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本とその不確かな表紙・序

その本の中に私がまだ知らなかったあの過去の日々の真実がある。どうしてもその時間に行かなければならない。世界的人気作家の6年ぶりの大作が書店で売り出され十数万人の読者達が殺到することで(まだ私同様ページを開けず、作品の内容でなく作品の放つ霊気に接しているだけの数万人がいるから)、国籍を超えた人類的無意識の世界への通路が開けているのだ。この時空トンネルというかオーロラはしばらく消えない。まだ私には第1ページが開けない。まるで封を切らずに銘酒の“気”を愉しみ、無意識の力、方法で作品に押入ろうとしているようだ。川が地下に流入してゆく時に私の無意識もまた木片となって二度と帰れない世界に流され去ってゆく。未読の読書。

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