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CS設計も!顧客体験(CX)を考えるUXデザイナーとしてできること

こんにちは!GoodpatchでUXデザイナーをしている、はずむです。
UXデザイナーと聞いて皆さんはどんなことを考えている人を思い浮かべるでしょうか。一般的にはUI・UXデザイナーなどの言葉から連想されるように、デジタルプロダクトの体験を考えている人、と解釈されることが多いかと思います。
しかし、私が関わるプロジェクトではUXデザイナーとして、カスタマーサクセス領域におけるハイタッチのコミュニケーション内容(対面で顧客に行うmtgの内容など)を考えることも担っています。
この経験を通して、UXデザイナーはプロダクト外も含めたCX(カスタマーエクスペリエンス)を考えられる存在であり、いろんな職種・領域の中心となって体験設計を担える、と実感しています。
どんなことをプロジェクトで行ったのか、そして、なぜUXデザイナーがCXの中心を担うことに向いていると感じたのか、UXデザイナーができることの可能性を書いていきます。

CXとUX、その中でのUXデザイナーとCSの役割

TwitterがXになったことでXに敏感なわけではありませんが、なんだか世の中にはいっぱい「〜X」という言葉が存在している気がします。
そしてよく聞くものの代表として、UX(ユーザーエクスペリエンス)とCX(カスタマーエクスペリエンス)があると思います。
これらの違いは一体なんでしょうか。

標準規格であるJIS Z 8521:2020では、UXは「システム,製品又はサービスの利用前,利用中及び利用後に生じるユーザの知覚及び反応」とされています。(UXの定義は様々な人・団体が多様に定義をしており、ここでその全てに触れることは避けます。)
一方CXは、製品・サービスの利用前中後に限らず、購入前や購入後など全ての過程で組織から提供される全てに対して感じる内容を指すとされることが多いようです。
つまりイメージとしては、下図のようにUXがCXに内包されるような形で捉えられることが多いかと思います。

そしてその中で、プロダクト体験を作るのがUXデザイナーであり、プロダクト外で顧客を成功に導くためのサポートを行うのがCS(カスタマーサクセス)である、と捉えられることが多い気がします。

でも、私がプロジェクトでCSのコミュニケーション内容を設計するプロセスを通して感じたのは、UXデザイナーは、サービスの中心となる提供価値と体験を設計し、CSやセールスなどと協力してあらゆる顧客接点にその提供価値と体験を反映していく動きを担う人であるということです。
図にするとこんな感じでしょうか。

どうしてこのようなイメージだと感じたかをプロジェクトで行ったことを通して説明していきたいと思います。

プロジェクトで行っていること

私が関わっているプロジェクトは、すでにプロダクトがローンチされ、グロースフェーズにあるtoBサービスを手がけています。
そのサービスにおいて序盤2、3ヶ月の利用が終わったあと、能動的にユーザーが次のアクションを起こせない、何をやっていいかわからないという課題がありました。
また、その課題に対して、プロダクト開発チームとCSチームがバラバラで動いてしまっているという組織の課題もありました。
例えば、プロダクトチームがプロダクトから顧客に発信するメールで、ユーザーが行うべき次のアクションへのヒントとなるような内容を作ろうとしていたところ、同じようなメールをCSチームも作ろうとしていた、といったことが起こっていたのです。
また、どんなアクションを顧客に起こしてもらうべきなのかの認識もサービス全体で統一できていませんでした。

そこで下記のようなことをしました。

  • プロダクト提供価値・コア体験の再定義

インタビューをもとに、理想的に使い続けられているユーザーの、最も中心的な体験サイクルを可視化しました

  • ユーザーライフサイクルの定義

「体験サイクルが回り続けるとユーザーが成長していく」と仮説立て、導入期・活用期・定着期など、ユーザーが導入以降に成功に至るために経るフェーズと、各フェーズの顧客成功状態の定義をしました。

・オンボーディング終了段階での課題を解決するためのサービスブループリント検討

ライフサイクルでの導入期(オンボーディング)が終わった後、活用期でのユーザーの理想状態に辿り着くための理想体験の流れと、その体験を届けるための各種タッチポイントを可視化しています。

  • 活用期におけるプロダクトから情報を提供する仕組みの設計

  • ハイタッチとしてオンラインmtgで顧客に行う説明やヒアリングの内容設計

サービスブループリント上で、CSチームからハイタッチコミュニケーションが必要とした点に関しては、そのコミュニケーションで伝える内容・順序を設計し、CSチームがトークスクリプトに落とし込めるようにしました。

