を0.25%→0.5%へ変更)であれば、下記のように記載があり、中断があったことが分かります。

政策委員会金融政策決定会合議事要旨 (boj.or.jp)

これに対して、下記の報道で、財務省の鈴木大臣は、

「政策決定会議(会合)の時には、政策決定会議(会合)の時には、そうした時間を取って、財務省の方にこうした意向があるということについて意向確認する。いつも副大臣が出席しているが、副大臣から財務省のほうに連絡がある。そういう事実」と言及。「こういう意見があるというのを発表前に報告があった」

としています。

昨年末の日銀会合中断時、財務副大臣から「報告」と鈴木財務相 | ロイター (reuters.com)

また、政府が決定会合に持っている重要な権限として「議決延期請求権」があります(日銀法19条の2と3)。再び木内さんの書籍の表現を引用させてもらうと、「政府代表者が委員会の議決を次回の会合まで延期することを求めることができる権利であり、これは『議決延期請求権』と呼ばれている。政府関係者がこの権利を行使すれば、政府と日本銀行との間の意見対立を世の中に明らかにすることになってしまうため、この規定は政府が日本銀行に対してプレッシャーをかける、いわば抜かずの宝刀になるという見方が当初多かったとみられる」としています。

もっとも、同書に記載してあるとおり、この議決延期請求権は2000年8月11日の決定会合ですでに行使されますが、これについては木内さんの書籍に譲ります(筆者の理解では過去1回だけ行使されています)。

なお、決定会合の発表時間は昼頃ですが(昨日は11:52)、発表が遅れると、大きな決定があるのでは、と市場では妄想を膨らませます。決定会合2日目は市場参加者は皆結果を待っていて時間をつぶしているのですが(私も経験があるのですが、日銀の発表まではあまり取引もないことから暇なことが多いんです。日銀待ちの時間です)、結果がなかなかでないと、「今日はもりあがっとるな」などと妄想をし始めます。

投票をした後は、すぐに結果が出てくるのが基本ですが(昨日の会合についても投票が11:37に終わり、11:45に決定会合終了、11:52にプレスの公表)、しかし、下記のように、投票後に時間がかかって、13時発表というパターンもあります。


もっとも、これについては単なる事務トラブルだったという報道がなされています。
植田日銀「空白の1時間」 初会合、誤算だったCPI: NIKKEI Financial

追記
下記もごらんください。
日銀の金融政策決定会合(MPM)の基礎|服部孝洋(東京大学) (note.com)


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