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とあるオタク女の乙女心

私は腐女子と夢女子、両方の属性を持つハイブリッドオタクだ。

普段から「雄っぱい揉みたい」「脇チラやばい」など煩悩にまみれている。推しが尊ければ拝むし、男同士が作品内で仲良くしていれば、そういう目で見てしまう。

しかし実は、自分で言うのは少し恥ずかしいのだが、どちらかというと根っこは乙女で夢女子寄りという少々めんどくさいタイプのオタクだ。

このことに気づいたのは割と最近だ。

というのも、私は幼い頃から男勝りに振る舞い、自分の中の女の子な部分を封印していたからだ。本当は女の子らしいものに憧れていたのにもかかわらず。

二十年以上抑圧してきたせいで、私は乙女心や女らしさを表に出すことに対して「恥ずかしい」とか「柄じゃない」とか思うようになってしまった。

だから以前は友人にも夢女子だと言えず、こっそり夢小説を読んだり書いたり、女性向けのノベルゲーなどをやっていたのだが、表向きはBLだけが好きという体で振る舞っていた時期があった。

それでもだいぶ自分を受け入れられるようになり、今では自分の本質はそっちだという自覚も持っている。しかし、未だに表に出すのには抵抗があり、男勝りなキャラで取り繕っているというような状態だ。

男勝りに振る舞ってしまうのは私の悪い癖でありながら、一種の自己防衛手段のようにもなっていた。

今日はそんな面倒なオタク女の乙女心にまつわる馬鹿な話をひとつ聞いてほしい。


唐突だが、うちの旦那は声がいい。

演技も好きなのでアニメや映画の声マネをやっている。
いつもは渋いおじさんキャラなどを真似したがるのだが、その日は珍しくスマホ向け乙女ゲーのCMを見て、そのセリフをマネしていた。

かっこつけたいとかではなく、単純にネタとして面白かったんだろう。

乙女ゲーの芝居というのは独特の雰囲気がある。セリフの内容も歯が浮くようなものが多い。なんというか、アレに萌えるかどうかはシチュエーションと個人の嗜好に大きく左右される。

とりあえず、飯食いながらCMから流れてくるのを聞いても、萌えないのは確かだ。

私はそんな独特の芝居を面白半分にマネする旦那に「それ試しに私に向かって言ってみて」と頼んだ。

別にそういうセリフを「旦那に」言って欲しかったわけではなく、一人の女オタクとしていい声で萌えるセリフを言われてみたかったのだ。

しかし、付け焼き刃のセリフではやはりネタにしか聞こえず、最初は吹き出してしまった。
が、そこでやめるのではなく、あろうことか私は「もっとちゃんと感情込めて言って」と注文をつけた。

そして2度目。
旦那が精一杯言ったセリフは、予想以上の出来栄えだった。

正直言って、萌えた。

そりゃお前の旦那なんだからお前が萌えるのは当たり前じゃねーかと思うかもしれないが、違う。
違わないが、違う。

そして完全に油断していた私はちょっとだけ乙女心が顔を出しそうになったのだが、その時とっさに口から出た言葉は

「あ"ー、めっちゃいい」※トーン低め

だった。

まるでおっさんだった。

乙女な自分を表に出すのが恥ずかしすぎた私は、そんな反応を返してしまったのだ。

私の土下座した。
そして叫んだ。

「ごめん!おっさんの鎧が…!」

先ほど、男勝りに振舞うことは自己防衛だと書いたが、オタクとして生きるうちに、私の中にはその究極系として「おっさんの鎧」が完成してしまっていたのだ。

ちなみに旦那は私がどれだけ気持ち悪いオタクかとうに知っているので、今さら何も隠す必要などないのだが、それでも、私の乙女心はおっさんの鎧をまとい、頑なに表に出てこようとしなかった。

旦那は「おっさんの鎧」と言う言葉がえらくツボに入ったらしく、めちゃくちゃ笑っていた。意味を説明したらさらに笑われた。

盛大に自爆した私は、もう恥ずかしさで死にそうだった。

いつか私が素直に乙女心を表に出せる日は、果たして来るのだろうか。

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