はぜの木

よせぎれ工房「はぜの木」主催。日本中の箪笥に眠っている着物の裂の思い出をつないで現代の…

はぜの木

よせぎれ工房「はぜの木」主催。日本中の箪笥に眠っている着物の裂の思い出をつないで現代の住空間にフィットしたアップサイクルデザインを創造。公益社団法人かながわデザイン機構(KDF)会員。学芸員。2022年12月KDF「タンスの着物再生プロジェクト」始動。座右の銘は無我夢中。

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  • タンスの着物再生プロジェクト

    公益社団法人かながわデザイン機構(KANAGAWA DESIGN FORUM)の公益事業の一つであるエコデザイン事業の中のプロジェクトとして2022年12月より始動しました。

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よせぎれのお話

祖母や母が大切に保管している古い着物の裂(きれ)があります。昔は布が貴重品で着なくなったからといって簡単に捨てたりはしなかったようです。様々な染織技法を駆使した貴重な布は権力の象徴であった時代もあるようです。そんなわけで、古い人たちは着なくなった着物をほどいて裂として大切に保管し、活用してきました。まさに現代のファストファッションと対極にある価値観だと思います。 活用例としては、穴のあいた着物に裂で繕い物をしたり、裂を寄せ集めて新たな着物を作ったり、額装、表装などに使用した

    • KDFタンスの着物再生プロジェクト「男の着物体験ワークショップ〜着物でぶらり散歩〜」を開催しました。

      2024年4月28日(日)に横浜市技能文化会館にてKDFタンスの着物再生プロジェクト「男の着物体験ワークショップ〜着物でぶらり散歩〜」を開催しました。 内容は着物を着付けて散歩体験をした後に、お抹茶とお菓子をいただくお茶パーティー、プロフィール写真撮影です。ターゲットは妻や彼女と浴衣や着物で一緒に出かけたい、いつか着てみたいがきっかけがない、着物の所作がよくわからない、などなど着物初心者です。お手持ちの着物が無い方にはレンタル着物を手配しました。 今回の企画は着物を着付け

      • 丸屋履物店さんのこと

        一昨年に「男の着物体験ワークショップ」というイベントを開催した際に息子に手伝いをお願いしました。それ以来、息子は着物スイッチが入ったようで仕事が休みの日に着物を着るようになりました。 友人の披露宴に着物で行くというので雪駄を買ったのですが、やはり下駄の方が歩きやすいようで、私の父のお下がりの下駄を愛用していました。その下駄の台がかなりすり減ってきて買い替えが必要になりました。 来週、「男の着物体験ワークショップ〜着物でぶらり散歩〜」を開催するにあたり、息子に散歩案内人を任せ

        • 叔母の家の片付けをしてきました。

          先日、父の妹である叔母の着物と人生のお話をnoteしました。その叔母が亡くなり、この度、家の片付けをしてきました。 叔母が50代から約30年住んだ家。再婚相手に終の住処として建てていただいたと推定しますが、そのお相手は早くに亡くなり20年以上一人暮らしでした。 平屋の家屋と趣味の陶芸、園芸用の道具類が納められた小屋が二つとお花と樹木でいっぱいの庭。 家屋のリビングには花器用の棚、食器用の棚に整然とものすごい量の花器と食器。キッチンには冷蔵庫が二つ。中には手作りの冷凍食品と

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          龍村の帯に出会ってしまったお話

          それは、最近たまに立ち寄るリユース着物屋さんで出会ってしまいました。 セールがあるとLINEでお知らせが届きます。先日、特選帯お買い得セールの中に龍村美術織物の文字を見つけてしまいました。この機会に間近で拝見して触らせてもらいましょ、と軽い気持ちでお店へ。 特選帯の数々が目の前に並ぶ中、龍村の名古屋帯がありました。なるほど、お茶席などに良さそうね〜、私には無縁だけどと思っていたところ、目に飛び込んできたのはなんとも不思議な色柄の洒落袋帯。深い紺地に金と銀で瓢箪の実と花と蔓が