こうしたユーザーライフサイクルの定義や、ハイタッチの設計など、プロダクト外での人を介した顧客への伴走・コミュニケーション内容を具体化するのは、一般的にCS(カスタマーサクセス)のチームが担う領域だと思います。
でも、今回はこうした内容をUXデザイナーがCSチームと協力しながら設計していきました。これにより、プロダクト開発チームとCSチームで、共通の指針や今注力すべき顧客ライフサイクルのフェーズ、それに対する各チームの戦略・戦術の役割分けができて、作業が意図せず被ってしまうようなこともなくなりました。

振り返れば、この記事の序盤に示していたようにサービスの中心となる提供価値・体験・理想状態を定義して、それをプロダクトだけでなく、カスタマーサポートの内容にも当てはめた形になっています。

プロダクトからの情報だけでなく、ハイタッチがあることによって、ユーザーもサービス利用理解が深まり、実際にサービスとしてもユーザーとしても望ましい行動を起こしてくれる人も出てきました。プロダクトチームとCSチームで手分けして、次のアクションを起こしやすくするきっかけをユーザーに届けられるようになってきていると実感しています。

どうしてUXデザイナーがCS領域をカバーできるのか

UXデザイナーは普段

  • 顧客にどんな状態になってほしいのか

  • サービス・プロダクトとして、どのようになってもらうことが理想なのか

  • 利用前から継続利用に至るまで、どのような順序でユーザーに理想状態に近づいてもらうのか

  • 理想状態になってもらうためにどんな行動を起こしてもらうことがプロダクト・サービスとして望ましいのか

  • どんなタイミングでどのようにサービスと接してもらうことで、行動に必要な知識の獲得や、行動のきっかけを得てもらうのか

といったことを考えています。
そしてそれが落とし込まれる先の一つが、デジタルプロダクトであり、アプリやWebサイトにおいてどこで何をどんな順序できるようにするのかを考えています。
今回のハイタッチ検討でも、ユーザー・サービス両者の理想状態を考えた上で、アプリやWebサイト同様に、顧客が必要とする情報や行動の補助を、いつどこでどんな順で話すのか、ヒアリングするのかを設計してきました。
つまり、顧客を理想状態に近づけるために必要なサポートを落とし込む先がプロダクトなのか、人を介したコミュニケーションなのかという違いがあるだけなのです。

CS以外にもできることがたくさんある

ほかにも、UXデザイナーが設計できるところは沢山あると感じます。
例えばそのサービス・プロダクトを紹介するサービスサイトの設計。
マーケティングの部門が訴求するメッセージを検討することもあるかもしれませんが、元となるサービス・プロダクトの提供価値を言語化しているのは前述の通り、UXデザイナーです。
実際、私のプロジェクトでは、サービスサイトの一部リニューアルをUXデザイナーとして担当し、UIデザイナーと協力しながら最終的なビジュアルに落とし込んでいきました。

またこうした提供価値の言語化は、営業が顧客への導入提案時に伝えるサービス・プロダクトの提供価値の表現にも使えるように思います。
一見関係のない営業とUXデザイナーですが、コラボレーションすることでサービスとしてより一貫したメッセージを顧客に提供することができます。導入前の期待値づくりをうまく行うことで、導入後望んでいた通り、もしくはそれを超える価値を提供しやすくなるでしょう。

組織によっては、こうした職種間を跨ぐ役割や、提供価値の言語化などはPdM(プロダクトマネージャー)、もしくはPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)が担うこともあるかもしれません。
でも、そんなに多く、細分化された専門職がある組織ばかりではないのも事実だと思います。また専門職はあっても、縦割り化によってうまく組織間、職種間で連携できていないケースもあるでしょう。
共通の戦略なく職種間でのコミュニケーションが不足すると、前述のようにプロダクトチームとCSチームで、協力せぬまま顧客に同じようなものを届けようとしてしまう可能性もあります。
そんな時にUXデザイナーがサービスの中心的な提供価値と体験を定めて、サービスとして注力すべきフェーズやポイントを明確にして他職種と協力できると、一貫した体験を届けられるし、チームとしても動きやすくなります。

まとめ

家電製品や利用しているサービスの不具合でコールセンターに問い合わせた時に、必要な情報以上の対応を得られたことで、プロダクト・サービスへの印象が良くなり、引き続き利用したいと思えた、といった経験は誰しもあると思います。
逆に、顧客対応の悪さからプロダクトやサービスそのものへの印象が悪くなる、といったケースもあるでしょう。
プロダクト外の顧客対応なども含め、顧客からすればそれは1つのサービスです。
利用前から利用後の成功までのカスタマーエクスペリエンス全体を設計する、この中核を担えるのがUXデザイナー
なのではないでしょうか。


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