第70話「世の中はコインが決めている」

 新たな協力者としてハナちゃんが選ばれた。理由はシンプルで、口が固くて楽観的なところが気に入ったらしい。

「君が選んだのなら文句はないけど、狛さんにどこまで話したの?」と僕はチラッと狛さんの方を見た。

「全部話したよ。隠したって意味はないと判断したからね。それに狛さんを危険な目に合わしたくないだろう」

「それは勿論だよ。でも、どうやって守ろうと考えてるの?」と僕が訊くとハナちゃんが声を出した。

「私としばらく住みまーす。期限はないけど、はじめくんと正論くんが無事に解決させるまで」とハナちゃんが説明した。

「住むって、二階の住まいで!ホントに良いの?」と半信半疑だったので聞き返した。

「ホントよ、はじめくん。ハナさんは知らない仲じゃないし、それに女同士の方が助かるわ」と狛さんが楽しそうに言う。命を狙われるかもしれないのに、なんだか楽しんでる感があった。いささか心配である。

「幸いにも、縁日かざりにスナックの居場所は知られていない。それにここだったら安心だ。だからここを訪れるのは今日を最後にして欲しい。それと君には新たなミッションを与える」正論くんはそう言って、耳たぶを触っている。どう見てもこの状況を楽しんでるみたいだ。

「狛さんのことはわかったけど、それで、僕は何をすれば良いの?」

「一度部屋に帰ったら、部屋の照明を点けて君が帰宅したことを縁日かざりに知らせる。そしたら、狛さんの部屋に行って待機しろ。多分今夜、縁日かざりは動くだろう。狛さんの部屋に君が居たらどうすると思う?」

「焦るだろうね。ちょっと怖いけど、そうなったら彼女の方もなんらかの行動に移すかもしれない」と僕は答えた。

「あくまでも彼女の目的は君に近づく女性。現に僕のことは敵対心もなければ、攻撃もしてこない。ましてや君に対しても攻撃はしないだろう。だったら、あとは君の得意の誘惑でもしちゃえば良いよ」と正論くんは狛さんやハナちゃんの前で最悪なことを言うのだった。

 僕は目の前に居る、二人と深い関係になったのに……

「……あの、それは……」と僕は居たたれなくなってしまう。

「ちょっと、はじめくん。私たちのことは気にしないで。どっちかと言うと、早く犯人を捕まえて欲しいの」とハナちゃんが言う。

「わかったよ。今夜、何とか彼女とケリをつける。でも、今回ことはありがとう。正論くんには助かってる」と僕はこれまでのことや、今回の計画に感謝してお礼を述べた。

「さぁ、そろそろ解決させようじゃないか。僕たちの野望に向けて!」と正論くんは相変わらず楽しそうに耳たぶを触りながら言うのだった。

 今夜、僕は縁日かざりとサシで話すことを決意した!

第71話につづく

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