          龍村の帯に出会ってしまったお話

          叔母の着物と人生のお話

          父の妹である叔母のために祖母が購入したお雛様を譲り受けました。木目込みでできた人形の姿を見ていると祖母の叔母への愛情を感じます。只今、その叔母は人生の看取りステージにいます。 お雛様よりも約1年ほど前に叔母の箪笥に眠る着物を譲り受けました。 どこかで読んだ着物と人生についての次のようなくだりがあります。 「着物には、着る人が授かった運命と切り拓いてきた人生が映し出される。」 譲り受けた叔母の着物を見て、改めてその通りだと思いました。縮緬の小紋3枚と染めの羽織1枚。小紋

          叔母の着物と人生のお話

          「リメイクで楽しむ半幅帯の仕立て」に参加しました。

          暑くて長かった昨夏。普段着物生活を楽しみましたが、9月になっても単衣を着る気になれずに夏着物してました。夏帯は枚数が少なくコーディネートに飽きてしまったので、半幅帯を買おうと探したのですが、なかなか気にいるものに出会えないままに袷の季節に突入。 冬になっても半幅帯が頭の片隅に残っていたところ、知人が半幅帯の仕立て講座に参加すると聞き、私も〜!と申し込みました。横浜市技能文化会館主催の横浜マイスター塾「リメイクで楽しむ半幅帯の仕立て」です。好きな生地を持ち込んで3回の仕立て実

          「リメイクで楽しむ半幅帯の仕立て」に参加しました。

          横浜能楽堂の室内装飾織物のお話

          約150年の歴史ある能舞台のある横浜能楽堂。大規模改修工事のため長期休館する前の最後の特別施設見学に行ってきました。 横浜能楽堂は、鏡板と柱にこだわりのある歴史ある能舞台はもちろん、石と木が調和した屋外や内部空間、一文字葺きの銅板の屋根とその形状などなど建築そのものがとても素晴らしいです。ですが、私は何よりも内部空間の装飾に使われている錦の織物を見納めておかねばならないとの思いでした。内装の随所に錦の織物を使うことで、建築を何倍にも魅力的にしていると思います。何度となく見て

          横浜能楽堂の室内装飾織物のお話

          沖縄 本部で出会った和琉建築のお話

          沖縄県の本部(もとぶ)町の居酒屋さん、気になっていたそのお店に行ってきました。 お店のホームページには次のようにあります。 うちなーの味 石なぐは和食と琉球料理の専門店 
沖縄の食材を中心に、和食の料理人が繊細な味付けで素材のうまみを残し、ここでしか食べることのできない「和琉料理」をお楽しみください。 ホームページを見て、石なぐという店名、どこにもないという和琉料理、お店の外観写真が私の気になりポイントでした。 お店は本部港近く、Googleマップでは辿り着けないわかり

          沖縄 本部で出会った和琉建築のお話

          「ハレ着でお茶パ!~茶の湯体験ワークショップ~」を開催しました。

          2023年11月29日(水)に横浜市技能文化会館にて「ハレ着でお茶パ!~茶の湯体験ワークショップ~」を開催しました。 公益社団法人かながわデザイン機構のソーシャルデザイン事業の一つである「タンスの着物再生プロジェクト」。箪笥の抽斗にしまい込まれている着物に注目し、社会や生活に豊かさをもたらす存在に再生させるためのプロジェクト。今回は、「まだ着られる着物はそのままのカタチで着ようよ」という着物を着る機会創出として夏に開催した「浴衣でお茶パ!~茶の湯体験ワークショップ~」のシリ

          「ハレ着でお茶パ!~茶の湯体験ワークショップ~」を開催しました。

          ガロンテープのついた銘仙着物

          ほぼ毎日、親戚や知人から譲り受けた箪笥に眠る古い着物を大切に着るようにしています。ですが、夏着物は汗をかいて汚れやすいし薄くて脆弱なためかあまり譲り受けることはありません。 この夏はとても暑さが長かったので手持ちの数少ない夏着物に飽きてしまい、リサイクルショップを覗いていました。紗紬など涼しげな数枚を購入したところ、しつけ糸がついたままでした。何故、着物を作って着ないまま手放してしまったのか?ショップの店主は、着る機会がある人はそうそういないんですよ、いつか着るかもしれない

