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ヒロイン気分に夢中

子供の頃過剰に制限されていた反動か、この歳になって漫画を読むのにハマっている。スマホでは沢山の少女漫画(という呼び方が今や正しいかどうか?)が読めるので、楽しみに一話ずつ読んでいる。気に入って購入した話もいくつかある。
いい歳をして「漫画に夢中なんです」などと公言するのは憚られるが、面白いものはしょうがない。ストーリー展開が凝ったものや、絵が綺麗なものがお気に入りである。
いくつも読んでいると、自分の好きなストーリーや設定に一定の傾向があることに気付く。

先ずは主人公に『かなり世間的に恥ずかしいと思われる習慣や特性、趣味』があること。そしてそれをどんなに努力しても改善できないか、或いは好きでやめられないこと。
『恥ずかしい』というのは例えば料理が恐ろしく出来ない(砂糖と塩を普通に間違えるレベル)とか、とんでもない汚部屋に住んでいるとか、ミリタリーオタクだとか、脱いだ靴下の匂いを嗅ぐのがたまらなく好きとか、そんな感じである。
そしてそんな主人公が、実は『素直な良い子』であり、『本人がそれに気付いておらず、ひたすら自分の恥ずかしい点ばかりに着目している』のも共通している。
つまり、自己肯定感が恐ろしく低いケースが殆どである。

恋愛対象の男性にも一定の傾向がある。
最も重要なのは顔面偏差値。高いに決まっている。でないと読み進める気になれない。国籍問わず。
次に、『何かこじらせて』いて、『その事実を隠しているか、或いは認めていない』こと。つまり見た目と違って完璧ではない、ということだ。
例えばモテモテの癖に女性に免疫がないとか、夜は熊のぬいぐるみがないと眠れないとか、どうしようもないくらい照れ屋で口下手で赤面症だとか、そんな男性である。実際には「そんな奴、おれへんやろ」と突っ込みたくなるような極端な例が多い。
しかしこういう『弱点』があるせいでつい引き込まれ、母性本能をくすぐられて、シュッとしたイケメンに『カワイイ♡』と言いたくなってしまうのだから、上手くしたものだと思う。

私の場合、主人公には無意識の内に自分を重ねている。
汚部屋は別だが、女子力の低い女の子にはやたら共感してしまう。『女の魅力は顔とか、女子力だけじゃないんだい!』と叫びたい深層心理が働いているらしい。
『女性として致命的と思われる欠点を抱えている』上に、『幸薄い』『モテそうにない』子だと、私は安心して自分を重ねられるのだろう。自分のことをそう思っている証である。
『ガラスの仮面』(美内すずえ・作)の姫川亜弓(お嬢様で美人)よりも北島マヤ(貧乏で普通の顔)に感情移入するのは、より親近感を覚えるからだと思う。
完璧な同性に対しては嫉妬又は崇拝し、欠点だらけの同性には安心感を覚えるのが人間という動物の特性なのだとしたら、恋愛漫画って実に上手くできていると思う。

相手の男性はどうだろう。
『自分のような人間には手の届きそうにない、一見ハイスペックな男性』であるが、自分同様、『弱点がある』。そして『自分も気付いていない自分の良いところ』を見出してくれて、『そこを一途に好きになってくれる』。
手の届かないものに手が届く時点で、夢のようである。
更に母性本能をくすぐられる。なのに弱い自分を『そのまんまで十分魅力的だよ』と可愛がってくれる。
ああ、なんて理想的なんだろう。これが夢中で読まずにおれるものか。
ツボにハマりまくっているではないか。

現実の世界では出来なかったことが、全て叶っている。いわば主人公を通して理想の恋愛を疑似体験しているのである。頑張らなくても手っ取り早く幸せになれてしまう。
自分が鏡に映るちょっとくたびれたオバサンであることも、読んでいる間は忘れている。
こうやって自分の心理分析をしていると、なかなか面白い。

そう多くは取れないけれど、漫画を読む時間はヒロイン気分に浸れる、私の至福のひとときなのである。








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