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猛特訓中

最近、猛特訓中である。というか、猛特訓「させられて」いるド最中である。
もうすぐ世の中はクリスマス商戦に突入する。そういう品を豊富に取りそろえたお店ほどではなくとも、それなりにラッピングの需要は増える。ウチのスーパーだとなんといっても文具・玩具売り場が最高に忙しくなる。次いで衣料品売り場。その次が私の居る靴・服飾雑貨売り場になる。
まださすがに1か月以上前なのでご用命はないが、売り場にはクリスマスプレゼント用の包装紙も置かれて、準備は整ってきている。

最近はエコ包装の推進もあって、ギフトラッピングも薄紙(直接商品を包装紙で包まないように先に包む紙)を省略したり、リボン掛けは廃止したりと随分簡素化されているそうだが、包装紙で包むという需要は相変わらず一定数ある。
ギフト用袋に入れるだけなら私でも瞬間でできるのだが、紙を使っての包装は時間もかかるし、見栄えも気を遣う。
元々超がつく不器用を以って任じているので、今まではギフトラッピングが来ると「お願いしまーす」とほかの人に振って逃げていた。

しかし先日、「どうしても包装紙で」というお客様が朝早く私一人の時にいらっしゃり(またしてもビギナーズラック)、非常に難儀した。キャラメル包みができそうにない、大きな商品だったのだ。放置することも出来ず、やむを得ず一人で包装紙と格闘しているところへ、課長が出勤してきたので丸投げして事なきを得たのだが、
「在間さんも入社して半年過ぎましたし、もうすぐクリスマスですし、いい加減ギフトラッピング覚えましょうか」
と言われてしまい、「一日一包装練習」をすることになってしまった。
この売り場にいる限り、ラッピングからは逃げ切れない、と漸く諦めがついた。

所謂「斜め包み」という奴である。
私も俗にいう「キャラメル包み」という包み方は、何とかできる…こともある。キャラメルの包み紙の要領で包むやり方だ。比較的簡単で覚えやすいし、紙に皺をあまり寄せることなく、見た目が綺麗に仕上がる。
だが物が大きかったり、リュックなどの歪な形の物や、柔らかい樹脂の箱に入ったハンカチなどは包みにくく、なかなか綺麗に仕上げられない。
斜め包みは箱を包装紙に斜めに乗せて、角を立てながらどんどん回転させていくやり方である。正式な包み方で、「キャラメル包み」ほど箱の裏側がもたつかない。
店の「包み方マニュアル」があるのを見つけて、参考にしようと喜んでコピーさせてもらったのだが、注意書きの冒頭に、
「※初心者には難しい包み方です」
といきなり書いてあって、心が折れそうになった。
大体、数学でも図形は特に嫌いだった。立体図形は中でも一番嫌いだ。それでも生きていくのに困りはしなかったから、箱を回転させるとか、包むとか言ったことには幸か不幸か縁なく過ごせてきたのである。
齢50を過ぎて、立体図形に苦しめられるとは思いもしなかった。

食品レジと違ってお客様がウチのレジに来られるタイミングには波があり、混むときは2台のレジをフル稼働させても列ができるが、混んでいないときは物凄く手持無沙汰だったりする。なので、その手持無沙汰な時間を利用して、特訓する(される)ことになった。
社員のOさんは入社してまだ1~2年くらいなのだが、綺麗に包む。私が感心していると、
「慣れですよ、慣れ」
と言うのだが、彼女はレジ担当ではないのであまり回数をこなしていないはずである。元々パティシエールだから、丁寧に作業するのが得意なのかも知れない。
「クリスマスのラッピングは忙しいし面倒くさいとは思うが、パティシエール時代に比べれば、クリスマスに家に帰って布団で眠れるだけ有難い」そうで、なんてことはないそうだ。

専ら先生は課長とOさん、ラッピングの達人Yさん。MさんもSさんも私同様生徒なのだが、真面目で仕事熱心なMさんは家でYouTubeを見ながら練習しているそうで、その手つきは生徒という感じではない。Sさんはなんといっても元々幼稚園の先生だけあって、こういう作業の呑み込みが早い。片手間にバイト感覚でお気楽に働きに来ている上に、生来の不器用である私が一番ダメ子になるのは必然である。
だから私の周りの人はみんな先生状態になっている。

人には得手不得手がある。私はラッピングが苦手である。
だけど、一日一包装をやっていると、不思議なものでだんだんちゃんと包める回数が増えてくる。そうすると、面白くなる。また包む。またうまくできる回数が増えていく。
なるほど、数をこなして慣れるってこういうことかと思う。
いつの間にか、不得手が得手になるのはさぞかし快感に違いない。そう思いながら時間さえあれば作業台の上で靴の空箱を転がして、包装紙と格闘している。

と偉そうに言っても、きっとまだまだこの先もアワアワするに決まっている。
私の一日一包装特訓はまだ当分の間続きそうだ。
クリスマスが終わるころには、ラッピングの腕も少し上がっていると良いのだが。あ、遅い?