          ガロンテープのついた銘仙着物

          5.考察 5-5.両者の比較

          萬松園と八勝館御幸の間の室内装飾織物を比較するという、それはそれは夢のような作業でした・・・。 5-5.岐阜県旧川上貞奴別荘(萬松園)と愛知県八勝館御幸の間 両者の比較 調査結果をもとに、旧川上貞奴別荘(萬松園)と八勝館御幸の間の両者を比較してみる。 5-5-1.使用している室内装飾織物について 旧川上貞奴別荘(萬松園)の室内装飾織物は、10部屋の13箇所に18種類が使用されていた。部屋ごとに使用されている室内装飾織物が異なっていた。公式な来客用の広間(桐の間)で使用し

          5.考察 5-5.両者の比較

          5.考察 5-4.愛知県八勝館御幸の間について

          堀口捨己が、横山大観の障壁画の計画を却下して選んだという大襖の更紗。もとの更紗はどんなものだったのか??? この考察は、長い長い楽しい旅のような作業でした。 5-4.愛知県八勝館御幸の間について  実地調査および文献調査結果をもとに考察する。 5-4-1.もとの更紗について 御幸の間に貼られた裂はもともとどのようなものであったかについて考察する。堀口自身は、大襖の裂について新渡りの南方の空色と紫との絞り染めとなった上に截金の印金を施したのであるとしている(堀口、1978

          5.考察 5-4.愛知県八勝館御幸の間について

          アンリ・シャルパンティエのラッピングリボンを選択

          きっかけはこの夏リサイクルショップで衝動買いした白茶色地の琉球絣。3回ほど着たら裾が擦り切れました。ひとえに私の歩き方が雑ゆえと思いますが、3回で擦り切れるとは〜。裾上げしてもまた擦り切れるに違いない!と思いあれこれ調べてみました。どうやら、裾の擦り切れ防止や汚れ防止用にガロンテープ(またはレース)なるものがあると知りユザワヤさんへ。数あるカラーバリエーションの中で在庫は焦茶色のみで今後入荷予定は無いとのこと。琉球絣には色が濃すぎるけど、とりあえず在庫3個をゲットしておきまし

          アンリ・シャルパンティエのラッピングリボンを選択

          大島紬キラーコンテンツ発祥の集落を訪ねてみました。

          多くの着物好きにとって特別な存在の大島紬。フランス・ゴブラン織、ペルシャ絨毯、と並んで世界三大織物と言われているそう。どんな気候風土の地で織られてきたのか、いつかその紬の里を訪れてみたいと思っていました。この夏に奄美大島を旅し、大島紬と言えば龍郷柄!と言われるその柄の発祥の集落を歩く機会を得ました。 まずは奄美大島北部にある龍郷町の役場へ。役場の敷地を取り囲む塀には大島紬のアイコン的存在の龍郷柄と秋名バラ柄があしらわれています。庁舎に一歩足を踏み入れると足下のマットに龍郷柄

          大島紬キラーコンテンツ発祥の集落を訪ねてみました。

          5.考察 5-3.岐阜県旧川上貞奴別荘(萬松園)について

          岐阜県の近代和風建築総合報告書によると、萬松園の室内装飾織物については広間のみの記載でしたが、実地調査をしてみると、10部屋13箇所に18種類の織物が使用されていました。川上貞奴はいったいどんな意図で各部屋の織物を選んだのだろう??? 考察はワクワクが止まらない作業でした・・・。 5-3.岐阜県旧川上貞奴別荘(萬松園)について 実地調査および文献調査をもとに考察する。 5-3-1.各部屋の室内装飾織物の違いについて 各部屋は、用途が公的か私的か、また、使用者が主人か使用人

          5.考察 5-3.岐阜県旧川上貞奴別荘(萬松園)について