2022年11月14日「ソルフェージュとは何か?〜藝大大学院生からのメッセージ〜」終演


フライヤーのデザインは谷口あかり氏

 先日11/14(月)、私が所属する東京芸術大学ソルフェージュ科が企画した公演「ソルフェージュとは何か?〜藝大大学院生からのメッセージ〜」(於トーキョーコンサーツ・ラボ)が開催されました。まずお越しくださった皆様に深く感謝いたします。

 当日は作曲家であり音楽教育者であり、その他多彩な音楽活動、のみならずテレビタレントとしてもご活躍されている青島広志先生をゲストにお迎えし、前半では「青島広志先生との対話」と題してシンポジウムを、後半では「アンサンブルの探求」と題してデュオのミニコンサートを行いました。

 今回の企画は我々藝大ソルフェージュ科の大学院生が主体となって、学内助成を受けて行ったものですが、先生方や研究室助手の方々には多大なご助力・応援をいただきました。また石塚さん(ヴァイオリン)、太田さん(ユーフォニアム)、藤原さん(声楽・ソプラノ)のお三方は、演奏でのご協力のみならずシンポジウムへのご出演にも快く応じてくださいました。そして藝大ソルフェージュ科をもう卒業したにもかかわらず私によって巻き込まれてしまった前田さん。何よりももちろん、お忙しい中ご出演を引き受けてくださり、溢れ出るトークとサービス精神で会場を大いに盛り上げてくださった青島先生。全ての方々に対して感謝が尽きません。

 正直なところ、このような企画に興味を持ってくださる方がどれほどいらっしゃるものだろうか、そして果たして面白さの中に内容の深さも感じていただけるものにできるだろうか、と不安を抱きながら準備を進めていました。しかし当日はお客様からも熱意を感じ、それに我々が支えられながら良い雰囲気の中で進行できたように思います。

 ここで私が一点述べておきたいのは、第一部のシンポジウムは登壇者たちがソルフェージュに対して全く一致した見解を持っていることを必ずしも意味しないということです。大枠において共通の方向性であるかもしれませんが、我々はそれぞれがそれぞれの認識を持っているはずです。それは別にネガティヴなことではなく、むしろだからこそ対話をすることに価値があるでしょう。

 以下は私の拠って立つ考えです。「ソルフェージュというものはなんだかとにかく西洋音楽の基礎で、なんだかとにかく重要で、なんだかとにかくやらなければいけないものなのだ」と言うことは非常に簡単です。しかしそこからさらに「ソルフェージュとはどういうことを、どういう目的でやるのか」ということを問う必要があると思います。いまだに少なからぬ音楽家にとって、ソルフェージュというと聴音書き取りやリズムや楽典のドリルといったイメージが強いのです。そういったイメージを持っている人が教師の立場になったときに「なんだかとにかく重要」で思考を止まってしまうと、熱意ゆえに生徒を真の音楽性から遠ざけるような逆効果な教育をしてしまいかねないのではないか……これはまさにもう半世紀前にフォルマシオン・ミュジカル(改革されたソルフェージュ)が根底に置いた問題意識にも通じるわけですが、日本において我々を含め、仮にもソルフェージュ教育を専門として考えている人々による発信を強化していくべきであると思います。

 というわけで私自身は今回のような企画を今後も継続して行うことに前向きです。ただし公演を一から企画し運営するというのはなかなかに大変なことで、特に今回は私が中心となっており、率直に言ってさまざまなストレスもありました。それでも助成があったので赤字が出る可能性は低かったのが救いでしたが。シリーズ化するためには持続可能な仕組みを構築する必要があるでしょう。それが今後の重要な課題です。

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